ドバイミーティングの中止や、無観客競馬、高松宮記念での降着など、もやもやとしたあの頃から早くも1年。
人類は未だに新型コロナウイルスと戦っている。一方で、隔離やワクチン接種などにより少しずつ克服の兆しを見せており、今年のドバイミーティングは、様々な対策を講じて無観客で無事開催された。
高松宮記念は、制限があるものの2021年初めてとなる、観客を伴ったGI開催となった。
土曜日の競馬から、真夜中まで徹夜してドバイ観戦──寝不足のまま日曜日の高松宮記念を迎えるという、競馬ファンには大変忙しい3月末が、再び戻ってきてくれた。
馬場状態は重。雨中での開催は、セイウンコウセイが勝利した2017年以来であった。
単勝オッズ一桁台に推されたのは、5頭。
2.9倍の1番人気に支持されたのは、レシステンシア。始動戦となった阪急杯では逃げ切り勝利を収めて参戦。
重馬場で行われた桜花賞では、後の三冠牝馬デアリングタクトに次ぐ2着となっていた。初めてとなる1200メートルや中京コース、8枠16番の外枠に収まったことに注目が集まった。
オッズ6倍台には3頭。
香港スプリントでG1タイトルを獲得し、高松宮記念3年連続出走となるダノンスマッシュ。
一昨年の春秋マイル王者で、初の1200メートル参戦となるインディチャンプ。
G1タイトルはないものの、シャマーダル産駒のライトオンキュー。
さらに続いて、3歳マイル王者ラウダシオンが7.1倍となった。
その他、昨年の高松宮記念を繰り上げで制したモズスーパーフレア、阪神カップを制したGI馬ダノンファンタジー、重賞3勝のサウンドキアラ、4年前の高松宮記念を制したセイウンコウセイなど、全18頭。
昨年の短距離、マイル界を席巻したグランアレグリアが不在であったが、それを感じさせない「春の短距離王決定戦」にふさわしいメンバーが集まった。
レース概況
スタートでは、18番のミッキーブリランテが立ち遅れる。
まずテンが速いモズスーパーフレアが内から先頭を奪い、後方と距離をとって逃げる形となった。
内枠からのスタートを利して、レッドアンシェルやライトオンキュー、ダノンファンタジーがその直後の好位につく。外枠から果敢に先行したラウダシオン、セイウンコウセイ、レシステンシアが好位の外側。
先行勢を見ながら進む中団には、ダノンスマッシュとインディチャンプ、トゥラヴェスーラ。
後方では、エイティーンガールやアウィルアウェイが控えた。
逃げるモズスーパーフレアを除いて馬群は一団となり、前半の600メートルは34.1秒で通過した。
最終コーナーに接して、先頭のモズスーパーフレアは馬場の最も内側に。後方では各馬の鞍上が騒がしくなった。好位の内を進んだダノンファンタジーやライトオンキュー、インディチャンプは馬場の内目にいて、中団グループのレシステンシアやサウンドキアラ、ダノンスマッシュが馬場状態が良い外へ。
最後方のエイティーンガール、マルターズディオサなどは大外に持ち出していた。
最後の直線、モズスーパーフレアはまだ後続を離して逃げる。
好位のダノンファンタジー、ラウダシオン、レシステンシアなど7頭が内外横一線に広がり、追い出していた。
その背後2列目に、インディチャンプやダノンスマッシュ、トゥラヴェスーラなどが控える。大外からはマルターズディオサなどが脚を伸ばした。
残り200メートル付近を過ぎると、横一線に広がったほとんどが失速し後退。
レシステンシアやセイウンコウセイが一足先に抜け出していた。2列目からは、インディチャンプやダノンスマッシュが失速する馬を縫うようにかわして進出。徐々に外、差し馬が目立ち始めるが、レシステンシアは食らいついていた。
内のインディチャンプ、外のレシステンシアとノンスマッシュが3頭が並び、モズスーパーフレアを残り100メートル付近でかわす。3頭が内外で離れての競り合いとなったが、ゴール板寸前でダノンスマッシュがクビ差ばかり抜け出して、決勝線を通過した。
勝ちタイムは、1分9秒2。
各馬短評
1着 ダノンスマッシュ
2019年、重賞連勝中の身で、1番人気の支持を集めながら4着。
2020年、先行するも、直線で伸びを欠き、勝ち馬と1秒差の10着。
オープン再昇格後、「GI」以外では7戦6勝(2着1回、競走除外を除く)と無類の強さを誇っていた。そして香港スプリントで念願の海外G1タイトルを獲得。
勢いそのままに、高松宮記念3度目の参戦で国内GI獲得となった。
香港スプリントと同様に、父ロードカナロアとの親子制覇を達成。キングヘイロー・ローレルゲレイロ親子以来2組目となった。
これまでに、ロードカナロアの初年度産駒からは、最強馬アーモンドアイ、ステルヴィオがGI制覇。さらに、後継スプリンター・ダノンスマッシュまで出現したこととなる。
6歳ゆえに、今後の現役期間はそう長くはないと考えられるが、安田記念勝利、春秋スプリント制覇(スプリンターズステークス)、香港スプリント連覇と、父と同じ道を辿ることができる。
なお、次走は香港チェアマンズスプリントプライズに進むようだ。
川田騎手×安田隆行厩舎の師弟コンビは、昨年のホープフルステークス(ダノンザキッド)以来のGI制覇となった。そんな「師弟」コンビで臨んだ高松宮記念と言えば、ダッシャーゴーゴーの2011年、2013年を思い出す。
2011年、3コーナーで1番人気ジョーカプチーノの進路妨害し、2位入線も降着(11着)
(2012年、横山典弘騎手が騎乗し、半馬身と少しカレンチャン(同厩舎)に届かず(4着))
2013年、外から進出を試みるも、ロードカナロア(同厩舎)に離される(5着)
さらにダッシャーゴーゴーは、スプリンターズステークスにも4年連続出走。
初めの2年には川田騎手が騎乗(あと2年には横山典・勝浦騎手)している。
1年目には2位入線も4着に降着、2年目には2番人気11着に敗退した。
願わくば、スプリンターズステークスでも師弟コンビが結成され、ダッシャーゴーゴーでの雪辱を果たしてほしいものだ。
2着 レシステンシア
武豊騎手負傷のため、急遽浜中俊騎手とのコンビであったが、相変わらず力を発揮した。
外枠からの発走で控える形となったが、鋭く伸びて、ダノンスマッシュと僅差の2着。重馬場でもパフォーマンスを発揮でき、梅雨のマイルGIでも期待できる。
3着 インディチャンプ
ただ一頭内から伸びたが、勝ち馬には敵わなかった。
初の1200メートルだったが相変わらずのパフォーマンス。まだ国内GIでは3着以内を外していない。
次走は香港に向かわないとのこと。安田記念2勝目が期待される。
4着 トゥラヴェスーラ
GI初出走ながら、堂々たる走りを見せた。
母の姉妹には、不良馬場のスプリンターズステークスを制したアストンマーチャン。
5着 モズスーパーフレア
連覇を狙ったが、逃げ切ることはできなかった。
同じ条件のシルクロードステークスで15着敗退しただけに心配されたが、内枠からラチ沿いを進む自分の競馬して改めて地力の高さを証明した。
17着 ライトオンキュー
横山典弘騎手とのコンビが期待されたが、競走中に鼻出血を発症した。
4月末まで出走することができないが、良績を残した北海道シリーズでの活躍が期待される。
総評
雨の中、重馬場で行われたものの、2番人気→1番人気→3番人気と実績馬が、各々の走りを見せる好勝負となった。秋スプリンターズステークスでの再戦が今から楽しみである。
上位6頭の内、5頭が6歳馬(ワグネリアン、アーモンドアイ世代)。さらに、ミスターメロディから3連覇中。今後、世代交代はどう進んでいくだろうか。
はてさて、この上位3頭を下し、高松宮記念をパスして大阪杯に進むグランアレグリアとは一体どれくらいの強さなのか──それは今週末明らかになる。
写真:俺ん家゛