[今週の注目]古馬優勢の舞台へ - 3歳牝馬スターアニスが挑む、秋のスプリント決戦

スプリンターズSが12月から9月へと移行したのは、2000年・第34回から。秋のGⅠシリーズの幕開けを告げるレースとなって以降、ひとつ顕著に変わった傾向がある。3歳馬の優勝が激減したことだ。

GⅠ昇格後の1990〜1999年の10回では、ニシノフラワー、ヒシアケボノ、タイキシャトル、マイネルラヴと、3歳馬が4頭も勝利を挙げている。しかし、9月施行となった2000年以降、昨年までの26回で3歳馬の優勝はアストンマーチャン(2007年)とピクシーナイト(2021年)のわずか2頭。

季節が変われば、勢力図も変わる。9月のスプリンターズSは、まだ古馬との「力差」が残る時期なのかもしれない。結果として、このレースは古馬優勢のGⅠとして定着しつつある。

そんな舞台に、今年も3歳馬が挑む。登録21頭のうち4頭が3歳勢。その中でひときわ視線を集める存在がいる。

桜花賞馬スターアニスである。

■今年の桜花賞馬、スターアニスの挑戦

阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞と2つのGⅠを制し、この春のクラシック戦線を牽引した牝馬。オークスでは距離の壁に阻まれ12着に敗れたが、それでも1番人気に支持されたように、世代の先頭を走る3歳牝馬であることは揺るがない。

2400mは厳しくとも、2000mなら資質で補える──そう思わせる馬だ。実際、一昨年のエンブロイダリーも桜花賞後にオークスで敗れながら、秋華賞で二冠目を手にしている。スターアニスが秋華賞に向かえば、ジュウリョクピエロへのリベンジも現実味を帯びただろう。しかし陣営は距離短縮路線へ舵を切った。ならば、このカテゴリーで頂点を目指す姿を見届けたい。

とはいえ、胸の奥にひとつ疑問が浮かぶ。

「スターアニスは1200mに対応できるのか?」

しかし、思い返せば彼女のデビュー戦は1200mだった。出遅れながらも上り3F34秒5の最速で5着まで追い込み、続く未勝利戦では好スタートから先行集団の後ろにつけ、直線で34秒7の末脚を繰り出し7馬身差の圧勝。

もちろん未勝利とGⅠのペースは別物だ。それでも、スターアニスが持つ「芯の強い末脚」を中山の直線で解き放てば、先行勢をまとめて差し切る場面は十分に想像できる。

■新コンビはC.ルメール騎手

今回、新たにコンビを組むのはC.ルメール騎手。松山弘平騎手が最大のライバル・パンジャタワーに騎乗するための乗り替わりだが、ルメール騎手はスプリンターズSで2勝を挙げている。

C.ルメール騎手のスプリンターズS初勝利は2019年タワーオブロンドン。そして2勝目が2020年のグランアレグリア——コロナ禍の真っ只中、無観客で行われたあのレースで披露された圧巻の末脚は、今も記憶に残っている。道中最後方から大外を回り、坂下でエンジンがかかると前の馬群をごっそり飲み込んだ。上がり33秒6でダノンスマッシュに2馬身の差をつけた。

あの光景に、スターアニスの姿が重なって見えてくる。

今年のスプリンターズSで立ちはだかるのは、NHKマイルC覇者パンジャタワー、重賞連勝中のフリッカージャブ、昨年の覇者ウインカーネリアン、安田記念2着のワールズエンドら歴戦の強者たち。その中で、3歳牝馬スターアニスが54キロの斤量を武器にどこまで戦えるのか。

今年のスプリンターズSは、彼女の挑戦が大きな焦点となりそうだ。

■未来へ - スターアニスが描く、新しいスプリント女王の軌跡

スターアニスがこのスプリンターズSという壁を乗り越えたとき、彼女の未来は一気に広がる。春のクラシックの主役が、秋にスプリント戦線へ舵を切る。その選択は決して容易ではない。しかし、もしここで結果を残すことができれば、スターアニスは「新しいタイプの名牝」として、競馬史に新たなページを刻むことになるだろう。

思い返せば、グランアレグリアもまた桜花賞馬としてスプリント界に飛び込み、常識を塗り替えた存在だった。マイルもこなし、スプリントでも圧倒し、距離の枠を超えて才能を証明した稀有な名牝。その走りは、時代を跨いで語り継がれるほどの衝撃だった。

スターアニスにも、同じように「型にはまらない強さ」がある。桜花賞で見せた瞬発力、阪神ジュベナイルフィリーズでの勝負根性、そしてデビュー戦から片鱗を見せていた1200mへの適性。それらがひとつの線でつながる瞬間が、もしかしたらこのスプリンターズSなのかもしれない。

54キロという恩恵を最大限に生かし、あの末脚を中山の急坂で解き放つことができれば、古馬の牙城を揺るがす一撃を放つ可能性は十分にあるはずだ。

秋の中山、3歳牝馬のこの挑戦は、彼女のキャリアを大きく変える一歩になるかもしれない。

スターアニスがこの壁を越えた先に、どんな景色が広がっているのか──その未来を信じて、スターアニスの挑戦を心から応援したい。

そして願わくば、いつの日か——。

グランアレグリアが残した輝きのその先を、スターアニスが軽やかに駆け抜けていきますように。

Photo by I.Natsume

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