[重賞回顧]短距離界の新たな主役を目指して~2021年・セントウルステークス~

2020年に続き中京開催となったセントウルステークスは、スプリンターズステークスの前哨戦。1着馬には、優先出走権が与えられる。また、サマースプリントシリーズの最終戦であり、唯一のGⅡでもある。
シリーズ制覇を目指して夏競馬を戦ってきた馬と、この路線の実績馬がここで激突する。

2021年の出走馬は17頭。
その中で、単勝オッズ1.9倍の抜けた1番人気に推されたのはレシステンシアだった。
2歳時に、GIの阪神ジュベナイルフィリーズをレコード勝ち。その後、桜花賞やNHKマイルカップで2着と惜敗が続くも、この春、阪急杯を快勝すると、高松宮記念も2着。今回は、明らかに実績上位の存在で、大きな注目を集めていた。

2番人気に推されたのは、3歳馬のピクシーナイト。
1月、同じ中京競馬場で行なわれたシンザン記念を快勝。その後、アーリントンカップ4着、NHKマイルカップは12着と敗れたものの、初の1200mに挑戦したCBC賞で2着に好走。カレンモエと同様、サマースプリントシリーズのチャンピオンを狙える位置につけており、このレースに挑んできた。

3番人気に続いたのはカレンモエ。
父ロードカナロア、母カレンチャンという、現役時にスプリントのチャンピオンだった両親を持つ、この路線でこれ以上は望めないほどの良血馬。オープン昇級後は、GⅢで3戦連続2着。あと一歩のところまで迫っている念願の重賞制覇と、サマースプリントシリーズチャンピオンの両方を目指し、ここに出走してきた。

単勝10倍を切ったのは、これら3頭。
以下、クリノガウディー、ラウダシオンの順で人気は続いた。

レース概況

ゲートが開くと、ジャンダルムが痛恨の出遅れ。
それ以外の16頭は、きれいなスタートとなった。

好スタートを切ったのはクリノガウディー。レシステンシアも好ダッシュから先手を奪おうとする。そこに、シャンデリアムーンとジャスティンが加わり、カレンモエとクリノガウディーが4番手を併走。その後ろに、やや抑えながら追走のピクシーナイト、さらにラウダシオンとシャインガーネットの3頭が横一線となった。

人気上位馬は中団よりも前につけ、前半600m通過は32秒9のハイペース。
先頭から最後方までは15馬身ほどと、縦長の隊列となった。続く4コーナーを回るところで、2番手につけたレシステンシアのルメール騎手が早くも手綱を押し、レースは最後の直線勝負を迎えた。

直線に入ると、逃げるシャンデリアムーンのリードは1馬身。
レシステンシアがそれを追い、ジャスティンは後退。変わって追い込んできたのは、カレンモエとクリノガウディーで、坂の上りからピクシーナイトもそれに加わる。

その坂の上りで先頭はレシステンシアに変わり、残り200mでリードは2馬身。ここで、カレンモエとクリノガウディーも前と脚色が同じになり、レシステンシアの勝利が確定したように思われた。

しかし、残り100mを切ってからピクシーナイトが末脚を伸ばして猛追。一完歩毎に差を詰め、最後、馬体を併せたところでゴールイン。

写真判定の結果、クビ差粘りきったレシステンシアが1着で、ピクシーナイトは悔しすぎる2着。その後ろは、追い込んだジャンダルムが3着争いに加わるも、クリノガウディーがハナ差凌ぎ切り、3着を確保した。

良馬場の勝ちタイムは、1分7秒2。
阪急杯以来となる重賞4勝目を挙げたレシステンシアが、スプリントGI制覇に一歩前進した。

また、この結果を受け、ファストフォースが2021年のサマースプリントチャンピオンに輝いた。

各馬短評

1着 レシステンシア

ハイペースを2番手から追走したため最後は苦しくなるも、ギリギリ粘りきって勝利した。

グランアレグリアが天皇賞秋に向かうため、次走、スプリンターズステークスに出走すれば、ダノンスマッシュと上位人気を分け合うだろうか。

その中山芝1200mは、ダイワメジャー産駒の得意コースではあるものの、同産駒はJRAの芝のスプリントGIで未勝利。もちろんレシステンシアが勝ってもなんら驚きはないが、他馬にもまだチャンスはある。

2着 ピクシーナイト

あとわずかのところでサマースプリントチャンピオンの座を逃したが、最後に末脚を伸ばし、大いに見せ場を作った。次に繋がるレースとなったのは、もしかすると、こちらだったのかもしれない。

母父のキングヘイローは、現役時に高松宮記念を勝利。種牡馬としても、春秋スプリントGIを制したローレルゲレイロを輩出している。しかし、モーリス産駒が3歳秋にスプリントGIを勝利というイメージは、正直なかなか湧きにくいところ。

実は来年、4歳になってから本格化するのではないかとも思える存在。高松宮記念に出走してきたときは、狙ってみたい1頭。

3着 クリノガウディー

昨年の高松宮記念で1位入線→降着後に訪れた一時の不振からは、完全に脱している様子。ただ、こちらは賞金面でスプリンターズステークスに出走できるか微妙なライン。

2着馬同様、枠順がやや不利だったのも事実で、休み明け2戦目で上昇があれば、スプリンターズステークスでも面白い存在になるかもしれない。

レース総評

前半600mが32秒9に対し、後半600mは34秒3。ハイペースを押し切ったレシステンシアは、少なくとも、このレースでは強さをみせたといって間違いない。しかし、そのハイペースに乗じたとはいえ、内枠有利のこのコースで、外枠から追い込んで接戦を演じたピクシーナイトも、同等の評価をしていいのではないだろうか。

これで、スプリンターズステークスの前哨戦も終了。本番では、サマースプリントシリーズの重賞勝ち馬とダノンスマッシュが有力視されそうだが、ダノンスマッシュも、あと4ヶ月弱で7歳になる。

当日のオッズは、レシステンシアとダノンスマッシュの2頭が、やや抜けるだろうか。ただ、その次のグループも実力面では接近していて、思っている以上に混戦ムード。

今年行なわれる秋のGIの中でも、屈指の面白いレースになりそうな予感がしている。

写真:俺ん家゛

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