[インタビュー]馬産地フォトグラファーのレジェンド、内藤律子さんが抱く馬産地への想い。

北海道浦河町で、馬産地ならではの写真家として活躍されている内藤律子さん。

競馬報知のカメラマンを経て、数々のサラブレッドを撮影した個展の開催や、ハギノカムイオーの子、ハギノシンボルの誕生からデビューを追いかけた写真集『神威の星サラブレッド・ファンタジー』の出版など、幅広い創作活動の功績が称えられ、1989年に第3回JRA賞馬事文化賞を受賞されました。

内藤さんのサラブレッドの写真の数々は、まるで自分がその場で馬たちを見ているような迫力と臨場感があり、「馬一頭一頭に心があり物語がある」事をあらためて気づかせてくれます。

1997年に北海道浦河町に移住され25年目を迎える今年、内藤さんのライフワークとなった馬産地での撮影ライフとカレンダー製作のこと、そして今まで出会った貴重な名馬たちのお話をお聞きしました。

浦河町を馬の絵やデザインであふれるような街にしたい

1979年に競馬報知の企画でハギノトップレディの母イットーを取材することとなった内藤さん。その3番目の仔となる後のハギノカムイオーの成長を追いかけたことがきっかけで、ライフワークとなる『馬産地北海道での子馬と親子の撮影』に魅せられ、時間を作ってはハギノカムイオーの子供や孫たちの撮影に日高の牧場を津々浦々まわったそうです。

そして1997年には北海道浦河町へ移住。2001年からは毎年8月に浦河町立図書館で個展を開催されています。

「イギリスのニューマーケットのように、町中が馬の絵やデザインであふれているようにしたい。せっかく北海道に馬を見にいらして、馬の物が何もないのはさびしいので、夏に浦河町に来れば写真が見られると思って頂けたらいいかな」

浦河町は文化に対しても非常に柔軟な町で、図書館ではその他にも様々な展示会が行われているそうです。

浦河町に渡ってからの内藤さんは、写真集『神威の星』のモデルとなったハギノシンボルを引き取り余生を見届けました。近所にある預託先の牧場では、内藤さんの家からも見える放牧地にハギノシンボルを放してくれていたそうです。自家栽培のにんじんをハギノカムイオーとハギノシンボルにあげるのが楽しみだったとか。内藤さんの馬への愛情の深さが伺えます。

子馬たちの写真を撮り続ける中で、出産にも立ち会ったウォーターナビレラとの出会い

「ねらった写真が撮れるのは牧場さんの協力があってこそ」と語る内藤さんには「子馬たちの成長を追いかける写真絵本をまた作りたい」という思いがあるそうです。

「お母さんのおなかの下をくぐり抜けていけるような、小さな子馬」をさがしていたところ、2015年、内藤さんの撮影に協力をしてくれた浦河町の伏木田牧場で一頭の栗毛の子馬に出会います。中央地方と堅実に走り続けたシャイニングサヤカの初仔で、後にホッカイドウ競馬で活躍する「ソイカウボーイ」です。

「逆光でも美しく撮れる栗毛」のソイカウボーイは、素直な性格でバネがとてもよく活発に動き回りました。内藤さんの期待以上にいい写真が撮れたそうです。そして、このソイカウボーイとの運命的な出会いが、後の中央競馬の重賞勝馬との出会いにつながります。

「とにかく(母馬の)シャイニングサヤカの子供たちはすごくいいバネを持っていて、いろんなポーズが撮れました。それで、伏木田牧場さんにサヤカの子が生まれる時はぜひ教えてほしいとお願いしていました」

2019年5月27日にシャイニングサヤカの5番目の仔、後のウォーターナビレラが生まれます。

ウォーターナビレラは、昨年のファンタジーステークス優勝、そして暮れの阪神ジュベナイルフィリーズを3着と好成績を残し、2022年の3歳牝馬路線の期待の一頭です。遅生まれでしたが、同級生たちに一生懸命くっついて遊んでいたのが印象に残っているそうです。

また、ウォーターナビレラで初重賞制覇となったオーナーの山岡氏は、先代から関わった馬達を最後まで愛情深く見守って下さるファミリーで、馬をとても大事にするオーナーに活躍馬が登場し本当に嬉しいと話されます。

馬産地の馬達の一瞬を見てほしい

「新しく競馬や競走馬を好きになった方々にもぜひ、私の写真を見て頂けたら」

内藤律子さんの作品は現在、カレンダー、そして内藤律子さんのホームページで楽しむ事が出来ます。

カレンダーは2種類。サラブレッドの四季を追いかけた「サラブレッドカレンダー」、そしてとねっこのかわいらしい写真を集めた「とねっこカレンダー」です。2022年のカレンダー製作のため、初めてクラウドファンディングに挑戦された内藤さん。多くの方の支援が集まり、内藤さんの感謝がこもった作品に仕上がっているそうです。サラブレッドカレンダーの2月には1歳時のガロアクリークが、とねっこカレンダーの1月にはウォーターナビレラの出産直後の母子の貴重な写真が、それぞれ掲載されています。ターフィー通販クラブや内藤さんのホームページで販売中とのことです。また、ホームページにはたくさんの写真も掲載され、馬達の一瞬を切り取った姿を楽しむ事ができます。

内藤律子さんのサラブレッドの写真はなぜだかいつも心に残ります。それは、写真を通して馬の気持ちが伝わってくるからだと気づきました。みなさんもぜひ内藤律子さんの世界を体感してみてください。

内藤律子さんHP:https://blue-wind.wixsite.com/ritsuko-naito/welcome

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