[重賞回顧]新種牡馬の産駒が魅せた、圧巻のパフォーマンス~2021年・札幌2歳ステークス~

夏の2歳重賞第3弾、札幌2歳ステークス。かつては、ニシノフラワーやビワハイジ、ジャングルポケット、アドマイヤムーンなど、後のGI馬や年度代表馬を多数輩出する出世レースだった。

近年は、そこまでの大物が出ていなかったものの、2020年の勝ち馬ソダシは、阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞を連勝。5戦無敗でオークスに駒を進めた。そのオークスを勝利したのは、札幌2歳ステークスの2着馬ユーバーレーベン。さらに、3着のバスラットレオンも、4月にGⅡのニュージーランドトロフィーを5馬身差で圧勝。上位入線馬が軒並みクラシックやGⅡを制し、一気に出世レースへと返り咲いた。

2021年の出走馬は、10頭のところダークエクリプスが競走除外となり、スタートラインに立ったのは9頭。人気はノーザンファーム生産の3頭に集中し、その中で1番人気に推されたのはジオグラフだった。

6月東京の新馬戦を、上がり最速で勝利したこの馬の父は新種牡馬のドレフォン。母のアロマティコは、現役時に、今回と同じコースで行なわれたクイーンステークスで2着、GIのエリザベス女王杯でも3着した活躍馬。ルメール騎手が継続騎乗する点でも、大きな注目を集めていた。

2番人気に続いたのは、トップキャスト。こちらは、1ヶ月前に行なわれた函館の新馬戦を好時計で逃げ切り、2着に3馬身半差をつける完勝。2歳戦で、特に強さを発揮するダイワメジャー産駒ということも、人気を集める要素となった。

僅差の3番人気はリューベック。2020年のセレクトセール1歳市場で、税込6600万円で落札されたこの馬の全姉は、国内外のGIを2勝したディアドラという良血。こちらも、デビュー戦となった函館芝1800mの新馬戦を楽に逃げ切り、このレースへと駒を進めてきた。

レース概況

ゲートが開くと、人気のジオグリフと、直前で立ち上がったリューベックがやや出遅れる。

先手を切ったのはトップキャストで、オンリーオピニオンと、ダッシュがついてすぐに盛り返したリューベックがその後ろを並走。さらに、クリノメガミエース、エーティーマクフィまでの5頭が先団を形成した。

そこから2馬身後方に、ユキノオウジサマ、アスクワイルドモア、トーセンヴァンノの3頭が横並びとなり、ジオグリフは最後方を進む。

前半1000mは1分0秒3の平均ペース。先頭から最後方までは、およそ8馬身の差だった。

3コーナーに入ると、最後方に構えていたジオグリフが進出を開始。あっという間に4番手まで上がると、4コーナーで、手綱を押すリューベック、オンリーオピニオンとは対照的な手応えで楽々と並びかけ、レースは最後の直線勝負へと入った。

直線入口で、一旦はトップキャスト、オンリーオピニオン、ジオグリフが横並びに。しかし、一頭だけ手応えがまるで違うジオグリフが、すぐに先頭へと躍り出る。必死に抵抗する2頭だったが、残り200mを切ってから、徐々にその差が広がり始めた。

問題は2着争いとなり、後方からアスクワイルドモアとトーセンヴァンノが差を詰め、残り50mでアスクワイルドモアが単独2番手に上がるも、ジオグリフはその遙か前。

結局、ジオグリフが後続に4馬身差をつける圧勝で1着ゴールイン。2着にアスクワイルドモアが続き、そこから1馬身半差の3着にトーセンヴァンノが入った。

良馬場の勝ちタイムは1分49秒1。最後は流して圧勝したジオグリフが、次のステージへと勝ち進んだ。

各馬短評

1着 ジオグリフ

スタートで少しエキサイトしたため、やや出遅れて最後方からの追走となったものの圧勝。2歳戦としては淀みない流れになり、札幌コース向きの長くいい脚を使えた点と、レース上がりが36秒8とかかった点が、上手くマッチしたのではないだろうか。

大まかにいえば、アメリカ型ノーザンダンサー系の父に、母の父キングカメハメハという血統構成はソダシと同じ。おそらく、キレッキレの瞬発力は備えていないため、ある程度のペースで引っ張る先行馬がいたほうが、この馬の持ち味を発揮できるのではないだろうか。

当然、この後も芝のレースに連続して出走すると思われるが、ダートでの走りもいつかは見てみたい。

2着 アスクワイルドモア

前述したバスラットレオンが良い例で、キズナ産駒の牡馬も、瞬発力タイプよりは、持久力タイプに出る馬のほうが多い。この馬も、勝ち馬と同様に後方追走から長くいい脚を使い、2着争いを制した。

藤原英昭厩舎で社台ファームの生産馬といえば、2010年のダービーを制したエイシンフラッシュを思い出す。そのダービーで2番人気に推されたのが、アスクワイルドモアの母の全兄にあたるペルーサというのも不思議な縁。

ペルーサは早期から活躍したが、この馬が本当に良くなってくるのは、おそらくまだ先。古馬になってからではないだろうか。

3着 トーセンヴァンノ

この馬の父も、ディープインパクト産駒のヴァンキッシュラン。現役時は、やはり持久力勝負を得意とし、2016年の青葉賞を制したもののダービーは13着。その後はケガに泣かされ、結局それが最後のレースとなってしまった。

地味な血統だけに、人気にならなくても、常に堅実な走りを見せそうなタイプ。応援したくなるような雰囲気がある。

レース総評

前半800mは48秒3。12秒0を挟んで、後半800mが48秒8と、前後半でほぼ同じような流れ。緩急があまりなく、先行馬にとっては息が入りづらい展開で、後方を追走していた持久力タイプの3頭が、上位を独占した。

非常に高いパフォーマンスを見せ、少なくともこれまでにデビューした2歳馬の中では、トップに立ったジオグリフ。次走も圧倒的な人気を集めそうだ。ただおそらく、スローからの瞬発力勝負は向かないはず。 特に、同じノーザンファームの生産馬で、ディープインパクト産駒が出走馬に名を連ねている場合、速いペースで先行する馬がいないと、分が悪くなる可能性もある。今回の2、3着馬にも同じことが当てはまる可能性もあるため、次走以降は、相手関係をしっかり見極めていきたい。

写真:安全お兄さん

あなたにおすすめの記事