真夏の佐賀で行われるサマーチャンピオンは今年でちょうど20回目を迎え、中央から5頭、地元佐賀から4頭、笠松から2頭、兵庫から1頭の計12頭が参戦して争われた。このレースの特徴として、ダートグレード競走の中では珍しいハンデ戦で行われるという点があり、今年は上下で最大6.5kgのハンデ差がつけられた。

参戦した12頭の中には、2019年のJBCレディースクラシック勝ち馬ヤマニンアンプリメと、同年のJBCスプリント2着馬コパノキッキングという、GⅠ級で連対実績のある2頭が含まれていて、例年以上に豪華なメンバーとなった。

その中で、1番人気に推されたのはコパノキッキングだった。
ここまで中央・地方の重賞を計4勝している実績に加え、今回は天才・武豊騎手との初コンビということもファンの期待をさらに高めることとなった。

そして、僅差の2番人気に続いたのがヤマニンアンプリメ。
上述した2019年のJBCレディースクラシック勝ちを含めダートグレード競走3勝は文句なしに実績上位で、今回初コンビとなる川田騎手は祖父と父に地元佐賀競馬場の調教師を持つという縁もあった。

以下、人気順では3歳馬にして前走中央3勝クラスの特別レースを快勝したメイショウテンスイと、オープン特別の天保山ステークスを勝利したサヴィが続き、残念ながらヒラソールは本馬場入場で放馬し競走除外となり、地元佐賀のキャプテンハウテンが5番人気となって、レースは11頭で行われることとなった。

レース概況

小回りで直線の短い佐賀競馬場の重賞ということもあり、スタートが大変に注目された。
サヴィとキャプテンハウテンの5枠2頭が好スタートを切ったのに対し、コパノキッキングとヤマニンアンプリメの人気馬2頭は少しダッシュがつかず、メイショウテンスイもゲートを出てすぐ少し外へと膨らんでしまった。それでも酒井騎手が手綱をしごいてすぐに盛り返し、先頭集団は5枠2頭とメイショウテンスイが形成。
続く好位グループに、ヤマニンアンプリメ、ナムラムート、コパノキッキングがつけ、3馬身ほど開いてナラ。
さらに5馬身ほど開いてハクユウスターダム、キタノイットウセイ、オイカケマショウ、ダイチトゥルースが追走し、1コーナーから2コーナーへとレースは展開していった。

残り800mの標識を過ぎて向正面に入り、残り600m標識の手前まで隊列はほぼ変わらなかったが、残り600mの地点から4、5番手につけていたコパノキッキングとヤマニンアンプリメが仕掛け始める。
キャプテンハウテンは後退し、変わってナムラムートが進出してくるが、前とは4馬身ほどの差ができてしまっていたため、4コーナーでは早くも上位争いは中央から参戦した4頭に絞られる。

直線入口では、逃げるサヴィを内からヤマニンアンプリメが、外からメイショウテンスイが交わしにかかり、コパノキッキングがさらにその外から3頭をまとめて交わしそうな雰囲気で駆け上がってきた。
4頭の差はほぼなくなり、手に汗握る大接戦になると思われたが、直線に入るとサヴィが二枚腰を発揮して再度1馬身ほどリードを取る。他の3頭は、スタートで少し後手を踏んだことや斤量差が効いているのかなかなか差を詰めることができない。
ゴール前でメイショウテンスイが半馬身差まで詰めたものの、結局サヴィが逃げ切り重賞初制覇を達成。
2着メイショウテンスイ、3着コパノキッキング、4着ヤマニンアンプリメの順で入線し、地方馬では兵庫のナムラムートが5着で最先着となった。

各馬短評

 1着 サヴィ

上位入線した馬の中で唯一好スタートを切り、積極的なレース運びができた。
昨年このレースを制した和田騎手と、前走に続いてコンビを組めたことも大きかった。
父ストリートセンスは、史上初めてBCジュヴェナイルとケンタッキーダービーの両レースを制した馬で(他に両レースを制したのはナイキストのみ)、2013年のみダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスで供用されたため、2014年産の現6歳世代のみが内国産として走っている。
そして、獲得賞金上位3頭のファッショニスタ、サヴィ、ワイルドカードは、全てダーレー・ジャパン・ファーム生産でゴドルフィンの所有馬である。

 2着 メイショウテンスイ

着差を見る限り、スタート後すぐに外に膨れてしまったのが非常に痛かった。しかし、そこから酒井騎手がすぐに挽回し、スタート以外はある程度「やりたかったレース」ができたようにも思える。
軽量を生かせたことも大きいが、まだ3歳馬。大外枠ではない外枠に入れば、狙えるチャンスは今後も出てくるはずだ。

 3着 コパノキッキング

4着のヤマニンアンプリメにも言えることだと思うが、スタートで少しダッシュがつかなかったことと、これまでで背負った中で最も重い58.5kgという斤量が、ゴール前で微妙に響いたように見えた。
この58.5kgという斤量は、過去10年のサマーチャンピオンに出走した馬の中でも2位タイの重斤。
また1400m に関しても、2019年に根岸ステークスを勝ってはいるものの、他の4戦は2着3回と微妙に勝ち切れておらず、もしかすると少し長い可能性がある。

総評

GⅠ級レースで実績のある2頭が参戦し豪華メンバーとなった今年のサマーチャンピオンは、ハンデ戦らしく4コーナーからゴール前まで接戦となったが、結果1、2着したのはここまで重賞勝ちのない2頭だった。
その2頭に騎乗していた和田騎手と酒井騎手は、今年重賞で度々騎乗馬を馬券圏内に持ってきていて、好調そのままに今回も積極的なレースぶりで騎乗馬を好走に導いた。

特にサヴィに関しては、今回の勝利で2連勝と6歳にして本格化した感がある。
今回がまだキャリア16戦目と、ここまで大切に使われてきている印象。特に馬体重に関してはデビューから一貫して460kg台で出走してきた。ダートのオープン馬では数字上は小型の部類だが、パドックでも決して他馬と見劣ることはなく、身が入ってきたようだ。
今後も、秋から年末にかけてダート短距離界では非常に楽しみな存在になった。

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