ウマフリ読者の皆様、こんにちは。
「チーム・テイオー」「トウカイテイオー産駒の会」会員のエドリンです。
今回は、トウカイポイントについてご紹介します。
私にとって、トウカイテイオーはシンボリルドルフの長男格で、トウカイポイントはテイオーの長男格です。
この3頭は、みんなGⅠ馬。ファンにはたまらないGⅠリレーです。
馬券を買い忘れ、歓喜ののち衝撃……。
私とトウカイポイントと、2002年マイルCS。
しかし、2002年のマイルチャンピオンシップ──トウカイポイントがGⅠ馬になった輝かしいレースに、私は非常に残念な思い出があります。
マイルチャンピオンシップ前日の出来事です。
まだネット投票もなく電話投票もさほど一般的でなかった頃。私にとっても、馬券を買う=競馬場・ウインズに行く、という時代です。
しかし明日は、応援しているトウカイポイントのGⅠ初挑戦。買わないわけにはいきません。
たまたま友人が「明日ウインズに行くから、買いたいなら12時までに電話して。その後用事があるから12時には出ちゃうからね」と言ってくれていたので、家でのんびり予想して競馬新聞の余白に買い目を書き込み、その後、別の友人からの誘いの電話でのこのこ出かけてしまったのです。
翌日、目が覚めて”ハッ”と時計を見たら12時半。
慌てて電話するも、やはりいない。彼女は当時まだ携帯電話を持っていませんでした。
まぁ、もともと穴狙いの私だから当たる確率は相当低いはずです。「ポイントが無事に走ってくれれば、それで良いや」と気楽に考えていました。
レースが始まってゴール前、エイシンプレストンと一緒にポイントが抜け出した時、私はテレビ画面に顔がくっつきそうなくらい近寄って「ポイントに届け!」とばかりに応援していました。
そして、ポイントはそのまま優勝。GⅠ初挑戦初制覇を成し遂げたのです。
「勝った! 勝った! テイオーの仔がGⅠを獲った!」
ただただ、嬉しくて……。
しかし、レース結果が画面に出て一瞬で我に返りました。
それが何と私が買おうとしていた3連複が的中していたのです。それも、配当はなんと379,390円。思わず顔が引きつりました。”逃した魚は大きい”とは、まさにこのことです。
大喜びのあとの、衝撃。
言葉にならず、しばらくはこの事を誰にも言いませんでした。
忘れたつもりでいたけれど、今もなお、その日買おうとしていた3連複ボックスの5頭の名前はすらすらと出てきます。やはり、頭の片隅に未練がましくこびりついていたのでしょう。
それでもポイントがGⅠ馬になったということは、私にとって大きな救いでした。
GⅠ馬トウカイポイントの活躍。
そして訪れる引退の日──。
ただ、騙馬となっていたポイントは、種牡馬の道は閉ざされていました。
その事は、ポイントにわたったバトンの受け取り手がいない──私の中での「長男格」から「長男格」へのGⅠリレーが途切れたということを意味していました。
GⅠ馬となったポイントは海外まで遠征し、GⅠ香港マイル3着と力を示します。
しかし、さあこれからという翌年──連覇を狙った中山記念で、レース中に故障発生……幸い命は助かったものの「右前浅屈腱不全断裂」という大きな怪我で競走馬を引退することになりました。
あのマイルチャンピオンシップは、6歳まで彼に何とか一花をと諦めずに尽力された関係者の方たちへの「ポイントの恩返し」の輝きだったような気もするのです。
引退後の行き先を心配していた時、ノーザンホースパークで乗馬になるという情報が入って、すぐに会いに向かいました。
当時はまだ脚の治療中だったようで、中庭の小さな丸馬場にポイントの栗毛の馬体が。
好奇心丸出しで柵から顔を出しているポイントの真下で、何枚も何枚も写真を撮りました。
ポイントがこんな近くにいるということが堪らなく嬉しくて……。
その頃、やはりテイオー産駒で、私が個人的に期待していた馬の行方がわからなくなっていて心を痛めていたこともあって、元気に生きていてくれている事に感無量でした。
それから私は何度もノーザンホースパークまで会いに行きましたが、ある時いつもの馬房に彼が居ないことに気付きました。
──どこに行ったんだろう、乗馬引退なのだろうか。
──GⅠ馬だもの、きっとおかしな事にはならないだろう。
不安な思いが続く日々を過ごしていました。
そんなある日、SNSで彼の居所を知ることができたのです。
すぐさま連絡を取り、会わせて貰いました。
牧草地の真ん中で草を食むポイントのすぐ隣に並びながら、彼のお世話をしてくださっている女性スタッフさんの話を聞く機会に恵まれました。
ここは生産牧場で引退競走馬を預かるのは初めてだから、試行錯誤の日々とのこと。
「どうすればポイントさんが楽しく暮らせるか毎日考えています」
真剣な眼差しでそう話すスタッフさんと、私達がこんなそばにいても全く気にせず黙々と草を食み続けるポイントを見て「ここなら大丈夫、彼が幸せに余生を送れる場所だ」と確信し、心に暖かい光が差し込んだような気持ちで帰路につきました。
ポイントは現在、引退名馬の助成金対象馬ではないので一般見学はできなくなっています。
ポイントのお世話をする牧場さんに負担をかけないよう、また、ポイント自身にストレスが溜まることがないよう、オーナー様の深い愛情に包まれて悠々自適な生活を送っています。
歴史的名馬の子孫として生まれて、沢山の夢や期待、希望を背負って生きてきたトウカイポイント。
騙馬じゃなかったら、種牡馬になれていたら……そう惜しむ人たちが沢山いますが、私は騙馬のポイントで良かったと思うのです。
当歳馬の良きお守り役として。
GⅠ馬トウカイポイント、第三の馬生へ。
今、ポイントは当歳馬たちの良きお守り役として頑張っています。
初めて会った時、草を食むのに飽きた彼が向かいの放牧地にいたとねっこたちにかなり関心を示していた姿を思い出して、「やっぱり」と感じます。
試しに母仔たちと一緒にしてみても、何の問題もなかったとか。
テイオーの穏やかな優しいDNAが、しっかり伝わっているのではと思います。
ただ、繁殖さんたちの中にいれるとポイントが一番下の位置づけになって可哀想なので、今はとねっこさん達だけとしか一緒にしないそうです。
「GⅠ馬が、ママ馬たちから格下扱い!」と驚きます。馬の世界でも、"母は強し"ということでしょう。
以前は気になっていた旋回癖も、今では「ご飯よこせ~」とか「早くだせ~」の要求がある時に回ってみせるくらいなのだとか。
「ポイントは今、彼の馬生の中で一番平和で楽しい日々を過ごしているのかもしれないな」
彼の穏やかに澄んだ瞳を見るたびに、私はそう思ってしまうのです。
この優しくのどかな空の下でずっとずっと長く生きていてくれる、それだけで十分。
今の自由でゆるやかな時間が、懸命に走り続けたあなたに与えられたご褒美だからね、ポイントさん。
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