[地方レース回顧]乾坤一擲の右黒襷!~2021年・ジャパンダートダービー~

3歳ダート馬の頂点を決める大一番、ジャパンダートダービー。
地方・中央の3歳馬が大井競馬場2000mコースで競う夏のJpn1競走です。

中央からは兵庫チャンピオンシップ組のリプレーザとゴッドセレクション、関東オークス圧巻の勝利ウェルドーン、ユニコーンステークスで末脚を見せたスマッシャー、1勝クラスを勝ち上がって挑戦のダノンブレットとロングランの6頭が参戦。

対する南関東勢は東京ダービー勝馬のアランバローズと2着のキャンダルが回避したものの、3着のブライトフラッグと4着のジョエル、6着ギガキングが有力どころとして参戦しました。

しかし勝ったのはJRA勢でも南関の有力どころでもなく、繰り上がりで出走を決めた船橋所属のキャッスルトップと仲野光馬騎手のコンビでした。

レース概況

好スタートから押して押してキャッスルトップがハナに立ちます。
ロードシュトロームが2番手、ゴッドセレクションが折り合いに気を付けながら3番手、ブライトフラッグが3番手、外にはウェルドーンが今日は気合十分に進んでいます。
その後ろに内からリプレーザ、ジョエル、スマッシャーが中段で続き、コーナーへ。

1コーナーから向こう正面に入るまでにキャッスルトップが後続を引き離し、ロードシュトロームと3馬身差の先頭でマイペースを刻みます。

ロードシュトロームから先行馬群までの差も4馬身あり、向こう正面の真ん中あたりからリプレーザが位置を押し上げます。ジョエルも続いて前へ進み、3コーナーの手前で馬群が凝縮。
コーナーに入るところで既にリプレーザには鞭が入り、外のゴッドセレクションやウェルドーンの手も動いて追撃態勢に入りますが、キャッスルトップはまだ動かず。

直線に向いて残り400m、追いかけていた馬たちがキャッスルトップに追いつきますが、キャッスルトップはここから鞭が入り最後の二の足を繰り出します。
終始2番手で追いかけていたロードシュトロームが力尽き、外からゴッドセレクションとウェルドーン、内からは懸命にリプレーザが追いかけ、更に大外からスマッシャーが末脚全開。

──しかし、最後まで脚を温存していたキャッスルトップは止まりませんでした。
仲野騎手の激に応えてアタマ差残したところがゴール、追い詰めたゴッドセレクションが2着、ウェルドーンが更にアタマ差の3着、スマッシャーは前の各馬に追いつけず4着、その半馬身差でリプレーザが5着。

JRA勢が着差わずかの上位争いになる中、仲野光馬騎手の手が高々と上り、キャッスルトップが大金星を掴んだことをアピールしました。

各馬短評

1着 キャッスルトップ

東京ダービーを勝ったアランバローズが回避したことで、この馬よりも積極的に逃げたい馬はいませんでした。
脚質を逃げに切り替えてから3連勝していましたが、大井コースの経験が無いうえに、鞍上の仲野騎手も大井への参戦は2年ぶり、重賞初挑戦が強豪集うこのレースでしたので、13頭中12番人気での出走でした。

父バンブーエールは、ダート1200m 7戦6勝で負けたのはドバイゴールデンシャヒーンの4着のみという生粋のスプリンター。産駒は大沼ステークスを勝ったダンツゴウユウやキャッスルトップと同じオーナーのキャッスルクラウン、佐賀競馬3冠の女傑スーパージンガなどを輩出し、少ない産駒からダート戦での活躍馬を出していますが、統一重賞は初制覇です。

レースラップを見ると、東京ダービーで適性を超えた激走を見せてくれたアランバローズをなぞるような走りで、ぎりぎりまで相手を引き付けて併せて伸びるキャッスルトップの長所を最後に活かせたのは運の要素だけではなく、人馬の実力あってこその結果でしょう。

今後は南関の、そして全国各地の強豪と戦うことになりますが、この勝利を活かした強気の逃げで駆け抜けてほしいですね。

2着 ゴッドセレクション

前走の兵庫チャンピオンシップでは序盤に折り合いを欠いてしまった分最後にリプレーザにつかまってしまったので、最序盤は中井騎手が折り合いに気を付けながら乗っていました。
大外枠で前の2頭が離れた逃げを打ったので前に壁を置けない状況でしたが、しっかりと折り合って道中を進められたのは収穫でしょう。

前走の経験がしっかり大一番で活かされましたことで最後まで脚は止まらずにレースが出来ましたが、今回は完璧なレースをしたキャッスルトップにアタマ差及ばず悔しい結果に。

前走での反省点はきちんと改善され、ゴッドセレクションの強さがオープンクラス級であることは示せましたので、次こそは重賞制覇を目指します。

3着 ウェルドーン

関東オークスでは「やる気があるかわからない」と武豊騎手に言及されながらも南関2冠牝馬ケラススヴィアを差し切っての勝利。ダート牝馬世代ナンバーワンの実績を引っ提げての参戦でした。

スタート直後は手綱を引かれていたので、前に行き過ぎないように位置取りの調整をされていたようです。
実際に逃げるキャッスルトップやゴッドセレクションを前に見てのレースになったので、関東オークスの再現を狙える運びになりました。

最後はクビの上げ下げの差でゴッドセレクションに敗れましたが、今回のメンバー相手で3着であればやはり牝馬戦に戻ればトップクラスの実力と見ていいでしょう。

前走に続いて、ゴール後には全身を冷却されていていたので、涼しい時期のほうが全力を発揮できそうです。

4着 スマッシャー

末脚を繰り出せれば上り最速で追いかけてくるスマッシャー、今回も大外から上り最速の37.1秒で追い込んできましたが、ウェルドーンとクビ差の4着まででした。
これまでダートでは1600mまでのレースしか経験が無く、距離延長が課題でしたが、向こう正面でリプレーザが先に動き出してもしっかり末脚を溜めることができたので、現状のベストは尽くしたはずです。

ダートでの追い込み馬ゆえにどうしても展開の助けは要りますが、既に出世レースのユニコーンステークスを勝っているので、この先も鋭い末脚を見せてくれるでしょう。

5着 リプレーザ

兵庫チャンピオンシップを勝っての参戦でしたが、前々走は芝1200mの1勝クラスを上り32.9秒の末脚で勝っている高い末脚性能の持ち主です。

今回も前に押していかず中団で構えていましたが、向こう正面でペースが落ちるとインコースから早めに上がっていきました。兵庫チャンピオンシップでは3コーナーで手ごたえが悪かったので、早めに動き出して最後まで走り切らせるようにコーナー入り口で既に鞭が入っていました。

最内をロスなく回っての直線勝負でしたが、逃げたキャッスルトップや外の各馬のほうが後から仕掛けた分、届かずの敗戦でした。

距離はこなせていたように見えるので、引き続きこの路線でも心配ないでしょう。
ハイペースでの消耗戦になれば前をかわす末脚を再び発揮できるはずです。

レース総評

JRAの実力馬たちが僅差のレースを繰り広げる中で、逃げてアタマ一つ残したキャッスルトップ、連勝の勢いそのままに大一番も逃げ切っての戴冠でした。
決着タイムの2分5秒9は例年のタイムと比較しても遜色なく、運だけでは勝てないレースであることは明らかです。
ゴール後に大きく腕を掲げた仲野騎手の勝負服から、かつて有馬記念で大波乱の勝利を挙げたダイユウサクを彷彿とされた人もいることでしょう。

実は仲野騎手が勝負服を決めた際、自らが好きだったダイユウサクにあやかって黒襷を自らの勝負服に採用し、「晩成でも大成するように」という願いを込めていたそうです。
願いを込めた黒襷は30年の時を経て、単勝129.5倍の大波乱を演出、令和の大勝負を先頭で駆け抜けました。

キャッスルトップも仲野騎手も、これから更に大きな勝負に挑むことになりますが、この一発に終わらず、再びの勝利に期待しています!

写真:三木俊幸

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