![[重賞回顧]2強激突!連綿と続く勝利への路~2026年・ヴィクトリアマイル~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/05/202605191-scaled.jpeg)
遂に気温が30度を超える真夏日となり、ファンも人馬も初夏の日差しに迎えられたG1・ヴィクトリアマイル。先週のNHKマイルカップに続き、舞台は東京競馬場芝1600m。今度は古馬牝馬たちによる春の女王決定戦である。
2025年の牝馬三冠タイトルを分け合ったエンブロイダリーとカムニャックが、この舞台で再戦する。オークス、秋華賞、阪神牝馬ステークスに続く4度目の対決。桜花賞・秋華賞の二冠馬エンブロイダリーにはルメール騎手、オークス馬カムニャックには川田将雅騎手が騎乗する。
前哨戦の阪神牝馬ステークスでもエンブロイダリー、カムニャックの順でワンツーフィニッシュ。
勢いある4歳世代が、古馬G1の舞台でも主役となれるか注目が集まる。
ひとつ上の5歳世代では、昨年2着のクイーンズウォークが今年も参戦。主戦の川田騎手がカムニャックへ騎乗するため、西村淳也騎手との新コンビで悲願の戴冠を狙う。
同じサンデーレーシングの勝負服を背負うチェルヴィニアは、2024年のオークス・秋華賞を制した二冠牝馬。4歳時は勝ち星こそなかったが、今年初戦の中山記念では上がり33.7秒の末脚で5着まで追い込んだ。NHKマイルカップを制したレーン騎手の手綱で、久々のG1勝利を目指す。
1勝馬ながら重賞2着7回という異色の戦績を持つボンドガールも5歳世代。新馬戦でチェルヴィニアを破って以降、全国各地の重賞であと一歩届かない競馬を続けてきた。5歳初戦の小倉牝馬ステークス後には引退も検討されたが、丹内騎手とのコンビでアタマ差2着に好走し現役続行。
今週東京競馬場で誘導馬デビューした半兄ダノンベルーガも、その走りを見守っている…かもしれない。
6歳世代からは、重賞未勝利ながらクイーンステークス2着、札幌記念2着、小倉牝馬ステークス3着と堅実な走りを続けるココナッツブラウン。さらに7歳世代からは、東京競馬場で4着以下なしのカナテープ、6歳冬のターコイズステークスを制して重賞2勝目を挙げたドロップオブライトも参戦する。
4歳から7歳まで、世代を超えた18頭がフルゲートに揃った。勢いある4歳勢か、それとも経験豊富な古馬たちか。4万人を超えるファンが待つスタンドへ向け、春の女王決定戦が幕を開ける。
レース概況
スタートで逃げると目されていたアイサンサンが出遅れ、2馬身ほど後方に置かれる。ここで幸騎手が無理に位置を取り返さず後方待機を選択したため、内から武豊騎手がエリカエクスプレスとともにハナを主張した。
外からニシノティアモとチェルヴィニア、内にはカピリナ。真ん中ではエンブロイダリーとカムニャックが、それぞれのポジションを探りながらエリカエクスプレスのペースについていく。
向こう正面で、川田騎手は掛かり気味のカムニャックを抑えながら少し位置を下げる。入れ替わるように、ルメール騎手とエンブロイダリーが前へ進出。この2頭の前には逃げるエリカエクスプレス、追いかけるニシノティアモ、カピリナ、チェルヴィニア、マピュースがおり、5頭が先行集団を形成していた。
一方、中団にはカムニャックを追いかける位置にクイーンズウォーク。内にラヴァンダ、外にジョスランが続き、その2馬身後方に末脚勝負の馬たちが控える。ボンドガール、ココナッツブラウン、ドロップオブライト、カナテープ、ワイドラトゥールが並び、さらに後方にアイサンサン、ケリフレッドアスク、パラディレーヌという隊列になった。
前半600mは34.9秒。エリカエクスプレスはゆったりとした流れへ持ち込み、そのまま後続を引き連れてコーナーへ向かう。しかし、先行各馬も簡単には逃げ切りを許さず、4コーナーから徐々に差を詰め始めた。
直線に入ると、まずニシノティアモが外からエリカエクスプレスへ迫る。しかし残り400m地点でも、その差はまだ2馬身ほど。そして、そのさらに外から1頭、徐々に先頭との差を詰める馬が現れた。
中団から脚を伸ばしたエンブロイダリーが、残り200mで3番手まで進出。ルメール騎手の鞭に応えて一気に加速すると、逃げ粘るエリカエクスプレスを交わして先頭へ立った。

その後ろからはカムニャックも迫るが、カムニャックがエリカエクスプレスへ並びかけた時点で、エンブロイダリーはすでに1馬身以上前へ出ていた。最後まで懸命に追い込んだものの差は詰まらず、エンブロイダリーが後続に1.1/4馬身差をつけて勝利。勝ち時計1分30秒9の高速決着となった。
最後まで粘ったエリカエクスプレスに、ゴール前でクイーンズウォークとココナッツブラウンが並んで襲いかかる。写真判定の結果、クイーンズウォークがハナ差で3着を確保し、エリカエクスプレスが4着、さらにアタマ差でココナッツブラウンが続いた。
前哨戦の阪神牝馬ステークスに続き、4歳トップの2頭、エンブロイダリーとカムニャックが再びワンツーフィニッシュ。3着には昨年2着のクイーンズウォークが入り、上位人気馬たちがその実力を示す結果となった。
各馬短評
1着 エンブロイダリー ルメール騎手
前哨戦の阪神牝馬ステークスでは自ら逃げて勝利したエンブロイダリー。今回はアイサンサン、エリカエクスプレスといった前へ行きたい馬がいる中で、しっかり折り合いをつけながら道中を進めた。直線でも最後まで脚色が鈍らなかったように、鞍上の指示に素直に応えながら力を発揮できるタイプの馬に見える。
特に見事だったのはルメール騎手のポジション取りだ。向こう正面でカムニャックの前へ出た際、そのまま内へ閉じ込める形を作りながら、自身は先行馬の外でいつでも抜け出せる位置を確保。結果としてカムニャックは直線で一度外へ進路を切り直す形となった一方、エンブロイダリーは走路を大きく変えることなく、スムーズに加速してゴールまで駆け抜けた。

これで父父ダイワメジャー、父アドマイヤマーズに続く“3代東京マイルGⅠ制覇”を達成。さらに母系も、母父クロフネ、3代母ビワハイジというマイルGⅠを制した血統を持つ。秋華賞も勝利しているが、この馬にとって最も能力を発揮できる舞台は、やはりマイル戦と言っていいだろう。
昨年春はオークスへ挑戦して9着。次なる舞台が適距離の安田記念となれば、国内では古馬牡馬との初対決になる可能性が高いが、この完成度と東京マイル適性なら大いに期待したくなる。
2着 カムニャック 川田将雅騎手
昨年の春シーズン、A.シュタルケ騎手とのコンビでオークス馬となったカムニャック。3歳秋以降は激しい気性との戦いが続いているが、それでも川田将雅騎手がしっかり手綱を抑えながら運ぶ姿からは、この馬が秘めるスピード能力の高さが伝わってきた。
ただ、今回の勝負を分けたのは道中の“一瞬”だった。向こう正面で掛かり気味になったカムニャックを抑えた結果、エンブロイダリーとの位置関係が入れ替わり、直線では外へ進路を切り替える形になった。
それでも最後までしぶとく脚を伸ばし、エンブロイダリーへ迫った内容は見事。勝ち馬の上がり33.0秒に対し、カムニャックも33.1秒とほぼ互角の末脚を繰り出しており、着差以上に惜しい2着だったと言える。

さらに、マイル戦をベスト条件とするエンブロイダリーに対し、カムニャックは戦績から見ても本質的にはマイル以上の中距離向き。その条件差を踏まえながら、東京マイルGⅠでこれだけの走りを見せたこと自体が、この馬の能力の高さを証明している。
もし今年、昨秋は参戦しなかったエリザベス女王杯へ向かうことになれば、秋の古馬女王の座を争うだけの力は十分に示した一戦だった。今年の夏を超えて、更なる成長に期待したい。
3着 クイーンズウォーク 西村淳也騎手
これまで全13戦すべてで川田将雅騎手が手綱を取ってきたクイーンズウォーク。重賞3勝の実績を持ち、G1での最高成績は昨年のヴィクトリアマイル2着。道中最後方から追い込んできたアスコリピチェーノとタイム差なしの接戦を演じた。牝馬としては大柄な544キロの馬体から繰り出される、ダイナミックな走りが持ち味である。
今回は川田騎手がカムニャックへ騎乗するため、西村淳也騎手との初コンビ。追い切りから丁寧にコンタクトを取り、本番へ臨んできた。
レースではエンブロイダリー、カムニャックを見る位置でじっくりと追走。直線では西村騎手が迷わず外へ導き、そのリードに応えるように伸びてきた。初騎乗とは思えないほど呼吸の合った、綺麗な立ち回りだったと言える。

ただ、今回は前半600m34.9秒のスローペース。前で運んだエンブロイダリー、カムニャックに展開が向いた面は否めなかった。それでも最後は逃げ粘るエリカエクスプレスへしっかり追いつき、ハナ差で3着を確保。14戦目となった今回も、その実力を十分に示した。
今後どのレースを選択するのか、そして次走の鞍上がどうなるのかにも注目したい。
4着 エリカエクスプレス 武豊騎手
エリカエクスプレスは、ハナへ立ってスピードで押し切る形を得意とする一方で、折り合いを欠いてしまう課題も抱えていた。実際、これまでも道中で力みながら敗れたレースがあり、前走の中山牝馬ステークスでは前に馬を置き、折り合いを重視する競馬に専念して4着だった。
そして今回は、自らハナを奪う形。それでも武豊騎手は、高速タイムの出る東京芝1600mでしっかり折り合いをつけ、最後の直線まで余力を残してみせた。

直線では後続を引き離して粘り込みを狙い、最後まで先頭争いへ加わり続けた。上位3頭はいずれも先行集団より後ろで脚を溜めていた馬たちであり、その中で逃げ・先行策から踏ん張っての4着は価値の高い内容と言える。
結果こそ惜しくも馬券圏内には届かなかったが、“折り合って逃げる”という新たな形を見せたことは、今後へ向けても大きな収穫だったのではないだろうか。
5着 ココナッツブラウン 北村友一騎手
重賞未勝利ながら、掲示板外に敗れたのはこれまでわずか1度。牡馬相手に挑んだ昨夏の札幌記念でも2着に好走しており、その安定感はメンバー随一と言っていいココナッツブラウンにとって、今回は約1年ぶりとなるマイル戦への対応が大きなポイントだった。
序盤は後方馬群でじっくり脚を温存。直線では前が開いて抜け出したエンブロイダリーの後ろから、カムニャック、クイーンズウォークと並ぶように追い込み、上がり2位タイとなる32.9秒の末脚を繰り出した。
デビュー時は422キロだった馬体も、462キロまで成長。馬体の充実とともにレースぶりにも力強さが増しており、後方待機勢には厳しい流れの中で3着争いへ加わった内容は高く評価できる。
結果は5着、GⅠでも見せた安定感と末脚を見る限り、重賞タイトル獲得の日はそう遠くないはずだ。
レース総評
今年のヴィクトリアマイルは、“4歳世代の力”を改めて印象付ける一戦となった。
桜花賞・秋華賞を制したエンブロイダリー、オークス馬カムニャックと2025年の牝馬三冠を分け合った2頭が、前哨戦の阪神牝馬ステークスに続いて再びワンツーフィニッシュを決め、しかも勝ち時計は1分30秒9。真夏日となった東京競馬場で、現役牝馬トップクラスのスピード能力を存分に示した。
勝ったエンブロイダリーは、逃げ切った前走とは異なり、今回は先行集団を見る形から抜け出す競馬。展開に応じて自在にレース運びを変えながら、最後まで脚色を鈍らせなかった。ルメール騎手の位置取りも巧みで、カムニャックを内に閉じ込めながら、自身はスムーズに加速できる進路を確保。東京マイルGⅠを父父ダイワメジャー、父アドマイヤマーズに続いて3代制覇した血統背景も含め、“マイルの申し子”と呼びたくなる走りだった。
一方のカムニャックも、決して力負けではない。掛かる面を見せながらも、川田将雅騎手がしっかり折り合いをつけ、直線では勝ち馬に迫る33.1秒の末脚を披露した。マイルがベスト条件のエンブロイダリーに対し、こちらは本質的には中距離向き。それでもここまで走り切った内容は、牝馬トップクラスの地力を証明している。
また、昨年2着のクイーンズウォークも、西村淳也騎手との新コンビで見事な3着。スローペースで前有利の展開となった中、外からしっかり追い上げて存在感を示した。逃げたエリカエクスプレスも、“折り合って逃げる”成長を見せて4着に粘り込み、今後へ向けて大きな収穫を得た一戦だったと言える。
さらに、5着ココナッツブラウンも重賞未勝利とは思えない安定感を披露。後方待機勢には厳しい流れの中で32.9秒の末脚を使い、上位争いへ加わった内容は高く評価できる。
今回は上位人気馬たちがしっかり力を発揮し、“実績馬がその実力通りに走った”ヴィクトリアマイルでもあった。その中でも、やはり中心にいたのは4歳世代。昨年クラシック戦線を沸かせた牝馬たちが、古馬になってなお主役を譲らず、世代としての強さを見せたと言って良いだろう。
東京競馬場の次なるGⅠは、昨年エンブロイダリーとカムニャックが初対戦したオークスへと舞台を移す。国内牝馬GⅠでは最長となる2400m戦。桜花賞馬スターアニスが二冠を達成するのか、それとも別路線組が距離適性を示して主役へ躍り出るのか。若き牝馬たちによる新たな熱戦を期待したい。

写真:s1nihs、ぼん(@Jordan_Jorvon)
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