飛躍・安定・復活、それぞれが掴んだ栄光 ~2010年・サマーチャンピオン~

ローカル色が強い地方競馬の中でも、とりわけそれが色濃く残っているのが佐賀競馬場ではないだろうか。

「It's A Green Dream」のイメージソングが示すとおり、周りを自然に囲まれ、場内にはのどかな雰囲気が流れている。それは、かつて競馬場に流れていた鉄火場のようなギラギラした雰囲気とは、正反対のもの。のんびりとして居心地が良く、それでいてどこか懐かしい。そんな空気に包まれている競馬場だ。

その佐賀競馬場では、毎年、佐賀記念とサマーチャンピオンという2つのダートグレード競走が行なわれている。特にサマーチャンピオンは、JRAの夏競馬と同様、どちらかといえば、このレースをきっかけに大舞台への飛躍を誓う馬達が集うレースである。

とはいえ、2020年には、前年のJBCレディスクラシックを制したヤマニンアンプリメが参戦。それ以前にも、ラブミーチャンやサマリーズといった、全日本2歳優駿の勝ち馬も出走している。

そして、2頭のGⅠ級勝ち馬が参戦し、例年以上の盛り上がりを見せたのが、遡ること11年前。2010年に行なわれたサマーチャンピオンである。

この時、単勝オッズ1.1倍という、超のつく圧倒的1番人気に推されたのがスーニだった。全日本2歳優駿を制し、翌年には3歳でJBCスプリントも勝利。今回は59kgを背負うものの、まさに脂が乗ってくる4歳夏ということもあり、このレースに参戦してきたのだ。

2番人気は、5歳馬のセレスハント。こちらも2歳時に2勝を挙げたものの、その後スーニとは対照的に、条件戦をコツコツと勝ち上がり、前年9月に条件戦を卒業した。オープン昇級後は、10戦2勝2着2回という成績で、前走は小倉のオープンKBC杯を勝利。勢いそのままに、重賞初制覇を目指し出走してきた。

3番人気に続いたのは、古豪7歳のダイショウジェット。セレスハントと同様、条件戦を勝ち上がり、25戦目でオープン入りを果たした苦労人ならぬ苦労馬である。重賞は未勝利ながら、既にオープン特別は4勝と実績十分。マーチSや武蔵野SといったGⅢでも、2桁人気ながら2着に激走しており、老いてなお盛んという表現がピッタリの馬だった。

単勝オッズ10倍を切ったのは、これらの3頭。ただ、それ以外にも、当レース3連覇を目指すヴァンクルタテヤマや、地元佐賀所属で、中央時代には当時GⅠ級のダービーグランプリを制したマンオブパーサーも出走。豪華メンバーが顔を揃え、レースはスタートの時を迎えた。

ゲートが開くと、ダイショウジェットが前のめりにゲートを出て、落馬寸前のスタートとなるも、なんとか立て直して事なきを得た。

一方、それ以外の11頭はきれいなスタートを切り、外からユニティとヴァンクルタテヤマが先行。その2頭を、内からコーナリングで交わしたセレスハントが先頭に立ち、いつの間にか挽回してきたダイショウジェットが2番手に進出。

以下、マンオブパーサーが4番手につけ、外枠スタートのスーニは、コーナーで外を回らされ、重い斤量の影響もあってか5番手で向正面へ。ここでユニティが後退し、3馬身差でアルカライズ、ミヤノオードリー、エフケーフィルの地元勢が続く。後ろ3頭は、さらにそこから4馬身ほど遅れての追走となった。

超小回りの佐賀競馬場で、レースはあっという間に4コーナーの手前。前は、依然としてダイショウジェットとセレスハントが一騎打ちの状況で、3番手以下を3馬身引き離し、早くも直線勝負を迎えた。

直線に入ると、「栄光まであと170m!」という、中島秀峰アナウンサーの「中島節」が場内に響き渡る中、外からセレスハントが再び抜き返して先頭に立つ。そして、そこからあっという間に差を広げ、一気に独走態勢を築いてしまった。

2番手もダイショウジェットで決定的となり、焦点は3着争いへ。そこでは、伸びを欠くスーニを尻目に、内からするすると抜け出したマンオブパーサーが、3着争いを制しそうな勢い。

結局、栄光のゴールを先頭で駆け抜けたのはセレスハント。2着ダイショウジェットに3馬身差をつける完勝で、見事、初の重賞タイトルを獲得した。

一方、ダイショウジェットにとっては、悔やんでも悔やみきれないスタートとなったものの、それ以外は素晴らしい内容だった。

そして、忘れてはならないのが、「ミスターほとんどパーフェクト」こと山口勲騎手とコンビを組んだ、地元マンオブパーサーの3着激走。斤量差があったとはいえ、大本命のスーニを競り落としての3着には値打ちがあり、熱いレースを、そして地元をいっそう盛り上げるような走りだった。

その後、セレスハントとダイショウジェットは、それぞれ9歳と11歳まで、長きに渡り現役生活を続けた。前者はこのあと、さらにダートグレード競走を3勝。後者は重賞こそ勝てなかったものの、ダートグレード競走で2着4回。その中には、9歳で2着に激走したマイルCS南部杯も含まれている。

また、マンオブパーサーは、地元の佐賀を中心に走り続け、地方重賞2勝を含む14戦6勝。2着と3着が3回ずつと、安定した成績を残した。

一方のスーニは、この後、10戦勝ち星がなくスランプに陥ってしまったが、翌年のサマーチャンピオンを大レコードで圧勝して復活。これで再び勢いを取り戻すと、秋には3連勝で2年ぶりにJBCスプリントを制覇。続く兵庫ゴールドトロフィーも制し、連勝を4まで伸ばしたのだ。

上位入着馬が、後にそれぞれの舞台で活躍するきっかけとなった2010年のサマーチャンピオン。ダートグレード競走史に燦然と輝く、語り継がれるべき、隠れた名勝負だった。

写真:Stay

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