2018年のダート界は、個性あふれる面々が揃っていた。

2017年のダート界を席巻したゴールドドリームに、期待の3歳馬ルヴァンスレーヴ。さらにノンコノユメやアウォーディーなどの実力馬も、G1制覇に燃える年明けであった。

この年の東海ステークスに出走したテイエムジンソクもまた、そんなダート界を盛り上げる1頭であった。

2012年に生を受けたテイエムジンソクはデビュー以降、2着や3着は取るものの中々勝利を手にすることが出来ない、いわゆる「善戦マン」と呼ばれるような戦績を続けていた。

そんなテイエムジンソクに転機が訪れたのは、5歳を迎えた2017年。

東大路ステークスで約1年ぶりの勝利を手にしてオープンクラスに昇級すると、そこからオープン特別を連勝。一気にダート界の注目馬として名乗りを上げ、G1制覇に期待が寄せられていたのである。

そして秋、みやこステークスを勝利して挑んだチャンピオンズカップでは、先行勢の競り合いに競り勝つも外から飛んできたゴールドドリームに交わされて2着。

G1勝利が目の前で消えてしまった形となった。

2018年はそんな悔しさを晴らす上でも、非常に重要な1年となった。

東海ステークスは2月に行われるG1フェブラリーステークスへのステップレース。G1制覇に燃えるテイエムジンソクにとって、ここは落とすわけにはいかない一戦である。

この年の東海ステークスはテイエムジンソク以外突出的な馬が不在の混戦ではないかとされていた。

そして勢いに勝るテイエムジンソクが大きな支持を受け、なんと単勝オッズは1.3倍。

多くのファンの思いは、あくまでこのレースは通過点、というものだったのだろう。

そして、レースがスタート。

先行馬であるテイエムジンソクは好スタートから飛び出していく。内からサルサディオーネが競りかけるも、先頭は譲らずに向こう正面へ。

2番人気のディアレルレイなどにマークされる形にはなったがテイエムジンソクはマイペースを作ってレースを進めた。

そして、3.4コーナーをうなるような手応えで回ったテイエムジンソク。直線も余力十分で押切をはかる。

コスモカナディアンが詰め寄るも、抜かせない。気が付けば3着以下を6馬身突き放していた。

まさに完勝。

他馬を寄せ付けない、圧倒的な逃走劇だった。

このレースでテイエムジンソクは、ファンの期待に十分すぎるほどに応えて見せた。それと同時にこの馬がダートG1で王者にどのように立ち向かうかという楽しみも、ファンに与えてくれた。

冬の桶狭間を駆け抜けたテイエムジンソク。

まさにその逃走劇は、疾風迅雷と言わしめるほどの走りであった。

写真:Horse Memorys

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