![[重賞回顧]東西中央競馬始め! 競馬が人をつなぐ日~2026年・中山金杯(現地観戦記)~](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/01/260104151915717-scaled.jpg)
ことの始まりは、有馬記念と東京大賞典を見届け、静かに年の瀬を実感していた年末のことだった。
10年来の友人が彼女を連れてタイから訪日し、日本で年末年始を過ごすという。年始に会おうという話の中で、ふと出たのが「日本の競馬を見てみたい」というリクエストだった。タイでもウマ娘の人気は高く、ゲームの舞台となっている“本場の競馬”に興味を持ったのだという。
かくして、2026年最初の重賞回顧は中山競馬場、スタンドからの現地観戦と決まった。
船橋法典駅の臨時改札を出て、競馬場を目指して「メモリアルウォーク」と呼ばれる地下通路を歩き、法典門から入場してスタンドを目指す。道中では、競馬場に向かって左側に歴代の皐月賞馬、右側には歴代よ有馬記念勝ち馬が連なる。途中、トウカイテイオーの前で写真を撮ったり、ゴールドシップの『馬の姿』に驚いていた姿は、ウマ娘から競馬を知ったファンとして、国を問わず共通するものなのかもしれない。
本日の目的である中山金杯は、1995年まで「金杯(東)」、京都金杯が「金杯(西)」と表記され、どちらも単に金杯という名称で行われていた。1996年に現在の名称へと改められたが、今も年始の東西金杯として親しまれている重賞である。
今年の中山金杯は14頭立てのハンデ戦。最軽量は現在3勝クラスのブランデーロックが背負う51キロ。一方、トップハンデは昨年の新潟大賞典を制したシリウスコルトの58.5キロで、両者の差は7.5キロに及んだ。
1番人気に推されたのは5歳牝馬アンゴラブラック。昨年は4戦3勝と安定した戦績を残し、G2アイルランドトロフィーでは重賞初挑戦ながら2着に好走。勢いそのままに、重賞初制覇を狙っての参戦となった。
2番人気は4歳牝馬のカネラフィーナ。昨年は3戦3勝、デビューからの戦績も4勝2着2回と底を見せていない存在だ。牝馬三冠路線への出走は叶わなかったが、秋華賞の裏開催で行われた新潟牝馬ステークスを制し、ここからは経験豊富な相手にどこまで通用するか。その力を測る一戦となる。
続く人気は明け7歳世代のケイアイセナ、そしてグランディア。ベテランの2頭はいずれもオープン、リステッド競走で安定した成績を残してきた実力馬だ。今回トップハンデを背負うシリウスコルトとの過去の対戦成績や、ハンデ戦ならではの斤量差を考慮してか、こちらの2頭が人気を上回る形となった。

実績馬が順当に力を示すのか、それともハンデを味方に新たな主役が現れるのか。
パドックやスタンドは日陰で、到着したときには寒そうにしていた友人たちも、レースが近づくにつれて高まる熱気の中で寒さを忘れていく。
中山競馬場に集まったおよそ3万4千人のファンと共に、各馬のゲートインを見守り、2026年の中山金杯が幕を開けた。

レース概況
スタートでは大外枠のリカンカブールが大きく跳ね、内ではウエストナウが躓きながら発馬してレースが始まった。
正面スタンド前では最内枠を利したケイアイセナが逃げを狙うが、その外からピースワンデュックが主張してハナへ。大外枠から押し上げたリカンカブールが続き、掛かり気味に前へ行ったカラマティアノスは津村騎手が無理をさせない。
ピースワンデュックの直後に誘導、外からリカンカブールが前に行ったことで外に壁ができた。1コーナー入り口で折り合いがついたように見える。
先行勢を見る形で内にアンゴラブラック、外にマイネルモーントが並び、その後ろにカネラフィーナ、グランディア、シリウスコルトが中団を形成。後方にはマイネルオーシャン、ウエストナウ、ブランデーロックが控え、末脚勝負を期すリフレーミングとニシノエージェントが殿から運ぶ形で、1コーナーから向こう正面へと入った。
向こう正面ではピースワンデュックがマイペースで逃げ、ケイアイセナとリカンカブールが並走。その2-3馬身後ろにカラマティアノスが続き、隊列は大きく変わらぬまま3コーナーへ。ここで中団以降の各馬が差を詰め、4番手のカラマティアノスを先頭に、マイネルモーント、ウエストナウ、シリウスコルトらが仕掛けのタイミングをうかがう。インコースにいたアンゴラブラックはカラマティアノスの進路を追う形で直線勝負に持ち込んだ。
直線に入ると、カラマティアノスが早めに抜け出し、逃げていたピースワンデュックに並びかける。外ではマイネルモーントがやや外に膨れ、その隙を突いてアンゴラブラックが追い出しを開始。中団からはカネラフィーナが内を突き、さらに大外からグランディアが鋭い末脚で前との差を詰める。
残り100m付近でピースワンデュックを振り切ったカラマティアノスに、外からアンゴラブラックとグランディアが襲いかかり、最後は3頭の追い比べとなった。ゴールではカラマティアノスとアンゴラブラックがほぼ並んで入線し、わずかにグランディアが3着。4着には内を選んだカネラフィーナ、5着にピースワンデュック、6着にリカンカブールが続いた。
中山の芝は最内が厳しいコンディションだったようで、先行していたケイアイセナは残り600m付近で失速。直線で内を突いたカネラフィーナも、内外ほぼ同じ位置からスパートした馬たちとの差が広がった点から、外の伸びが目立つ馬場状態だったことがうかがえる。
写真判定の末、着順掲示板の最上段に灯ったのは"11番"。ハナ差でカラマティアノスの重賞初制覇が確定した。
各馬短評
1着 カラマティアノス 津村明秀騎手
レイデオロ産駒で母父はハーツクライ。昨年の目黒記念を制し、有馬記念にも挑戦したアドマイヤテラと同じ血統構成を持つ。母ダンサールはサトノフラッグ、サトノレイナスの半姉という良血馬でもある。
3歳初戦の共同通信杯では、後に天皇賞(秋)を制するマスカレードボールの2着に好走したが、その後の皐月賞、日本ダービーでは二桁着順に終わっていた。前走は超高速決着のダート戦、前々走の京成杯オータムハンデキャップも最内が伸びる馬場で展開が向かなかったと考えれば、今回は初コンビの津村騎手とようやく理想的なレースができたと言える。
スタート後は前へ出した分、行きたがる素振りを見せたが、ピースワンデュックの直後で折り合いをつけ、先行4番手のポジションでレースを進めた。
逃げ争いの直後で折り合いに専念し、3コーナーからは自ら動いて勝ちに行く積極的な競馬。
直線では先頭に並びかけてからも脚色は衰えず、最後まで持続力を発揮した。
内埒沿いよりも数頭分外が伸びる馬場傾向を的確に捉えた進路選択も光った。
ポジションを取ってスムーズに運べば、アンゴラブラックを凌ぐ脚を見せたように先行策で新味が出た一戦。今後さらに折り合いがつくようになれば、持てる能力をもう一段引き出せるはずだ。
2着 アンゴラブラック 戸崎圭太騎手
3歳1月の新馬戦デビューながら、7戦4勝2着2回4着1回と安定感抜群の戦績から1番人気に推された。
前走のアイルランドトロフィーで2着に好走し、牝馬重賞でも十分に戦える力を示していた。
今回は好位のインでロスなく運び、直線では勝ち馬の進路を追う形でスムーズに加速。
外有利の馬場傾向の中でも、内目でしっかりと脚を溜め、最後まで勝ち負けに持ち込んだ。
最終盤で馬群を抜け出すのに一瞬待たされた分を思えば、結果は本当に惜しいハナ差だった。勝ち馬との差はわずかで、展開や進路ひとつで着順が入れ替わっても不思議ではない内容。
牝馬ながら牡馬相手に勝ちに行く競馬ができたことは大きく、今後の牝馬重賞戦線でも中心的な存在となりそうだ。年始からその期待に応えるだけの能力を、しっかりと示した一戦だった。
3着 グランディア 横山武史騎手
明け7歳のセン馬グランディア。これまでの戦績を振り返ると、冬から春にかけての中山競馬場では、中山記念で強敵相手に7着だった一戦を除けば、2勝2着1回3着1回と大崩れのない安定した成績を残している。
前走ディセンバーステークスから中1週での挑戦となったが、今回は終始外を回り、末脚を活かす形に徹した競馬。直線では大外へ持ち出し、逃げたピースワンデュックが粘り込む展開の中でも、鋭い脚で最後まで前との差を詰めた。位置取りと外を回った分のロスを考えれば、改めて能力の高さを示す内容だった。
初コンビとなった横山武史騎手の判断力の高さも随所に見受けられた。スタート後に内外から前に行きたい馬が殺到した場面では一度引き、1コーナーでは不利を受けない中段外目へ誘導。直線では前にいたシリウスコルトやマイネルモーントを交わすため、一瞬で大外に進路を切り替えた。この判断で進路が開け、最後まで前の2頭との差を詰める競馬ができた。
後方からの競馬ゆえに展開が噛み合う必要はあるものの、その末脚を見る限り、7歳となった今も衰えは感じられない。重賞タイトルまであと一歩の存在として、今年こそ差し切って1着でゴールする場面が見られるか、引き続き注目したい。
レース総評
この日は10Rのジュニアカップが1着から4着までハナ差の大接戦となり、続く11Rの中山金杯もハナ差、クビ差の決着。スタンドでは一戦ごとにどよめきと歓声が交錯し、初めて競馬場を訪れた友人たちを含め、多くのファンがその空気に引き込まれていくのが分かった。
冬の中山競馬場は風が吹くと身に堪える寒さだが、この日はほとんど風もなく、雲一つない快晴。2日前まで雪が降っていたとは思えない穏やかな天候も、競馬場で過ごすにはこの上ない条件だった。レースを待つ時間も、寒さより期待の方が勝っていた。
スタンドで聞く蹄音の重さ、馬群が動く瞬間の迫力、そして騎手同士が位置取りや仕掛けを探り合う駆け引き。映像では何度も見返す場面も、現地では一瞬の出来事として過ぎていく。その積み重ねが、生観戦ならではの体験なのだと改めて感じさせられた。
友人は「競馬を観に行くのが楽しかったし、ビギナーズラックも取れて良かった」と笑っていた。競馬の楽しさは当たり外れ以上に、こうして誰かと同じ時間を共有することにもある。この中山金杯が、日本の競馬をより身近に感じるきっかけになってくれれば嬉しい。
2026年、東西合わせて7万人以上のファンを集めて新年を迎えた日本でも、振り返ればコロナ禍には無観客で競馬が行われた時期があった。
一方タイでは、コロナ禍に加えて馬の疫病が蔓延し、競馬そのものが苦境に立たされた時期を経て、関係者の尽力とウマ娘のヒットを追い風に、再びファンと共に復活へと歩み出そうとしているという。友人は金杯を共に観戦した感想を、このように語ってくれた。
「いつかタイの競馬コミュニティも、日本のように盛り上がって熱気のあるものになることを願っています。でも、それにはまだ長い道のりがありますね。それでも、馬がきちんと大切に育てられれば、どんな姿になれるのかというお手本を実際に見ることができて、とても良かったです」
異なる入口から競馬に触れた老若男女が、同じスタンドで声を上げ、接戦に沸く。その光景は、日本で長い時間をかけて育まれてきた競馬文化であり、100年以上の競馬史を持つタイでも再び芽吹いていく可能性を感じさせるものだった。
日本で見たこの熱狂を、いつか友人たちがタイの競馬場で当たり前のように味わえる日を願いながら、年始の中山金杯を見届けた。

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