[香港マイル/香港スプリント]G1レース直前プレビュー

香港競馬はなぜ短距離馬が強いのか?

香港競馬の特徴として、短距離に強い馬が多いことが挙げられます。

馬産を行うことのない香港では、外国から馬を買ってきて走らせる形になっていて、主にオーストラリアの馬を購入して走らせているので、豪国で強い短距離馬が香港でも強さを見せるというのは自然な流れでもあります。また、シャティン競馬場のレース形態が短距離中心であること、コースに起伏が少なく平坦でスピードをいかしやすいことなどから、香港では短距離に強い馬が生まれる土壌があると言われています。

その強さを世界に見せつけるのが、香港マイルや香港スプリントの舞台。
世界でも有数の短距離王国としての香港競馬なのです。
ここではその2レースについて、ご紹介していきましょう。

香港マイル - 強力な2頭の香港馬に日本馬がどう対抗するか?

まずは、香港マイル。
17年、18年はビューティージェネレーション、20年、21年にはゴールデンシックスティが連覇と、香港馬が圧倒的な強さを見せています。そのため、まずは香港馬の紹介として、前哨戦の香港ジョッキークラブマイルを振り返っていきましょう。

香港ジョッキークラブマイル(7頭立て)

レースは1番人気のカリフォルニアスパングルが単騎先頭で逃げて2番手以降がバラバラと続き、2番人気になっていたゴールデンシックスティは後方2番手という展開になりました。それ以降も各馬の位置は大きく変わらず淡々と進み、3~4コーナーでゴールデンシックスティが位置を上げて馬群が固まって直線へ。直線では逃げていたカリフォルニアスパングルが2番手を2馬身ほど引き離しますが、外から伸びてきたゴールデンシックスティが前との差を徐々に詰めて残り50Mで交わして先頭に立って勝利。クビ差の2着が逃げたカリフォルニアスパングル。3着は3馬身弱離れていますので完全に2頭のマッチレースとなりましたが、ゴールデンシックスティが貫録を見せて勝利となりました。

勝ったゴールデンシックスティは2年連続の年度代表馬で、昨年まで15連勝があった香港競馬界の歴史的名馬ですが、今年に入っての2戦で2,3着と敗戦。その後は連勝でG1のチャンピオンズマイルを制し、休養に入っての休み明けの香港ジョッキークラブマイルで勝利をあげました。同レースでは2番人気になってしまいましたが、まだまだ力が健在というところを見せつけています。本番の香港マイルでも、強力なライバルとして日本馬の前に立ちふさがるでしょう。昨年の香港マイルではサリオスを3着に負かしていますので日本馬に対しても力上位と言えます。7歳ではありますが、レーティング通り力を出し切れれば間違いなく実力NO.1クラスであるのは確かでしょう。

香港ジョッキークラブマイル2着のカリフォルニアスパングルは4歳騙馬。昨シーズンの香港3冠では緒戦のマイルでロマンチックウォリアーの2着に食い込んでいます。さらに、続く香港クラシックカップ(1800M)では勝利。3冠目の香港ダービー(2000M)ではロマンチックウォリアーのアタマ差2着と香港3冠で1勝、2着2回と実力を見せました。そして今シーズンに入って連勝で挑んだのが前走の香港ジョッキークラブマイル。歴史的名馬のゴールデンシックスティがいるにも関わらず1番人気に推された点からも、現地の競馬ファンの期待が窺えます。レースでは積極的に逃げていきましたが休み明けのゴールデンシックスティに差されての2着とやや残念な結果になりました。ただ、3着以下は離していますのでこの馬も強い馬と言えます。逃げて直線で突き離せる馬ですのでレースでの安定感がある馬ですし、成績も13戦して8勝2着5回と非常に安定しています。勝ち切れるかどうかはともかく、馬券圏内の確保は期待できそうな1頭です。

香港マイルに挑戦する日本馬たち

この強力な香港の2頭に対抗するのが、日本勢です。

日本馬の代表格だったサリオスこそ、レース前に左前脚ハ行で取り消しになりましたが、シュネルマイスターも巻き返しが期待される1頭です。春の安田記念では2着と力を見せています。秋初戦のスプリンターズSではペースの違いに戸惑ったのか9着に。これでリズムを崩したのか、続くマイルチャンピオンシップでは5着と配線を喫しています。ただ、2着馬から差の無いところで走っているので体調さえ戻れば力は日本馬の中でも上位。『軟らかい馬場で速い反応ができずにジリジリでした』というルメール騎手のコメントを考えれば、比較的速めの時計が出ている香港に替わって巻き返す可能性もありそうです。

3歳馬のダノンスコーピオンもも巻き返しが期待される馬です。春はNHKマイルカップを勝ち、古馬との対戦で期待されましたが、富士Sではセリフォスの3着、マイルチャンピオンシップでは11着と力を出し切れませんでした。今回の鞍上はビュイック騎手。馬場と騎手が替わっての一変を期待したいですね。

香港マイルまとめ

メンバーの中では香港の2頭がコース適性と底力で力上位と考えます。
特に前哨戦を快勝したゴールデンシックスティには史上2度目の3連覇がかかっているので現地での期待も大きいでしょう。カリフォルニアスパングルも強い馬ですのでアウェーで強い馬がいる状況。そのなかで日本馬が強敵を撃破できるかが、焦点になりそうです。

香港スプリント - 香港馬、日本馬が競り合う大接戦

短距離馬が強い香港馬でも、特にレベルが高いのがスプリント路線。
過去10年の結果でも7勝が香港馬で、残りの3勝がロードカナロア(2勝)と20年のダノンスマッシュと、香港馬の強さが光ります。まずはその香港馬が多く出走した前哨戦、香港ジョッキークラブスプリントを振り返ります。

香港ジョッキースプリント(14頭立て)

スタートは各馬が横一線に出ましたが、クーパニーが押してハナに立ち、その後もペースを緩めずガンガン押していって速いペースで進んだことで、少し馬群が縦長となりました。直線に入っても粘っていましたが残り300Mから後続が内から殺到。道中3番手を進んでいたサイトサクセスが先頭に立ったものの、馬場の外を通って伸びてきたラッキースワイニーズ、内からラッキーパンチが伸びてきて後続の差し馬も迫ってきます。最後は、外から伸びてきたラッキースワイニーズが差し切って勝利。クビ差の2着が内を通ってきたラッキーパンチ、そこから1馬身強離れた3着が際どい争いになり、最内を通ったデュークワイが早め先頭に立ったサイトサクセスをクビ差交わして3着という結果でした。

最初の400Mが23秒3、次の400Mが21秒6、最後の400Mが22秒9ですからレースの中盤が速くなる展開で内を通らないと勝負にならないタイムアタックの様なレース。2〜4着馬が内を通って来たのに対し、勝ったラッキースワイニーズは外から伸びての差し切り勝ち。展開不向きでも力を見せたというレースで、走破タイムの1分07秒5もコースレコードから0秒5差と前哨戦としては優秀なタイムです。本番で上積みがあると考えるならレベルが高かったレースと言えます。勝ち馬はもちろん、見せ場のあった2~5着までの馬が力を見せたと言えるのではないでしょうか。

勝ったラッキースワイニーズは4歳の騙馬。10戦して7勝2着が2回、3着1回という戦績を誇りますが、重賞初挑戦が同レースの前のプレミアボウル(G2)で2着。重賞2戦目での勝利となりました。とはいえ、レースでは2番人気に推されていたのでフロックではないでしょう。今回が初のG1出走になりますが、前走がかなり強い競馬。勢いそのままG1制覇の可能性も十分です。

2着のラッキーパンチは6歳騙馬。これまではG2勝ちがあるものの、近走は不振。同レースでは単勝31倍と人気を落としていましたが、今回好走と力を見せました。ただ、内目を通れて展開が向いたのは確かなので本番でも展開が向けばというところでしょうか。

3着のデュークワイは重賞勝ちこそありませんが3,5,3着と相手なりに走れる馬。最内から伸びた脚は混戦で大きな武器になるかもしれません。

また、このレースで1番人気だったウェリントンの巻き返しにも注目でしょう。今年G1を含む4連勝で挑んだこのレースでは6着でしたが実力があるのは確かです。チェアマンズスプリントを連覇した地力と実績は香港馬の中では1番なのでG1の舞台で巻き返す可能性十分と言えるでしょう。

香港スプリントに挑戦する日本馬たち

非常に強力な香港馬に対して、日本馬の代表格は今年のスプリンターズSを勝ったジャンダルムでしょう。スプリンターズSでは前半からの速いペースでも3番手を追走して快勝でした。前半から飛ばしていく可能性が高い香港馬相手でも、同様の競馬ができれば互角以上に戦えますし、今回の鞍上はレーン騎手と魅力十分です。2002年では母ビリーヴが挑んで12着でしたがその無念も晴らせるのかにも注目です。

スプリンターズSでは1番人気ながらも14着に敗れてしまったメイケイエールも注目の1頭。スプリンターズSの敗因ははっきりしませんが、レース間隔が短かったことも要因の一つかと思います。スプリンターズSから2か月間隔を開いた今回は本来の力を出せる可能性が高いですし、前半から飛ばす馬がいればそれだけ折り合いもつきやすいのではないでしょうか。セントウルSでレコード勝ちしたスピードが存分に生かされればですし、今回初コンビになるマクドナルド騎手がどんな騎乗をするのか注目です。

高松宮記念の勝ち馬で、スプリンターズSでも3着のナランフレグも参戦。追い込み馬ながらも成績が安定していますし、どんなコース、馬場でも結果を出しています。高松宮記念のように混戦になれば一発あってもおかしくありません。

騎手とのコンビで注目なのは、レシステンシアとモレイラ騎手。馬の力とスピードは確かなのですが、ちょっと噛み合っていなかった面もある同馬。ただ、昨年の香港スプリントは大事故がありましたが2着を確保。馬場自体が合っている可能性もありますし、引退間近のモレイラ騎手の騎乗で混戦を勝ち切る可能性も十分ありそうです。

香港スプリントまとめ

個人的には「やや香港馬が優勢かな?」とは思いますが、実力馬が多数揃った大混戦の香港スプリント。出走頭数も14頭と多く、非常に混戦と言えます。大外枠に入ったメイケイエールがどう出るのかにも注目ですが、実力馬がスタート直後からガンガン飛ばしてのスピード勝負になるはずです。一瞬も目が離せない好レースになるのは間違いありません。香港馬VS日本馬のガチンコ勝負を見届けましょう!


香港マイル、香港スプリントは非常に強力な香港馬に日本馬が対抗していくという構図です。

特にマイルには世界的な名馬も出走します。そうした海外の強敵に日本馬が挑戦して撃破することができれば非常に素晴らしい事ですし、日本の競馬の底力を感じて誇らしい気持ちになれるのは間違いありません。時差も少なく、日曜の中央競馬も楽しみながら、香港国際競走を楽しんでいけたらと思います。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

写真:かぼす

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