[イベントレポート]日本軽種馬協会七戸種馬場・合同展示会をたずねて

2026年2月21日、青森県上北郡七戸町にある日本軽種馬協会七戸種馬場において、日本軽種馬協会とスプリングファームの合同種牡馬展示会が開催。一般開放もされ、来場者は400人を超える盛況を見せていた。本記事では展示された6頭の種牡馬の様子を中心に紹介する。

まずは開催に先立ち、同協会の上野儀治副会長・常務理事が「昨年11月、長く青森県軽種馬生産農業協同組合の代表を務めてこられた山内組合長が亡くなられました。この場を借りて謹んで哀悼の意を表したいと思います」と慶弔の挨拶を行い、「今後はスプリングファームの佐々木新組合長を支えながら東北地区の生産を応援してまいります」とあいさつ。

続けてスプリングファームの佐々木拓也会長が「昨年初めて開催した合同展示会ですが、昨年以上の方々にご来場いただき、今年も開催できることをうれしく思います」と感謝の念を述べ、展示会はスタートした。

■タガノビューティー

最初に登場したのは2024年のJBCスプリントを勝利したタガノビューティー。2025年の9月、韓国で行われたコリアスプリントを最後に引退したG1級競走の勝ち馬である。青森に来た経緯は2025年のサブノジュニア同様、地元の生産牧場から「内国産種牡馬を導入してほしい」という要望で導入を決定したとのこと。

登場してからは、現役時と同様に闘志みなぎる姿を見せ、今にも走り出しそうな様子だったが、周回を重ねるごとに落ち着いてきた。七戸種馬場の野田場長は「タガノビューティーの魅力は、父のヘニーヒューズから受け継いだダート適性と鋭い感性、また他の種牡馬に引けを取らない雄大な馬格にある」とコメント。競走馬時代は後方から強烈な差し脚で追い込み、他馬と併せ馬になっても根負けしない勝負根性を持っていたタガノビューティー。果たしてどんな産駒を出してくれるだろうか。

■サブノジュニア

タガノビューティーがJBCスプリントを制する4年前、フジノウェーブ以来13年ぶりとなる大井所属馬の同競走勝利と、史上初の地方馬によるJBC競走連覇を達成した黒鹿毛の牡馬がサブノジュニアである。こちらもタガノビューティー同様、自身の闘争心を前面に出す、まるで現役時のような滾りを見せてくれた。

快速馬サウスヴィグラスの血を受け継ぐサブノジュニアにとって、父仔3代でのJBCスプリント制覇はひとつの目標。その夢をかなえられる馬を青森から送り出すことができればこれ以上ない成果となるであろう。同馬は4代前の母系にサンデーサイレンスを内包しているため、ディープインパクト系の繁殖とはクロスが組みやすい。さらに、父系では4代目にミスタープロスペクターの血も持つため、キングカメハメハ系の牝馬とも同血統の5×5のクロスが発生と交配のしやすさがある。自身のような快速馬を輩出する可能性は十分にあるだろう。

青森に来てからの初年度産駒は今年の誕生となる。野田場長が残した「来年の東北サラブレッド1歳市場に新しい風を吹かせてくれる」という期待を現実のものとすることはできるだろうか。

■オールブラッシュ

青森に来て6年目となるオールブラッシュ。来場はしたものの、輸送中に石を踏んで挫跖のような症状を発症してしまい、残念ながら展示会でのお披露目は無かった。しかし、同会が終わったあとは馬房で元気な姿を見せ、我々の向けるカメラにしっかりと映ってくれる「ファンサービス」もバッチリこなしてくれていた。

現役時代は43戦8勝で、4歳秋の1000万下条件から3連勝で川崎記念を勝利。手綱を取ったルメール騎手にとっては同競走3勝目となった。9歳の1月に現役を退き、そのままスプリングファームで種牡馬入り。2026年現在で16頭が血統登録され、うち4頭が勝ち上がった。産駒の数自体は少ないが、金沢のベストタンゴが地元の重賞で4着になるなど存在感を示している。希少なウォーエンブレムの血を引くだけに、なんとか大活躍してくれる馬を輩出してほしいところだ。

■ウインバリアシオン

2011年の牡馬クラシック路線において、日本ダービー、菊花賞で三冠馬オルフェーヴルの2着となったウインバリアシオン。G1で2着が4回という成績は立派で、最後まで決してあきらめない不屈の闘志を持つ馬だった。種牡馬入り直後も引退の原因となった左前脚の浅屈腱不全断裂に悩まされたが、経過は良好。展示会でも元気に歩く姿を披露し、東北地区のエース種牡馬としての貫禄を我々に見せてくれた。

スプリングファームの佐々木代表は「雄大な馬格、気性の素直さ、馬自身の強さ」をウインバリアシオンのストロングポイントとして挙げている。さらに、産駒で函館記念2着の実績があるハヤテノフクノスケについて、栗東の関係者間では「ウインバリアシオンが青鹿毛になったようなそっくりさを持っている」と話題になっているとコメント。レコード決着の同レースで2着に入線した同馬がウインバリアシオン級のポテンシャルを持っていると考えるなら、今後の成長次第で重賞、果てはG1タイトルに手が届いても不思議はないだろう。怪我からの復帰戦では注目したい。

現1歳世代にはそのハヤテノフクノスケの全弟もスタンバイしており、期待は大きい。いつか青森で生まれ育ったウインバリアシオンの子供たちが、父の勝てなかったクラシックでオルフェーヴル産駒たちに雪辱を果たす──そんな未来も見てみたい。

■アニマルキングダム

現役時代はケンタッキーダービーとドバイワールドカップという、ダートの世界トップクラスにあたるG1を2つも制した名馬。日本に輸入されたのは2020年だが、種付け初年度の産駒から高知三冠を達成したプリフロオールインを輩出し、翌年にはオークスで3着となったタガノアビーが誕生と、十分すぎるほどの実績を引っ提げて2025年から七戸種馬場で繋養がスタートした。

展示会では威風堂々と登場し、イレ込みを見せることもなく悠々と周回。途中、カメラマンの前で止まる時も、そこで静止するのが分かっていたかのようにビタッと止まり、まるで自身の馬体を見せつけるかのような佇まい。世界的名馬の凄さを改めて実感させられるような、そんな姿であった。

野田場長はアニマルキングダムについて「タガノアビーに続く新たな活躍馬が東北地区から出ることを確信している」と自信のほどを語っており、「馬場不問の適性能力の高さが魅力」とコメント。すでに芝・ダートそれぞれで活躍馬を送り出しているだけに、産駒の今後の活躍次第ではアニマルキングダムを求めて青森にやってくる肌馬もいるかもしれない。血統的にもスタミナタイプのリファールクロスを内包しているため、日本のスピード型血統の種牡馬とは相性も良さそう。東北からアニマルキングダムの血を持つニュースターが現れる日も、そう遠くないだろう。

■ライトウォーリア

最後の登場となったのが、2024年の川崎記念を勝利したライトウォーリア。2025年の12月頭まで現役だったこともあって、競馬場に連れて行けば走り出しそうな雰囲気を醸し出していた。踏み込みも力強く、パワーを感じさせる馬体であった。

この日は彼を管理した川崎の内田勝義師からもコメントが届いており、「素直で賢く、行かせれば行く、抑えれば最後にしっかり差せる自在性のある馬でした。しかし、やはりこの馬の良さは逃げ先行してからの二枚腰です。 あの芸当は並の馬ではできません」と現役時の彼を評価し、「青森・東北から次の大きなタイトルを取る馬は、このライトウォーリアからと思っております」とコメント。一般的なダート馬よりライトウォーリアの母父に内包されているディープインパクトの良さがしっかり反映されているのが大きな強みになるのだという。佐々木代表も同じく「他のマジェスティックウォリアー産駒とは一線を画す種牡馬になるのでは」と述べており、彼への期待が大きいところが窺える。

2026年2月現在、マジェスティックウォリアー産駒はベストウォーリアが後継種牡馬の第一線を張っており、それに続く形でプロミストウォリアとライトウォーリアがスタッドインした形。ただ、関係者の話を聞く限り、ライトウォーリアは他の後継者たちとは全く違うタイプの馬を送り出すかもしれない。それこそ、芝でクラシックを狙えるような馬が出てきても不思議は無さそうだ。無限の可能性を秘めた彼の今後に期待は高まる。


一般の方々にも開放され、数多くの方々でにぎわった今年の合同種牡馬展示会。目玉とも言える種牡馬たちの登場に、目を細めるファンも少なくなかった。来年以降も開催されるようであれば、今年と同等かそれ以上の盛況となりそうな予感がある。是非このまま東北地区の馬産の盛り上がりに貢献していく催しとなって欲しい。

また、東北地区で繋養される各種牡馬は、実績、血統共に申し分ないものを兼ね備えている。各馬ともに堂々とした風格を漂わせていたことから、産駒の活躍次第では東北地区から重賞、果てはG1タイトルを手にする名馬の誕生が近い将来に訪れるかもしれない。今後の東北馬産の発展を願うばかりである。

あなたにおすすめの記事