[地方レース回顧]上総より西日本制圧へ~2021年・白山大賞典~

2021年、JBC競争は金沢競馬場で開催されます。今年の白山大賞典はJBCクラシックと同一の2100m戦で開催されるため、本番を目指すメンバーが金沢競馬場に集いました。
今年はJRAから5頭、地元金沢競馬から4頭、名古屋競馬から2頭、船橋競馬からミューチャリーが参戦し、12頭立てでの開催になりました。

レース時には幾分弱まりましたが、金沢競馬場は雨で水の浮く不良馬場、水しぶきを上げて各馬一斉に駆け出しました。

レース概況

スタートから川田騎手が促してメイショウカズサがハナに立ちます。
スワーヴアラミスが2番手、ヒストリーメイカーが3番手。マスターフェンサーは追いながら4番手で先行する形に。
ティモシーブルーを挟んで外にミューチャリー、内にヴェンジェンスが続き、11番トップロイヤルが中段後方へ。ニーマルサンデー、エイシンレーザー、マイネルキラメキ、メイショウオオゼキは最初のコーナーの時点で大きく離されてしまいます。

向こう正面でもメイショウカズサは軽快に逃げ、これに離されまいと松田騎手がスワーヴアラミスを促します。
1コーナーに入る際も隊列は大きく変わらず、3番手外にヒストリーメイカー、4番手内にマスターフェンサーが続きました。

向こう正面でミューチャリーが5番手、ヴェンジェンスが6番手で差すタイミングを伺います。
スワーヴアラミスやヒストリーメイカーの手が動きはじめ、マスターフェンサーには鞭が入る中、メイショウカズサは馬なりのまま勝負の3コーナーへ入ります。

コーナーで外からミューチャリーが追い上げ、先行各馬も必死に追いますが、メイショウカズサのスピードは落ちないまま直線へ。

直線に入ってからもメイショウカズサの勢いは止まらず、追い上げるミューチャリーを3馬身突き放してゴール、スワーヴアラミスが最後まで粘って3着、最内に進路を取ったマスターフェンサーは斤量差が響いたか4着まででした。

その後ろの5着ヴェンジェンスまで7馬身差があることからも、いかにメイショウカズサが圧倒的な逃げを打ったかが伺えます。決着タイム2,10,3は金沢2100mのコースレコードでした。

各馬短評

1着 メイショウカズサ

名前の由来は「上総の国」ですが、実は千葉県の中山競馬場や船橋競馬場での出走経験のない関西馬です。
初勝利までに9戦を要し、条件戦を勝ち上がった後も重賞で3連敗、なかなか大きな舞台で勝ち上がれませんでした。

重賞初勝利となった2走前のプロキオンステークスは今日のような先行馬有利の重馬場で、馬場を活かしてスムーズに先行馬群から抜け出して快勝、その際も9番人気と人気薄での勝利でした。

カジノドライブ産駒は今年の交流G1で活躍するカジノフォンテンがいますが、こちらは母系にシルの名前があります。「スーパーカー」の異名を持つマルゼンスキーの母として知られ、ボトムラインと父カジノドライブから、ダートで一気に駆け抜けるスピードを活かす血統構成と言えるでしょう。

今日のレースは雨の重馬場を最大限活かした上での結果なので、JBCクラシックや今後の大レースがパサパサの良馬場だった時に真価が問われますが、まだ4歳なのでさらなるスピードアップに期待したいところです。

2着 ミューチャリー

南関の生え抜きとしておなじみミューチャリー、御神本騎手が主戦を務めていましたが、今回は初めて金沢の吉原寛人騎手とのコンビで参戦しました。

交流戦では勝ち切れないものの、地元南関のグレードレースでは末脚を武器に強豪として走り続け、常に強い相手に挑み続ける姿に好感の持てる1頭です。

重不良馬場で差してくるのが得意な馬なので、前回勝利した大井記念のように外から捲っての勝負に出ましたが、今回は終始メイショウカズサの手ごたえが良すぎる結果となりました。

遠征も苦にせずこなせた姿を見ると、本番でもノーマークにはできない存在でしょう。

3着 スワーヴアラミス

昨年のマーチステークスを勝った後しばらく不振が続きましたが夏の北海道で見事に復活しました。
主戦の松田騎手がレース中追い続けているように、自分から動くタイプの馬ではないのですが、スタミナ勝負になるとなかなか止まらないタフネスの持ち主です。

こちらも今日の馬場では前が止まらず苦しい展開になりましたが、人馬のコンビで最後まで諦めず、マスターフェンサーの追い上げをしのぐことが出来ました。

苦手な展開でも上位に残せた姿を見ると、一時期の不振から立ち直り、再び走れるスワーヴアラミスの姿に戻っているように見えます。

4着 マスターフェンサー

昨年の勝馬で今年は交流重賞を中心に4戦目がこのレースになりました。
力の要る良馬場を先行して持ち前のパワーで押し切るタイプの馬なので、スワーヴアラミス同様に雨の重馬場でのスピード勝負は苦手です。

斤量58キロで苦手な馬場、展開の中コーナーで最内を回り見せ場を作りましたが4着までで勝ち切れなかったので、G1級のレースを勝つにはまず好天が条件になりそうですね。交流重賞は既に4勝していて実力は確かなので、あとは勝てるレースに巡り合えるかがターニングポイントになりそうです。

レース総評

不良馬場をもろともせず、持ち前のスピードで逃げ切ったメイショウカズサと、中段から捲り上げて追い詰めるミューチャリーの2頭にとっては条件が最大限向いた一方で、スワーヴアラミスやマスターフェンサーにとってはタフネス比べのレースに持ち込めず、展開に泣いた面もある1戦でした。
本番まで1か月少々あるので、その時の馬場コンディションによっては逆転の目もあるかもしれません。

しかし展開が向いただけでは楽な手ごたえでレコードタイムは出せませんから、金沢の地で新星が名乗を上げたと言って差し支えないでしょう。

日本テレビ杯が終わるといよいよ本番へのメンバーも出そろいますので、まだ見ぬ強豪に若いメイショウカズサが立ち向かえるのか期待が集まります。

写真:はねひろ(@hanehiro_deep)

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