3月に行われる、GⅠ・高松宮記念のステップレースとなっているシルクロードステークス。京都競馬場の改修工事により、2021年のシルクロードステークスは、本番と同じ中京芝1200mで行われることになったため、例年以上に注目されるレースとなった。

出走頭数は18頭で、単勝オッズ10倍を切ったのは4頭。その4頭で人気は割れたが、最終的に4.1倍の1番人気に推されたのは、モズスーパーフレアだった。

昨年は、当レースで4着に敗れたものの本番の高松宮記念で巻き返し、クリノガウディーの降着があったものの、念願のGⅠ初制覇を達成した。しかし、北九州記念2着を挟んで迎えた秋は、スプリンターズステークスで10着、ダートに矛先を変えたJBCスプリントでも4着と敗れて実績を残せず、今回は、それ以来3ヶ月ぶりの実戦となった。

2番人気に続いたのはラウダシオン。昨年5月、GⅠのNHKマイルカップで9番人気の低評価を覆して優勝し、秋も、休み明けの富士ステークスで2着となって順調な滑り出しを切ったかに思われた。しかし、マイルチャンピオンシップでは、古馬の一線級に跳ね返されて15着と大敗。今回は、それ以来のレースとなったが、左回りは4戦2勝2着2回と好成績で、GⅠ勝ちの実績もあり注目を集めることとなった。

一方、3番人気となったのは、ライトオンキュー。重賞勝ちこそ2019年の京阪杯のみに留まっているが、芝の1200mでは、GⅠ以外はここまでほぼ崩れていない。前走のスプリンターズステークスも、一見、9着と大きな着を拾ったように見えるが、勝ち馬からは0秒8しか離れておらず、ここでは上位の評価を集めることとなった。

そして、4番人気に続いたのは、外国産馬のシヴァージだった。デビューからの13戦はすべてダートのレースに出走し、一昨年の10月にオープン入りを果たしたが、そこからは一転、8戦すべて芝のレースに出走。展開に左右される追込み脚質ではあるものの、ここまで7戦連続で上がり最速の末脚を使っており、今回は、コース相性が良く、今年に入って重賞で好走を連発している福永騎手に乗り替りということもあってか、注目が集まった。

レース概況

ゲートが開くと、ヴェスターヴァルトが好スタートを切り、逆に大きく出遅れるような馬はいなかった。予想通り、モズスーパーフレアが二の脚で上回ってハナを切り、外からクリノガウディーがそれに続く。内からセイウンコウセイが3番手に続き、奇しくも、昨年の高松宮記念で先行した3頭が、今回もレースを引っ張る展開となった。

ライトオンキューとラウダシオンは、直後の4番手を併走した一方で、4番人気のシヴァージは、いつものこの馬に比べると少し前目の、ちょうど真ん中9番手を追走していた。

前半の600mは、33秒7の平均ペースで通過し、先頭から最後方まではおよそ10馬身ちょっとの差で、各馬3コーナーを回った。当週からは、Bコース使用に変わっていたが、5週目の開催ともなると、馬場の内側の荒れはこれまで以上に目立ち、先行3頭は、それぞれ内から2~3頭分を開けて4コーナーを回り、レースは最後の直線へと向いた。

迎えた直線、多くの馬が馬場の中央から外へと持ち出された。坂を駆け上がるまでは、先行3頭が横並びとなって粘り込みを図っていたが、坂を上り切ったところで、内からライトオンキューがそれらを交わして先頭に立ち、後続に1馬身半のリードを取る。

追ってきたのは、シヴァージとラウダシオン、さらにはリバティハイツの外枠3頭。中でも、シヴァージの末脚が目立ち、残り50mでライトオンキューを捉えると、最後は1馬身4分の1の差をつけて1着でゴールイン。接戦となった2着争いはライトオンキューが粘りきり、アタマ差及ばず、ラウダシオンが3着に入った。

良馬場の勝ちタイムは1分8秒3。芝のレース、そして追込みにこだわってきたことがついに実を結び、シヴァージにとっての芝での2勝目が、嬉しい重賞初勝利となった。

各馬短評

1着 シヴァージ

上述したとおり、ここまで7戦連続で上がり最速の末脚を繰り出していたが、今回もやはり上がり最速に。レース上がりを1秒上回る、33秒6の末脚を繰り出し、ついに重賞初制覇を飾った。

もちろん、こういった脚質のため、常に展開に左右され、直線で不利を受けないこと、前が詰まらないことが上位進出のポイントとなる。ただ、速いペースで逃げるモズスーパーフレアが同じレースに出走してきた場合は、この馬の末脚が生きる展開となる可能性は高い(他に、アウィルアウェイも、モズスーパーフレアと同じレースに出走し、度々好走している)。

騎乗した福永騎手は、中京競馬場の芝コースに強く、特に芝1200mと芝2200mは、過去3年間で共に複勝率64%と非常に強い。高松宮記念でも、過去19戦して3勝、2着3回3着2回と好成績で、本番でもコンビ継続なら引き続き注目したい。

また、蛇足ではあるが、同騎手が「芝のレースで外国産馬の牡・せん馬に騎乗したケース」では、「芝のレースで内国産馬を含む牡・せん馬に騎乗したケース」での複勝率を少し下回る44.9%となっているが、複勝回収率では逆に105%と上回っている点は覚えておきたい。

2着 ライトオンキュー

内枠を生かした競馬に終始し、道中は内1頭分を開けて追走。ゴール前で交わされて2着となったが、やはり1200mでは崩れず堅実に走るところを見せた。

短距離に強い「ダーレージャパンファーム生産」の「ゴドルフィン所有馬」で、これは2018年に高松宮記念とスプリンターズステークスを制したファインニードルと同じ組み合わせ。この馬も、本番で引き続き注目したい。

3着 ラウダシオン

2歳時の小倉2歳ステークス以来、1年5ヶ月ぶりの1200m戦となったが、道中は流れに戸惑うことなくスムーズに先団を追走。前を捕らえることはできなかったが、上々の内容だった。3着となり、左回りで初めて連対を外したものの、今回も大きく崩れることはなかった。

レース総評

今開催の2週目と3週目の回顧で「中京競馬場の芝は、ロベルトを持つ馬に注目」と書かせていただいたが、さすがに短距離戦ではそうはいかず、このレースの上位3頭は、いずれもストームキャットを持っている馬だった(このレースでは他に、エイティーンガールとモズスーパーフレアが該当)。

中京開催は今週が最終週となるが、日曜日の最終レースに、2勝クラスの芝1200mが組まれているため、そこにストームキャットを持つ馬が出走してくれば、注目したい。

また、今週の開催が終わると、次回の中京開催は、1ヶ月後の3月13日から開幕する。その2回中京は、6日間の開催となり、最終日のメインレースに高松宮記念が組まれている。その次開催は、今開催から1ヶ月しか間隔がなく、馬場が劇的に良くなることは、あまり考えられない。

もちろん、本番が行われる週や、その前週の馬場傾向をしっかりと見極める必要はある。ただ、血統面では、2月7日の最終レースだけでなく、次開催の芝1200mのレースや高松宮記念でも、引き続きストームキャットを持つ馬に注目できるのではないだろうか(ロードカナロア産駒も該当)。

最後に、これもよく知られていることだが、高松宮記念は内枠が非常に強いレースで、過去10年で3着以内に入った30頭中18頭が2~4枠の馬だった。特に、2枠と4枠は、それぞれ7頭ずつが3着以内に入っており、これは本番まで覚えておきたい傾向である。

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