ダートの出世レースとして親しまれるレパードS。
2009年の創設以降、様々な名馬を送り出してきた登竜門だ。
その中で、初代王者・トランセンドの出したレコードは長年破られることなく、実に10年以上の月日が経っていた。燦然と輝くレコードタイムを破るものは現れるのだろうか──。


今年の3歳ダート戦線は、混沌としている。
きっかけは、JDDで圧倒的人気だったカフェファラオが7着に沈んだこと。

近年のダート界は「3歳馬は古馬に叶わない」という常識を覆すような名馬が続々と登場していただけに、新たなる世代の有力馬・カフェファラオを必要以上にスター視してしまったのかもしれない。まさか同世代との戦いで土がつくとは、と感じたファンも少なくなかっただろう。


理由はどうあれ、単勝1.1倍の全勝馬が7着に敗れたのだから、他陣営は俄然色めき立つ。
ダート界ニューヒーローの座を目指し、レパードSには15頭の素質馬が集まった。

1番人気はデュードヴァン。
デクラレーションオブウォー産駒の3勝馬で、前走カフェファラオの2着と善戦していたことが評価された。すでに青竜Sを含め3勝をあげているというたしかな実績も、高評価に繋がったのだろう。

2番人気はミヤジコクオウ。
こちらは前走のJDDこそ5着と振るわなかったが、鳳雛Sの勝ちっぷりが評価された形となった。
さらにアパパネの仔・ラインベックと母父ディープのライトウォーリアが人気で続き、この4頭までが単勝一桁台に収まった。

レース概況

スタートでメイショウダジンが出遅れ。8番人気のトランセンド産駒が、苦しい競馬に追いやられる。
それ以外は概ね揃ったスタートで、不良馬場を駆け抜けていった。

1コーナー付近でタイガーインディ・鮫島克駿騎手がハナをきるかと思いきや、内側のケンシンコウ・丸山元気騎手が譲らない。2頭で競い合うように駆け上がっていく。熾烈なポジション争いを、後続は警戒しつつも静観といった流れ。

2コーナー通過後にはケンシンコウがやや前に出る形で、ようやく隊列が落ち着いた。
レースを引っ張る2頭を睨む形でラインベックらが追走。やや縦長の展開となる。
不良馬場だが、どこまで時計が出る状態なのか。

4コーナーを回る頃に2番手のタイガーインディ、さらに先行勢からラインベックらがペースをあげ、逃げるケンシンコウをつかまえにいく。
しかしコーナーを曲がりきったところで、すでに勝負あり。
新潟の長い直線で、ケンシンコウは独走・一人旅を演じた。

中団後方で待機していた馬たちも直線に入って懸命に追ったものの、実績馬ミヤジコクオウの2着が精一杯。
結局2馬身半差をつけての勝利で、さらにはトランセンドのレコードを塗り替える好タイムが叩き出された。

各馬短評

1着 ケンシンコウ (丸山元気騎手 7人気)

終わってみれば、大楽勝の圧勝劇。
考えてみればユニコーンSでもデュードヴァンに次ぐ3着と好走していた実績馬である。
同じユニコーンS組のデュードヴァンが1番人気であったことを踏まえると、完全に人気の盲点になっていたと考えるべきだろう。

輸入種牡馬・パイロの産駒だが、5代血統表を広げるとアジュディケーティング・ナイスダンサーといった懐かしの名馬たちの名前も確認できる。脈々と受け継がれてきた「大物」の血が、ここにきて騒いだのかもしれない。

先行から押し切る競馬は、ポテンシャルを感じさせる走り。
馬場状態にもよるが、今後成長することでどのような競走馬になっていくか、注目だ。
ひとまずは、馬場はどうあれトランセンドのレコードを塗り替えたことを讃えたい。

2着 ミヤジコクオウ (和田竜二騎手 2人気)

人気馬としての意地を見せつける最終直線だった。
こちらも「馬場状態次第」という条件がつくかもしれないが、直線の末脚はかなりの能力を感じさせた。

JDDでは4番手からの競馬で沈んだので、位置どりには気をつけたいところではあるが、末脚勝負という点では世代屈指の魅力を持つ馬かもしれない。
武器である末脚にこだわることで、却ってもどかしい競馬が続くタイプにならないと良いが……。
逆に言えば、直線の長い新潟で勝利しておきたかったところかもしれない。

3着 ブランクチェック (戸崎圭太騎手 5人気)

勝ち馬と同じく、パイロ産駒。
今日の馬場は、この血統に向いたのかもしれない。

牝馬として同世代の3歳牡馬の多くに先着しているだけに、今後の交流重賞・ダート牝馬戦線での活躍が大いに期待される。これで通算5戦3勝、2着1回・3着1回と、高い水準で安定感を発揮。
新たなる女王候補として、今後も注目したい。

総評

レース後は「新潟だけにケンシンコウ(=謙信公)」というファンの声も聞こえてきた。
上位3頭は、それぞれが今後のダート戦線を引っ張っていけるレベルの素質があったように思う。

また、果敢に攻めていったラインベックは残念な結果に終わったが、騎手とのコミュニケーションは取れていたように見受けられるので、得意な条件を見つけたら活躍できそうな印象。

トランセンドのレコードが破られたことからも、ダート新時代がやってきそうな予感がある。
群雄割拠の3歳ダート戦戦、というに相応しい活躍を、各馬に期待する。

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