[今週の注目]今度こそ、秋に向けた2勝目を - 3歳牝馬シニャンガ、捲土重来の札幌2戦目へ

夏競馬は折り返し地点を過ぎ、いよいよ後半戦に入った。7週間にわたる札幌開催も4週を消化し、今週は「2026ワールドオールスタージョッキーズ」が行われる。

北海道シリーズの大きな特徴といえば、函館や札幌に滞在しながらレースに臨めることだろう。長距離輸送の負担がなく、本州と比べれば暑さも穏やか。心身のコンディションを整えやすい環境とあって、ひと夏に複数回出走する馬も少なくない。

シリーズ前半に勝利を挙げ、秋に備えて休養へ入る馬がいる一方、思うような結果を残せず、後半戦でもう一度勝負を懸ける馬もいる。秋のトライアルを見据える馬、洋芝で新境地を開こうとする馬——。同じ「夏2戦目」でも、そこに至るまでの背景はそれぞれに異なる。

今週の札幌競馬にも、巻き返しを期して夏2戦目へ向かう芦毛の牝馬がいる。

札幌開催初日の牝馬限定1勝クラスで、単勝1番人気に支持されながら5着に敗れた3歳馬、シニャンガである。

■素質を示し続けた3戦

シニャンガは2歳秋の新馬戦で2着。続く未勝利戦でも再び2着に敗れた。勝ち切れないもどかしさは残ったものの、その走りからは確かな素質が感じられた。

3戦目となった4月の東京で、待望の初勝利を挙げる。好位で流れに乗り、直線では追い出しを待つ余裕を見せながら、進路が開くとしっかり脚を伸ばした。着差以上の手応えを残す、先々への期待が膨らむ勝ち方だった。

その才能を秋へつなげるために選ばれたのが、北海道遠征だった。札幌で2勝目を挙げることができれば、その先には秋華賞トライアルも見えてくる。3歳秋へ向けた足場を固める意味でも、重要な遠征になるはずだった。

そして、札幌を選んだ背景にはもうひとつ、シニャンガが抱える気性面の課題もあったのではないだろうか。

シニャンガは府中の地下馬道がどうにも苦手らしい。パドックこそ我慢して周回するものの、C.ルメール騎手が跨るとソワソワし始める。そして毎回、地下馬道では一瞬パニックの影がよぎる。新馬、2戦目の未勝利戦では返し馬で暴れC.ルメール騎手を振り落としそうになり、未勝利勝ちの際には本馬場入場時のウイナーズサークル前で厩務員さんを突き飛ばす場面もあった。

ところが、ひとたびゲートに収まれば、その振る舞いは一変する。レースでは流れに乗り、追われれば能力をきちんと発揮する。繊細で難しい一面を抱えながらも、走る場面では競走馬としての務めを果たす——。デビューからの3戦は、そんなシニャンガの個性と芯の強さを映し出していた。

初勝利のあと、陣営はすぐに次走へ向かうことなく、間隔を空けて心身のケアに努めた。目先の一戦だけではなく、彼女の成長を促しながら先を見据える。その配慮を感じさせる札幌遠征だった。

■繊細な牝馬を迎えた札幌

札幌競馬場は、パドックから本馬場までの距離が比較的短く、東京のような長い地下馬道を通らずに入場できる。繊細なシニャンガにとって、余計なストレスを抱えずにレースへ向かえる環境は、大きな追い風になると考えられた。

血統面からも期待は膨らむ。父はロードカナロア、母は米国GⅠ馬ザズー(父タピット)。父から受け継いだスピードに、母系由来のパワーが加われば、札幌の洋芝にも十分対応できるはずだ。

これまで経験してきたのは、府中の芝1600mと1800m。ワンターンの広いコースから、1800mとはいえコーナーを4度回る札幌への転戦は、シニャンガにとって初めての条件だった。それでも、気持ちよく走ることさえできれば、直線で見せてきた反応の良さを生かせる。札幌は、彼女の新たな一面を引き出す舞台になるかもしれなかった。

■噛み合わなかった札幌初戦

迎えた札幌での休み明け初戦。パドックでは落ち着いて周回し、本馬場入場でも大きく取り乱す様子は見られなかった。横山武史騎手を鞍上に迎え、単勝2.9倍の1番人気。好勝負への期待は高まっていた。

しかし、ゲートが開いた直後から歯車が狂った。

過去3戦ではスタートを決め、前目の位置で流れに乗っていたシニャンガが、この日はやや立ち遅れてしまう。初めて経験する正面スタンド前からの発走も、少なからず影響したのかもしれない。

中団からの競馬となり、道中では内に包まれた。大きなストライドを生かしたいところで自由に動けず、4コーナー手前から進出を試みても前が詰まり、思うように加速できない。直線でようやく進路が開いたときには、すでに脚を使わされていた。

結果は5着。力を出し切っての敗戦というより、スタートから最後まで流れに乗れないまま終わってしまった一戦だった。

だが、初めての競馬場、初めての右回り、初めての小回りコース。経験したことのない条件が重なるなかでの敗戦である。一度実戦を経験したことは、必ず次につながるはずだ。

■捲土重来の夏2戦目

そして今週23日の札幌競馬8レース、シニャンガは3歳以上1勝クラス(芝1800m)に再び挑む。滞在競馬の利点を生かし、前走後も函館で調整を続けてきた。今回は休み明けをひと叩きされた上積みが見込めるだけでなく、コースも本馬場までの導線も、すでに一度経験している。前走で戸惑ったものがあるのなら、二度目はもっと落ち着いて受け入れられるだろう。スタートを決め、持ち前のスピードで流れに乗ることができれば、前走とは違う走りを見せられるはずだ。あの苦しい競馬を糧に、今度こそ先頭でゴール板を駆け抜けてほしい。

芦毛の3歳牝馬シニャンガ。母ザズーの名にちなみ、ライオンキングの舞台となったタンザニア北部の都市名を冠した彼女は、繊細で気高く、まだ少し不器用だ。それでもレースでは真面目に走り、勝負どころで自ら前へ進む芯の強さを持っている。

芦毛の半姉アルーシャはリステッド競走を2勝し、オープンクラスで活躍。同じく芦毛の半兄プライドランドもオープン入りを果たした。母ザズーが送り出してきた兄姉に続き、シニャンガにも大きな舞台へ歩みを進めるだけの血が流れている。兄姉に負けない活躍を——いや、母ザズーの代表産駒となる蹄跡を、シニャンガには刻んでもらいたい。

柔らかなグレーの馬体が札幌の夏の光をまとい、秘めた資質を解き放つ。その瞬間を、秋へつながる希望とともに見届けたい。

芦毛の3歳牝馬、シニャンガ。覚えておいて損はない名前だと、私は思っている。

Photo by I.Natsume

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