[ニュースコラム]クロノジェネシスの初仔、ベレシートは、“令和のキズナ”になれるか?京都新聞杯の注目馬たち
■京都新聞杯の変遷と今年の注目馬

今週土曜日、日本ダービーへ向けた“真の最終便”ともいえる3歳重賞・京都新聞杯が行われる。今年で74回目を迎える伝統の一戦は、今でこそダービー直前の5月に組まれているが、その歩みを辿ると、レースの役割は時代とともに大きく姿を変えてきた。

現在の京都新聞杯は、日本ダービーのトライアルがすべて終わり、出走枠18頭がほぼ固まったかなと思われる翌週に施行される。つまり、「泣きの一回」とも呼ぶべき、最後の逆転切符を懸けた舞台だ。一生に一度の大舞台へ、どうしても間に合わせたい陣営にとって、ここが最終関門となる。

しかし、京都新聞杯はもともと秋の菊花賞トライアルとして10月に行われていた。

その時代には、このレースを勝って勢いそのままに菊花賞馬へと駆け上がった名馬が数多くいる。

遥か昔、1970年代には福永祐一調教師の父・福永洋一騎手がニホンピロムーテー(1971年)で京都新聞杯から菊花賞を連勝。武豊騎手の父・武邦彦騎手が騎乗したキタノカチドキ(1974年)、芦毛で初のクラシックホースとなったプレストウコウ(1977年)も同じ道を辿った。80年代にはシンザン産駒のミホシンザン(1985年)、バンブーアトラス産駒のバンブービギン(1989年)。90年代に入るとマチカネフクキタル(1995年)、ダンスインザダーク(1996年)が、いずれも京都新聞杯から菊花賞を制している。

こうして長く“菊花賞への登竜門”として親しまれてきた京都新聞杯だが、番組改編により2000年から5月開催へと移行する。ここからレースの役割は一気に日本ダービー前哨戦へと変わった。

移行初年度の2000年にはアグネスフライトが3馬身差で京都新聞杯を制し、その勢いで日本ダービーへ。武豊騎手のエアシャカールとの死闘をハナ差で制し、河内洋騎手が悲願のダービージョッキーとなったのは、ダービー史に刻まれる名シーンである。

その後は京都新聞杯の勝ち馬がダービーを制することはなく、ようやく2013年、皐月賞出走を断念したキズナが、中2週のタイトなローテーションをものともせず、京都新聞杯から日本ダービーを連勝した。しかしキズナ以降、京都新聞杯の覇者はダービーで苦戦が続いているのが現状である。

それでも今年、再びこのレースをステップに日本ダービーへ挑む「注目の存在」がいる。京都新聞杯の歴史に新たな1ページを刻むのか──その期待が、今週の競馬をいっそう熱くしている。

■クロノジェネシスの初仔、ベレシート

京都新聞杯のゲートに、ひときわ特別な血が流れる馬が立とうとしている。クロノジェネシスの初仔、ベレシートだ。

母クロノジェネシスは、秋華賞、宝塚記念、有馬記念──。重厚なレースを勝ち抜き、時代を象徴する名牝として名を刻んだ。ただ、3歳春のクラシックでは桜花賞・オークスともに3着。北村友一騎手とともに、あと一歩届かなかった「春の頂」があった。

クロノジェネシスが涙を飲んだ春のクラッシック制覇に向けて、初仔のべレシートが、今週、東上最終便の京都新聞杯に挑む。

タフな馬場も苦にせず、重厚な末脚で強豪たちをねじ伏せてきたクロノジェネシス。凱旋門賞の泥濘の中でも、最後まで前を向き走り続けた精神の芯の強さは、息子ベレシートにも流れている。父はエピファネイア、母はクロノジェネシス。「重厚なスタミナ」と「しなやかな瞬発力」という、相反する要素が同居する稀有な配合だ。まだ完成途上でありながら、レースで見せる走りには「芯」がある。

■デビューから見せてきた「光る瞬間」

7月の小倉デビュー戦。

出遅れ、最後方追走──そこから直線で一気に先団へ。ロードフィレールらをまとめて差し切った末脚は、まるで「血が目を覚ました」かのようだった。

2戦目のエリカ賞(12月阪神)。

またしても出遅れながら、逃げ込みを図るコロナドブリッジに1/2馬身まで迫る。

粗削りだが、伸びるストライドの奥に「良血の影」が見えた。

そして3歳初戦の共同通信杯(2月府中)。

4番人気ながら後方から追い込んで、皐月賞馬ロブチェンを差し切り、優勝したリアライズシリウスにアタマ差まで迫った。勝ち切れなかった悔しさよりも、「まだ先がある」と思わせる走りだった。

追い込み一辺倒ながら、3戦1勝2着2回。そのフォームは大きく、ストライドは伸びやかで、どこか母の影を感じさせるが、決して母のコピーではない。ベレシートはベレシートとして、独自のリズムで走る馬だ。

ベレシートのレース内容には、共通しているものがある。

スタート後の落ち着き——母譲りの精神的な強さがあり、レースに飲まれない。

大きなストライド——直線での伸びは、まだ粗削りながらも「良血の影」を感じさせる。

未知のギアチェンジ——ラストに繰り出す末脚もまだ本気で走っていないように見える。

それでも上位に食い込むのは、やはり能力の証だろう。完成途上でありながら、レースのどこかで必ず「光る瞬間」を見せるベレシート。それは、名牝の仔にしか出せない輝きであり、この先どこかでその能力を100%出すだろうという期待感が漂う。

■日本ダービー出走に向けて

共同通信杯2着で賞金を加算したものの、現状の収得賞金1200万円ではダービーのボーダーラインに届かない。同じ収得賞金で並んでいるエムズビギン、バドリナートとともに繰り上がりの一番手のポジション。つまり、同じ収得賞金の3頭が出走する京都新聞杯での結果がすべてを決める。

京都外回り2200mは、誤魔化しの効かないコース。瞬発力だけでも、スタミナだけでも勝てない「総合力」が問われる舞台である。だからこそ、ベレシートには向いている。

長く脚を使える強さ、レースの流れに飲まれない落ち着き、そして、ここ一番でギアを上げられる血。京都新聞杯は、「クロノジェネシスの息子」から「ベレシート」という名の競走馬へと本当の意味で生まれ変わる舞台になるはずである。

1歳募集時に1億8000万円(1口450万円)の価格で募集されたクロノジェネシスの23は、美しい黒鹿毛でバランスのとれた馬体を持つ1歳馬だった。誰もがオーラを感じながらも、私も含めて多くの会員たちが「目の保養に…」「心の愛馬として…」という気持ちで、クロノジェネシスの23の周回を見ていたはずだ。

あれから2年。ベレシートとなった彼は、未完成のまま素質を輝かせ、今、日本ダービーへの切符を掴むため京都新聞杯へ向かう。

■ベレシートは「令和のキズナ」になれるか?

走るたびに新しい一面を見せ、「まだ先がある」と感じさせるベレシート。京都新聞杯は、彼にとって日本ダービーという舞台に立つための「序章」にすぎない。2023年生まれの頂点、ベスト18に入り日本ダービーのゲートに入った時、真の「第1章」が始まる。

ベレシートが目指すべきは、母を超えることではなく、春の3歳クラッシック制覇という、母が見られなかった景色を、自分の脚で見に行くことだ。どうか、そのストライドで未来を切り開いてほしい。日本ダービーへの道は、君の脚の中にあるはずだ。

ベレシートと共に晴れ舞台を目指す鞍上は、母の背中も良く知っている北村友一騎手。春のクラッシック戦線で、頂点に立てなかった悔しさを経験している北村友一騎手だけに、その子供で臨むダービーロードは、昨年のクロワデュノールとは違った重みがあるはずだ。

2026年5月31日、東京競馬場。ベレシートの「第1章のフィナーレ」を現地で、この目で見届けたい。

2013年以来の京都新聞杯優勝馬の日本ダービー制覇。ベレシートが「令和のキズナ」となり、ウイニングランを駆け抜ける姿を──。

今週の京都新聞杯を前に、私は静かに夢見ている。

写真:Stay、I.Natsume

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