京都競馬場改修工事のため、約3か月間のロングラン開催となる秋の阪神開催。
初週を飾るのは京都大賞典だ。
天皇賞やジャパンカップを目指す各馬がステップレースとしてこのレースに挑み、幾度と名場面を生んできた伝統の重賞競走。今年は京都と違い急坂を要する阪神競馬場で行われるが、各馬はどのようなレースを展開するのか。
レース概況
1番人気に支持されたのは4歳馬アリストテレス。
今年の春から古馬戦線の一線級としての評価を得ており、秋のG1へ向けての始動戦として挑んできた。
昨年の菊花賞であと一歩に迫ったコントレイルとの再戦に向けてここは負けられないところだろう。
もう1頭人気を集めたのは、ヒートオンビート。目黒記念で2着に入着した実績馬だが、そのレースでの勝ち馬ウインキートスがオールカマーで好走したことでさらに期待が高まった。中長距離適性の高さで重賞制覇を目指す。
その他、春に連勝街道を進み満を持して挑むアイアンバローズや復権をかけるキセキなど秋に飛躍を誓う14頭が出走した。
スタンド前からゲートオープン。14頭が一斉に飛び出した。
2枠2番のベレヌスが引っ張る展開に。連れてダンビュライトとステイフーリッシュの先行勢が追いかけていく。
隊列はそれほど縦長にならず、向こう正面へと入った。
先頭はベレヌス。続いてダンビュライトが2番手につけて3番手はステイフーリッシュとキセキが並走する。そしてアリストテレスとヒートオンビートの人気2頭も差が無く追走し、ヒュミドールとマカヒキが中団を形成した。アイアンバローズは中団やや後ろ、モズベッロは最後方にポジションを取った。
3コーナーで馬群はやや縦長に。
依然としてベレヌスが隊列を引っ張る。ぴったりとダンビュライト。
そしてキセキがジワッと先頭に接近してくる。アリストテレスががっちりと構えて外からヒートオンビートが進出を開始し、各馬が直線の攻防に移った。ここでダンビュライトが先頭に替わる。外からは手応え良くキセキ、さらにアリストテレスにヒートオンビートと人気各馬も前へと接近。
残り250mでキセキがダンビュライトをつかまえるが、さらに伸び脚よくアリストテレスが一気にキセキに迫る。坂を駆け上がりながらこの2頭の競り合いが激しくなる。
さあ先頭はアリストテレスかキセキか──。
そう思った瞬間、3番手から猛追する1頭がいた。
ダービー馬マカヒキだった。
あっという間に先頭を走る2頭に並びかけ、ゴール寸前2頭を交わしきった。
ゴール入線後、藤岡康太騎手はマカヒキの首筋をポンと叩き、阪神競馬場は拍手と歓声に包まれた。
実に5年ぶりの勝利を、この阪神競馬場であげた。
各馬短評
1着 マカヒキ (藤岡康太騎手 9人気)
ニエル賞以来、5年ぶりの勝利となった。
道中は中団追走。直線では馬群の真ん中で勝機を探り、進路が開くと切味一閃。瞬く間に前2頭を差しきった
8歳馬にして復活の勝利。
信じ続けたファンの前でダービー馬は高らかに凱歌を揚げた。
2着 アリストテレス (M.デムーロ騎手 1人気)
1番人気のアリストテレスは僅差の2着となった。道中は先団を見る位置で競馬を進め最後の直線へ。直線勝負でキセキを捕らえてトップ争いに持ち込んだ。2頭のマッチレースとなったが最後はマカヒキに交わされての2着。しかし秋の飛躍につながる大きな2着であったことは確かだろう。
3着 キセキ (和田竜二騎手 4人気)
力強い走りを見せたキセキが3着入線を果たした。先団3番手外でレースを進め、外回り3コーナー過ぎから進出を開始。直線で先頭の外目まで並ぶとダンビュライトを捕まえて一旦は先頭に躍り出た。その後は激しい競り合いを演出して3着となった。パワフルな走りは今も健在。秋のG1戦線でも持ち味は十分発揮できるだろう。
総評
レース後にゴール前スリットがターフビジョンに映し出された際、場内ではさらに大きな拍手が沸き上がった。それだけたくさんのファンが、マカヒキの復活を応援していたのだろう。
思えば京都大賞典は、日本ダービーでしのぎを削ったサトノダイヤモンドも復活の勝利を挙げたレースである。どこかつながりを感じさせる復活劇となったマカヒキ。しかしマカヒキにとって、ここはあくまで通過点としたい所ではないだろうか。ファン・関係者が待ち望むのはさらにその先、2つ目のG1タイトルのはずなのだから。
写真:俺ん家゛