新春の淀で行われる、歴史と伝統を誇るハンデ重賞「日経新春杯」。
半世紀を超える同レースの歴史において、非常に多くの競馬ファンの心に残るレースが繰り広げられてきた。今もなお、春の大一番でもある天皇賞に向けた大切なステップレースとしても知られており、このレースからステップアップを果たした馬たちも多くいる。
2019年日経新春杯の勝ち馬グローリーヴェイズも、その一頭であった。
グローリーヴェイズの血統にはある牧場の冠名が刻まれている。
その冠名とは「メジロ」。
昭和から平成にかけて多くの名馬を出し、日本競馬を支えた大牧場「メジロ牧場」の冠名である。
日経新春杯が行われる京都競馬場でも数え切れないほどメジロの馬が駆け抜け、この日経新春杯自体もメジロブライトなどが制している。
そんな由緒ある血族である「メジロ軍団」だが、牧場が解散した後はメジロの馬を競馬場で見ることも少なくなり、血統という観点でもメジロの冠名は希少なものとなっていった。
そんななか、グローリーヴェイズのお母さんはメジロツボネ。その血族には横山典弘騎手を背に宝塚記念を制したメジロライアンがいる名血だ。まさにグローリーヴェイズは、メジロの神髄を受け継ぐ馬と呼べる。
2019年の日経新春杯は、重賞初制 制覇を狙う馬たちが集結した。
グローリーヴェイズをはじめ、ムイトオブリガードやルックトゥワイスなど、長距離でしっかりと実績を積んだ東馬同士の対決。そんな中、1番人気に支持されたのはグローリーヴェイズだった。
レースが始まると長いホームストレッチを目いっぱい使った先行争いが始まる。
まず飛び出したのは、紅一点のサラスと、戦前から先行が予想されていたアイトーン。
長距離戦らしく、馬群は縦長となってレースが進んだ。
先行争いを制し、ハナを奪ったのはアイトーン。
人気のムイトオブリガードやグローリーヴェイズは、中団やや後ろから進んでいた。
そしてレースが動いたのは3コーナー。
馬群が固まりだしたタイミングで後方からメイショウテッコンが一気に動き、先頭まで躍り出る。他馬のポジションも流動的になるなかで、グローリーヴェイズはじっと構えたまま直線を迎えた。
先頭はメイショウテッコン。
直線の半ばからはシュペールノエルが良い脚で追い込む。
しかしその内をすくったのが水色の勝負服グローリーヴェイズであった。
迫るシュペールノエルとルックトゥワイスを振り切って、見事重賞初制覇を果たした。
グローリーヴェイズはその後G1初挑戦の天皇賞春で2着に入るなど健闘を見せ、暮れの香港ヴァーズで外国馬相手に見事なG1初制覇を飾った。
生粋のメジロ血統とも呼べる馬が、海外でG1制覇というのは、大一番に強いメジロの力が発揮されたように感じる。
今後もこの血統は、グローリーヴェイズやほかの馬とともに、まだまだ夢を見させてくれるだろう。
写真:かぼす