モーリス・ドゥラメンテを中心に話題を集める今年の新種牡馬たち。ディープ・キンカメという2頭の大種牡馬を失った日本競馬界にとって、救世主となり得るのはどの馬だろうか？
今回はその中から、ディープ・キンカメのダービーレコードを塗り替えた実績馬ドゥラメンテについて語り合う。
語り手は、ベストセラー「馬体は語る」の著者・治郎丸敬之さんと、「天才のPOG青本」執筆陣の1人である緒方きしん。
治郎丸：前回はモーリスの話で盛り上がったね。今回はそのライバルになるであろうドゥラメンテについて。ドゥラメンテは日本競馬界の結晶みたいな超良血馬だよね。配合相手に困るかもしれないけど。
緒方：活躍血統全部のせ、みたいになってますもんね（笑）ノーザンテースト・トニービン・サンデーサイレンス・キングカメハメハとくれば、必然的に海外からの輸入牝馬に頼ることにはなりそうです。
治郎丸：そうなんだよね、配合相手選びが難しいよね。前回ドゥラメンテ産駒はダービーに向かないかもって話をしたよね。もっと正確に言えば、きっと適性距離としてはダービーはドンピシャなんだろうけど、仕上がりが早いとは思えないし、トライアルからダービーを目指す感じかなと思ってる。今の競馬は「早めに稼いでゆったりとしたローテで」というものだから、それにはマッチしていないかも。どうやらトニービンの血が、本格化をゆっくりなものにしているらしい。
緒方：ドゥラメンテこそダービーに間に合いましたが、基本的にエアグルーヴの一族は活躍馬は多くても本格化は遅いですからね。ルーラーシップとかもゆっくりでした。元々は年内にデビューしてくれたら御の字という血統ですし、ダービー目指すならトライアル、というイメージには賛成です。ドゥラメンテみたいな秋デビューで良いと思います。でも、ダービーに間に合う馬は初年度から登場してくれると思いますよ！例えば、ドゥラモンド（母シーズインクルーデッド）は評判のようですけど。
治郎丸：ドゥラモンド（母シーズインクルーデッド）か……シルクの募集馬だから見てはいるんだけど、そんなに印象に残らなかったかな。そもそもの話になるけど、4月にドゥラメンテ産駒について取材した時は、ようやくしっかりと負荷を掛けられるようになってきた馬が多いという話を耳にした。ドゥラメンテは皐月賞直前くらいから急に成長したけど、産駒はもう少し遅いかなと思っている。
緒方：3歳秋とか古馬になってからとか、そういう先々を見据えた上で調整していく馬はいるかもしれませんね。それでも、多少のリスクはあってもなんとかダービーに間に合わせようとしてくる陣営はいるはずです。まぁ、ドゥラメンテ産駒を扱うような方々はどの方も一流でしょうから、無茶なことはしないでしょうが……。あと馬体の雰囲気についてですが、モーリスは母親の良さを引き出している印象ですが、こちらはドゥラメンテの血が色濃く受け継がれていると思います。あと何世代か見れば、パッと「ドゥラメンテ産駒だな！」ってわかりそうなくらい、イメージがわかりやすいです。
治郎丸：手足や胴部に長さがある産駒がおおいよね。ドゥラメンテ自身の馬体については、結構判断が難しいところだと思う。手足が長くて跳びも大きいから、構造的には「超絶なる瞬発力」を出すというのは難しいはずなのに、彼はたまたまというか『奇跡的』に瞬発力を持ち合わせた馬だった。直線が短い中山・皐月賞で勝って、ビックリしたもん。でも、デカいのに動ける馬というのは、そうそう出るものではない。バネの凄さは伝わっているみたいだから、古馬になって身体が使いこなせるようになってからが本番でしょ。お父さんのイメージで進めちゃうと可哀想だから、ゆったり成長させてほしいなと思ってる。
緒方：そこは『奇跡的』を体現したドゥラメンテの血の力を信じてみたいと思っていますよ！怪我は心配ですけどね。搭載しているエンジンが凄いなら、なおさらリスクはありますから。あとダービーは間に合わせるかどうか……という話をしましたが、桜花賞については間に合うと思っています。むしろ、毎年のように桜花賞に有力馬を送り込む種牡馬になるんじゃないでしょうか。そのせいで「ドゥラメンテは牝馬のマイラーばかり」みたいな風評が広がるのでは、とすら思ってます（笑）治郎丸さんは、気になった馬体の馬はいましたか？
治郎丸：リバースレー（母モシーン）はよかったなあ。まあ、モシーンはいつも良いフォルムの馬を出す名繁殖だけど。でもオーストラリアの血統というのがいいよね。魅力ある配合だと思った。
緒方：私もドゥラメンテはオーストラリアや南米の血統との配合で大物を出してくれると思っていますよ。国内で走っていた馬との配合であれば、クリーンスイープ（母スイープトウショウ）は楽しみにしています。両親の現役時代を思い出すと、気性的には心配ですけど（笑）
治郎丸：気性といえば、モーリスは現役時代を見ると性格が穏やかでおっとりしてたけど、産駒は結構気が勝った性格の馬も多そう。真面目なのかな。もしかすると、意外と早くから仕上がるのかもしれない。その辺りがどう出るかにも注目だね。モーリス・ドゥラメンテどちらも成功するとは言ったものの、実は今年の2歳世代では、モーリス産駒の一口は持っていてもドゥラメンテ産駒の一口は持っていないんだよね。深層心理ではドゥラメンテの方が危ないと思っているのかも。
緒方：なるほど……（苦笑）
治郎丸：でも、一発狙うならドゥラメンテかな、とも思う。当たり外れがわかりにくいだけにリターンは大きいだろうし。
緒方：僕はディープ亡き今の生産界で、玉座に座る可能性がある種牡馬だと思っています。そしてルーラーシップとともに、超名牝エアグルーヴの血を広げ、日本競馬界の血統レベルを1段階引き上げてくれるはずです。今から産駒のデビューが楽しみです！
ここまで、新種牡馬のモーリス・ドゥラメンテについて話してきた。しかし今年の新種牡馬は、他にも魅力溢れる馬が揃っている。ミッキーアイルやリオンディーズ、ホッコータルマエ、ラブリーデイ、そして輸入種牡馬たち。
果たして活躍馬を出しそうなのはどの馬か？
次回はそうした、モーリス・ドゥラメンテ以外の新種牡馬に目を向けていく。
写真：Horse Memorys
