7週間続く小倉開催、通称「冬コク」も、いよいよ今週フィナーレを迎える。それよりも一足先に行なわれるのが小倉大賞典。ローカル、ハンデ戦、非根幹距離と、予想を難しくする材料が複数あり、毎年のように波乱の決着。過去5年、3連単の配当はいずれも10万円を超えている。

2022年の出走馬は、フルゲートの16頭。上位人気5頭が単勝10倍を切る混戦の中、4歳馬のアリーヴォが1番人気に推された。

ここまで9戦4勝。そのうち、小倉では4戦全勝と驚異の成績。ただ、芝のレースで4着以下に敗れたのは、2走前の菊花賞のみと安定感があり、その菊花賞も7着に健闘。「ホームグラウンド」で、重賞初制覇を目指していた。

僅差の2番人気に続いたのが、同じ4歳馬のヴァイスメテオール。2走前、今回と同じ距離、ローカル、小回り、ハンデ戦のラジオNIKKEI賞で、2着に2馬身半差の完勝。休み明けの前走、菊花賞は16着に大敗したものの、距離短縮で巻き返しが期待された。

3番人気は、6歳牝馬のランブリングアレー。こちらは「1800mの鬼」で、5戦4勝3着1回の成績。ただ、3走前にGIのヴィクトリアマイルで2着に好走しており、実績上位の存在。前走のエリザベス女王杯9着から、得意の距離で巻き返しなるか注目を集めていた。

以下、こちらも8戦3勝2着3回と小倉を得意とするダブルシャープ。前走の中山金杯2着から重賞初制覇を目指すスカーフェイスの順で、人気は続いた。

レース概況

ほぼ揃ったスタートから飛び出したのは、ノルカソルカとトップウイナーの2頭。その後、内枠のノルカソルカがコーナリングで単独先頭に立ち、2馬身のリード。

ジェネラーレウーノが3番手に続き、4番手はヴァイスメテオールを中にして、内レッドフラヴィア、外ランブリングアレーと3頭が並走状態。アリーヴォは中団の直後につけ、スカーフェイスとダブルシャープは、後ろから2、3頭目に控えていた。

前半1000m通過は、1分1秒0の緩い流れ。先頭から最後方まではおよそ15馬身の差で、レースは3コーナーへ。ここでもまだ、中団より前に位置した馬に大きな動きはなく、後方待機組の中では、ダブルシャープが上昇を開始。続く4コーナーで、アリーヴォとランブリングアレーが仕掛けて前を射程圏に入れ、最後の直線勝負を迎えた。

直線に入ると、今度は内からトップウイナーが先頭を奪い返し1馬身のリード。それを、人気上位3頭が捕えにかかり、中でも外に進路を取ったアリーヴォとランブリングアレーが抜け出し、残り150mでアリーヴォが先頭に。

2、3番手争いは、ヴァイスメテオールがランブリングアレーに食い下がるところ、最後方待機のカデナが、ラチ沿いを一気に追い込むも先頭までは届かず。

結局、アリーヴォが1馬身4分の3差をつけ1着でゴールイン。2着にランブリングアレーが入り、クビ差の3着にカデナが続いた。

良馬場の勝ち時計は1分49秒2。ついに、小倉で5戦5勝としたアリーヴォが連勝で重賞初制覇。重賞での1番人気の連敗は18で止まり、またしても、強い4歳世代から新たな重賞ウイナーが誕生した。

各馬短評

1着 アリーヴォ

連勝で重賞初制覇。当場での成績を5戦5勝とした。

「小倉の鬼」として思い出されるのが、メイショウカイドウ。2005年、当時1800mの北九州記念を制して、史上4頭目の小倉古馬重賞三冠を達成。続く小倉記念も勝利し、この年、小倉で行なわれた古馬重賞をすべて制した。

他場で未勝利とはいえ、前述したとおり、アリーヴォが芝で3着内を外したのは菊花賞のみ。2、4戦目で先着を許したジャックドールとヴェローチェオロは、既にオープン入りしており、実力はもちろんのこと、血統面でも将来性は十分。もう一つ上のステージで活躍しても、なんらおかしくない。

2着 ランブリングアレー

エリザベス女王杯9着から巻き返し、これで1800mは6戦4勝。2、3着が1回ずつとなった。ディープインパクト産駒でも持久力タイプで、長くいい脚を使えるのが持ち味。これは、おそらく母の父シンボリクリスエスの影響も多少あり、同馬を母の父に持つ馬は2022年も好調。年初の中山金杯を、レッドガラン(父ロードカナロア)が勝利している。

6歳牝馬で、クラブの規定により、おそらく引退の時は近い。それでも、次走中山牝馬Sに出走することがあれば、連覇の可能性は十分にある。

3着 カデナ

最後方から、上がり最速で追込み好走。2年前に当レースを勝利して以来、3着内を確保した。こちらも、ディープインパクトの産駒ながら、長くいい脚を使えるのが特徴。これまでの重賞3勝は、いずれも小回りコースか内回りコースで挙げている。

また、カデナのように、春の牡馬クラシックで敗れた持久力タイプのディープインパクト産駒は、高齢になっても活躍することがある。小倉大賞典を例に取れば、2012年のダービーで18着に大敗したヒストリカルは、8歳で小倉大賞典2着。福島記念でも3着に激走している。

今回は、ディープインパクト産駒が5頭出走。見極めが難しかったものの、結果的には、GI連対馬と、過去に小倉で重賞を勝利した馬が2、3着に入った。

レース総評

前半800mが49秒3、11秒7をはさんで後半800mは48秒2。後傾ラップとなったが、その4ハロンは、いずれも11秒9から12秒2で推移。小回りらしく緩急があまりない、持久力寄りのレースになった。

良と稍重の違いはあったものの、前年より勝ち時計が3秒7も遅かった2022年の小倉大賞典。タイム面では決して評価できないが、今回の「冬コク」は、早くも開催4日目に雨にたたられ、そこからは外差しの競馬に。6週目を迎えた先週末も同様で、小倉大賞典でも、スタートから多くの馬が馬場の中央より外を走っていた。

とはいえ、上位8着までを占めたのは、順番こそ違えど8番人気以内の馬。ほぼ実力通りに決着し、近年ほど波乱の決着にはならなかった。

勝ったアリーヴォは、いわゆる強い4歳世代。この世代は、春のクラシックを戦った既存勢力が、夏以降、続々と古馬混合の重賞を勝利した一方で、下級条件から成り上がってきた馬たちも、あっさりとオープンや重賞で通用している。

中でも、土曜日のダイヤモンドSを勝ったテーオーロイヤルや、東京新聞杯の勝ち馬イルーシヴパンサー。そして、1月29日のリステッド、白富士Sを好タイムで逃げ切ったジャックドールは連勝を継続。これらはすべて、春クラシックのトライアルを惜敗し、条件戦から仕切り直して勝ち上がってきた。

他に、芝路線では、11月の3勝クラス秋色Sを3連勝で制したゴールデンシロップ。そして、牝馬はリフレイムとメイサウザンアワー。さらに、日曜日の武庫川Sを勝利したシャーレイポピーに注目。ダートでも、年末の3勝クラス摩耶Sを勝利したバーデンヴァイラーや、グロリアムンディの次走に注目したい。

また、ソダシや、リフレイム、メイケイエールなど、個性派が多いのもこの世代の特徴。4歳2月にして、早くも「小倉の鬼」を襲名したアリーヴォに続き、「○○の鬼」と呼ばれるような、特定の条件で強さを発揮する馬が、今後も登場するだろうか。成り上がりと個性派の宝庫でもある4歳世代から、ますます目が離せない。

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