[重賞回顧]メンコの星は”大金星”! 西園正都調教師にはなむけの勝利を~2026年・シルクロードステークス~ 

2月に入って最初の重賞は京都競馬場の短距離戦、シルクロードステークス。
新春から使われてきたタフな馬場に負けないパワーと、1200m戦を走るスピードが求められる。
また、ハンデ重賞なので、実績でハンデを克服するか、軽ハンデを活かして実績馬を逆転するかも注目だ。
今年はオープン戦初挑戦のウインアイオライトの52キロから、昨年の京阪杯勝馬エーティーマクフィと一昨年の京阪杯勝馬ビックシーザーの58.5キロまで、6.5キロの間にハンデが設定された。

人気を集めたのはロードフォアエース、ハイペースを追走して9着に敗れた北九州記念を除けば1200m戦では大崩れが無く、鞍上の岩田望来騎手はこのレースまでに土日で8勝と勢いがある。ロードフォアエース自身も前走リステッド競走のラピスラズリステークスでは後続に0.5秒差をつけて快勝していて、初重賞制覇に期待がかかる。

そのラピスラズリステークスで5着に入った4歳牝馬カルプスペルシュが2番人気、昨年夏の北海道で横山武史騎手とのコンビで3連勝し、初重賞のキーンランドカップでも3着に好走した。息の合う人馬のコンビでこちらも初受賞制覇を目指す。

淀単距離ステークスを勝利して挑むヤブサメが3番人気で上位3頭は重賞未勝利、続いてトップハンデのエーティーマクフィ、昨年の勝ち馬エイシンフェンサーが5番人気と続き、上位人気はきっ抗していた。

3月末の高松宮記念に向けて、土煙舞う京都の芝コースを先頭で駆け抜けるのは果たしてどの人馬のコンビだろうか。

レース概況

スタートではアルテヴェローチェ、ナムラアトム、エコロレジーナが出遅れ、その他の各馬は横一線の発進となった。
積極的に二の脚を使ったのはエイシンフェンサー。内では青帽子のオタルエバー、イコサンがハナ争いに加わるが、太宰騎手は左右の進路を確認しながらフィオライアとともに外から一気に先頭へ。2番手にイコサン、その後ろにオタルエバーとエイシンフェンサーが続き、先行集団には内からアブキールベイ、カルプスペルシュ、ロードフォアエースが横並びで加わった。

最初の200mを通過したあたりから、ロードフォアエースが逃げるフィオライアを射程に入れるべく動き始める。
中団にはヤマニンアルリフラ、エーティーマクフィが並び、その外からレイピアがロードフォアエースの動きを窺う。後方にはウインアイオライト、ヤブサメ、カリボールが続き、離れた位置にアルテヴェローチェ、ビッグシーザー、ナムラアトムが末脚を繰り出すタイミングを待った。

残り600mでロードフォアエースがフィオライアに並びかけ、坂の下りへ。
残り400mで一度はロードフォアエースが前に出るが、内で太宰騎手がフィオライアを促すと、直線入口で再びハナを奪い返してラストスパートに入る。

直線では内埒沿いをぴったり回ってきたカルプスペルシュが最内を突き、各馬が外へ持ち出す中でアブキールベイもインコースから浮上。
残り200m、太宰騎手の鞭に応えてフィオライアが再び前へ出て、ロードフォアエースを振り切った。後方からレイピア、ヤマニンアルリフラ、ヤブサメが鋭く脚を伸ばすが、フィオライアはその半馬身前で粘り切った。

先頭のフィオライアから最後にゴールしたカリボールまでの着差は0秒8以内。ハンデ戦らしい大混戦となったが、スタートから主導権を握り続けたフィオライアが、最後まで力強く後続を退けた一戦だった。

各馬短評

1着 フィオライア 太宰啓介騎手

スタート直後から積極的に主導権を取りに行き、道中も初コンビの太宰騎手が迷いなく逃げの進路を探している姿が印象的だった。逃げ馬ゆえ後続の目標になりやすいが、近走も大きく崩れず、着差1秒以上離されていない粘り強さを見せてきた。

ロードフォアエースに一度は交わされながらも、直線入口で再びハナを奪い返し、ラピスラズリステークスでの雪辱を果たす形。ハンデ差があったとはいえ、それ以上の強さを感じさせる差し返しだった。インコースをロスなく使い、直線でも脚色を落とさず後続を振り切った内容は高く評価できる。

ハンデ戦らしい混戦を、自らレースの主導権を握ったまま制した一戦だった。

2着 レイピア 佐々木大輔騎手

8枠から道中は中団外目で流れを見極め、直線ではしっかりと末脚を発揮。
前を行くフィオライアがロスなく運んで止まり切らない中でも、最後まで差を詰めて2着に浮上した。

使い込まれた馬場の外目を通り、比較的きれいな走路を選べていたようにも見えるが、前に余力が残っていただけに外を回った分のロスは惜しかった印象。
それでも半馬身差まで詰め寄った内容からは、高い追走力と持続力がうかがえる。

外々を回っても折り合える操縦性もあり、展開ひとつで初重賞制覇も期待できる走りだった。

3着 ヤマニンアルリフラ 団野大成騎手

北九州記念を制して重賞ウィナーとなったヤマニンアルリフラ。
未勝利戦こそ勝ち上がれなかったものの、飛び級で挑んだ2勝クラスを制してJRA初勝利を挙げると、4歳春も2勝クラスから北九州記念まで3連勝で一気に重賞馬へと駆け上がった(ウマフリ『サラブレッド大辞典』KANZEN,2025,95p)。

以降は重賞戦線でスタート後方になる競馬が続いていたが、今回は五分の発馬を決め、レイピアの直後という好位置でレースを進めることができた。
レイピアより内を回れた分、直線まで脚を残せた一方で、最後の差は重賞馬として背負った斤量差が響いた印象もある。

スタートは引き続き課題となるが、前を射程に入れる位置で運べれば、重賞馬らしい強さを発揮できることを改めて示した一戦だった。

6着 アブキールベイ 吉村誠之助騎手

3歳春の葵ステークスで15番人気の大穴をあけて重賞馬となったアブキールベイ。
続く北九州記念でもその走りがフロック視される中、7番人気から3着に好走し、地力を証明してきた。

今回はセントウルステークスからコンビを組む吉村誠之助騎手とともに最内枠を活かし、ロスの少ない競馬を選択。直線ではインコースの空いた進路を伸びたが、内が荒れた馬場を通った分、外から伸びてきた差し馬に及ばなかった。それでも55.5キロ(牡馬換算57.5キロ)を背負っての走りは見せ場十分だった。

10番人気6着という結果以上に、レースでの力強い走りを評価したい。
今回の勝ち馬フィオライア、前年の覇者エイシンフェンサーと同様、ファインニードル産駒らしくハマった時の破壊力は健在で、重賞2勝目を期待したくなる存在だ。

レース総評

18頭立てのハンデ戦で、16番人気という低評価に甘んじていたフィオライアだったが、その勝ち方は決してフロックと片付けられるものではなかった。逃げ馬らしくスタートから主導権を握り、レースの流れを自ら作ると、早々に仕掛けてきたロードフォアエースのプレッシャーを受け止め、直線では一度交わされながらも差し返す強い内容。後続の差し馬が外から一斉に迫る中でも脚色を落とさず、逃げ馬としての粘りと勝負根性を存分に示した。

ハンデ戦らしく先行勢から差し勢までが入り乱れる混戦となったが、その中で勝ち馬は常に展開の中心にいた。ロスのない立ち回りと太宰騎手の判断力が噛み合い、馬場傾向と展開を味方につけた形ではあるが、それを活かし切るだけの地力がなければ成し得ない勝利だった。

2着のレイピア、3着のヤマニンアルリフラ、6着のアブキールベイと、いずれも異なる進路から脚を伸ばした馬たちが僅差で続き、ゴール前まで目が離せない攻防が繰り広げられた点も、シルクロードステークスらしい一戦と言えるだろう。

人気や着順以上に、各馬の持ち味がはっきりと表れたレース。
展開ひとつで結果が大きく入れ替わるハンデ重賞の醍醐味を、改めて感じさせる一戦だった。

先頭を駆け抜けたフィオライアと、共に参戦した僚馬ビッグシーザー。
そのメンコには、西園正都厩舎の水色地に赤い星の意匠が施されている。
この春に定年引退を迎える師へ、勝利という“金星”を届け、桜の舞う尾張路へと向かっていくことだろう。

写真:突撃砲

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