[現地レポ]社台スタリオン種牡馬展示会を見て感じた、種牡馬の美しさと現地スタッフの想い

皆さんは"種牡馬展示会"をご存知でしょうか?
その名の通り、種付シーズン開始前に、各スタリオンに繋養されている種牡馬を生産者をはじめ関係者にお披露目する場です。

人気種牡馬は展示会開催時点で満口になっていることもあるので「満口の種牡馬を見に行っても意味あるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、

  • 繋養2年目の種牡馬がどのような体型になってきたか
  • 育成段階の馬が父親似なのか、母父に似てるのかのチェック
  • 新種牡馬が新しい環境にどのような反応を示しているか

と、様々なメリットがあります。

2024年度の繁殖牝馬の配合相手の検討のため、2月6日開催の社台スタリオンの種牡馬展示会に参加させて頂きましたので、今回はそのレポートをお届けします。 

超豪華! 大注目の新種牡馬たち

イクイノックス号

2024年、社台スタリオンには3頭の新種牡馬がスタッドインしました。
まず1頭目は圧倒的な記録と記憶を残して引退したイクイノックスです。
種付価格は2000万円と国内の新種牡馬としては歴代最高の価格設定。
それだけ高額にもかかわらず既に満口と、並々ならぬ期待を寄せられています。

今回、イクイノックス号にとって初めての種牡馬展示ではありましたが、パレードリンクを堂々と周回する姿は見事の一言に尽きます。競走馬時代のパドックで見せた闘争心も健在で、身体的な能力は勿論ですが、レースを支配するようなメンタル面の強さも産駒に伝わっていくのではないかと感じました。

シュネルマイスター号

3歳マイルの頂点に立ち、古馬としてもマイル戦線で活躍したシュネルマイスター。
父キングマンは種牡馬として早くから数多くの勝ち馬を輩出し、産駒達はフランス・イギリス・アメリカそして日本と、オールラウンドに活躍できる種牡馬として名を馳せています。

また、母セリエンホルデの血統を辿ると、マンハッタンカフェ・ブエナビスタなど、数多くの名馬の名前も見つかる名牝系です。

管理された手塚先生も「1歳時に初めてみた時から、必ず種牡馬にして牧場にお返ししなければならない」と感じていたと語るほど、とてつもない血統背景・ポテンシャルの持ち主と言えます。シュネルマイスターは父キングマンと同様に、早くから重賞戦線で活躍してくれる産駒を送り出してくれのではないでしょうか。

グレナディアガーズ号

2歳時には3戦目で勝ち上がり、4戦目の朝日杯では2歳コースレコードで勝利。

しかし3歳のマイル戦線では勝ち切れず、古馬との初対決となったマイルチャンピオンシップで二桁着順と苦戦が続きます。一部からは「早熟だったのでは?」という声も聞こえてきましたが、年末の阪神カップで勝利。引退レースとなった昨年の阪神カップでも、着順こそ2着ではあったもの、上がり3ハロン33.8秒と驚異的なタイムを記録し、種牡馬としても息の長い産駒を送り出せる可能性を示すことができたのではないかと思います。

スタッドインしてすぐということもあり、まだ完全に種牡馬のような体型というわけではありませんが、父フランケルは言わずと知れた世界的名種牡馬。母ウェイヴェルアベニューもBCフィリー&メアスプリントの勝ち馬と、世界規模のカップリングで生まれた本馬ですから、種牡馬としてどの様な活躍をするか楽しみで仕方ありません。

さらなる飛躍が活躍される種牡馬たち

モーリス号

産駒デビューから5年目となる本馬。大阪杯を制したジャックドールやピクシーナイトの種牡馬入りが決まるなど、早くから種牡馬としての才能を発揮しています。

今回モーリスをピックアップしたのは、写真を見ていただくと分かる通り馬体全体に栄養斑が出ていて、健康状態がとても良いと感じたからです。

種牡馬は現役時代の競走能力も大事ですが、種牡馬入り後にどれだけ体調を維持するかも、受胎率に影響するとても大事な能力の1つです。

万全の体調で種付シーズンに挑むモーリス。とても気が早いですが2025世代の活躍が楽しみです。

サトノクラウン号

2023年ダービー馬タスティエーラの父、サトノクラウン。
種牡馬入り初年度は種付価格100万円という価格設定でしたが、初年度からダービー馬を輩出したということもあり、価格は200万円に上昇。種牡馬の世界において、種付料が上がるというのはなかなか珍しいことです。一時期は種付頭数が78頭と初年度に比べ半減した本馬でしたが、2023年には163頭と一気に回復。一躍、人気種牡馬に返り咲きました。

展示会でも「堂々としている」「風格が出てきた」などの声が周りから聞こえるほど、ダービー馬の父として威厳を発揮するようになった本馬。今後もタスティエーラに続く優駿をターフに送り出してくれることは間違い無いでしょう。

オルフェーヴル号

国内G1馬ラッキーライラック・エポカドーロ、ブリーダーズカップディスタフを制したマルシュロレーヌ、そしてドバイワールドカップを制したウシュバテソーロなどを輩出しているオルフェーヴル。

競走成績、種牡馬成績としても一流のオルフェーヴルですが、今回、その美しさに目を奪われました。個人的な話になりますが、オルフェーヴルを生で見るのはこれが初めて。「芸術品のような美しさ」と言われる本馬を間近で見るのを楽しみにしていました。

そしていざ登場すると、想像以上の美しさに言葉を失いました。
脚色なしに"想像以上の美しさ"でした。

カメラでその美しさが全て伝わるとは思えませんが、こちらの写真を見ても彼の威厳と美しさが伝わるのでは無いでしょうか。社台スタリオンでは、予約制ではありますが一般の見学も受け入れていらっしゃいます。見学の際には、注意事項をよく読んでいただいた上で、是非とも彼の美しさを直に感じていただければと思います。

イスラボニータ号

2014年の皐月賞をはじめ、重賞7勝を誇るイスラボニータ。
産駒デビュー後3年目となった2023年には、産駒が東京競馬場で1日4勝の大活躍をするなど、G1勝ち馬こそ出ていないですが、関係者からの評価も高い1頭です。実際「今年も付けようと思っているんです」という声も会場から聞こえてきました。

高評価の裏付けとして、種付け価格が今年から受胎条件の200万円へ50万円アップ。

2023年のサマーセールで知人の馬主さんがイスラボニータ産駒を購買されたので、購買後にじっくり見学させて頂いたのですが、父親譲りの素晴らしい馬体は勿論のこと、歩き姿からもポテンシャルの高さを感じ取ることができ、イスラボニータの種牡馬としての能力を実感することができました。きっと産駒のG1勝利も、時間の問題なのではないでしょうか。

レイデオロ号

最後にご紹介させて頂きたい種牡馬はレイデオロ。
言わずと知れた、2017年のダービー馬です。スワーヴリチャード、アルアイン、ウインブライトなど錚々たる面子が出走したダービーで世代の頂点を取りました。

古馬としても天皇賞(秋)を制した本馬への、種牡馬としての期待値はとても高いものでした。

ですが、一筋縄では行かないのが競馬の世界。決して初年度にして悪い成績では無いのですが、同期のスワーヴリチャードが大活躍したということもあり、種牡馬としての今後を不安視する声も上がっています。

しかし、種牡馬展示会で、レイデオロについて社台スタリオンから「社台スタリオンの歴史は、種牡馬の可能性を強く信じ続けた歴史でもあります」という発言がありました。現場の方々がどのような想いで種牡馬と接しているのか、という点についても、この記事の読者の方々には是非知って頂きたいところです。

本馬の父であるキングカメハメハも同じような状況に直面した時期もあったとのことですが、今では誰もが知る日本の名サイヤーとしてその名を轟かせています。

ノーザンファームで生まれ、名伯楽藤沢調教師にダービートレーナーの称号を贈ったレイデオロ。今でこそ厳しい戦いを強いられていますが、社台スタリオン様の歴史と底力が、父の後に続く名種牡馬への仲間入りを後押しすることでしょう。一競馬ファンとしても、彼の活躍を応援しております。


以上、社台スタリオンの種牡馬展示会レポートになります。

種牡馬展示会は毎年開催されていて、ぱっと見では前年との変化に気が付きにくいように感じます。しかし現場では、歩きや立ち振る舞いを見て「種牡馬らしい体になってきましたね」と前年までとの違いを比較される関係者様も多くいらっしゃいました。

また、種牡馬展示会は各スタリオンが生産関係の皆様に種牡馬をアピールする最大の場所とも言えますから、馬のコンディションも素晴らしく、美しかったです、

そしてなによりもその種牡馬としてのキャリアを請け負っている立場としての意気込みを、特にレイデオロの解説の中で受け取ることができました。現役の競走馬たちだけでなく、種牡馬として次のステージで頑張っている彼らのことも応援していただけると幸いです。

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