「おかえりなさい!ミルコさん」/M・デムーロ騎手の復帰に寄せて
■ミルコさんが、帰って来る!

M・デムーロ騎手は、単なる「外国人ジョッキー」ではない。

ネオユニヴァース、ドウラメンテでの二冠、エイシンフラッシュでの天覧競馬、ヴィクトワールピサでのドバイワールドカップ制覇…そして数々の名馬とのドラマ。彼が勝つたびに、ファンは涙し、声を枯らし、心を揺さぶられてきた。

しかし近年のM・デムーロ騎手は、勝利数が少しずつ減少し、かつての輝きを知るファンにとってはもどかしい限り。GⅠを勝ちまくった“あのミルコ”の勢いがなくなっていくのは、悔しくて仕方なかった。騎乗馬の質、環境の変化、年齢、さまざまな要因を耳にするだけで、たまらなく寂しい気持ちになる。

普通なら心が折れてもおかしくない状況の中、彼が選んだのは、新天地・アメリカでの再挑戦だった。昨年8月に米国へ渡ったとき、多くのファンは「新しい挑戦を応援したい」と思いながらも、どこか寂しさを覚えた。再びM・デムーロ騎手が、日本で騎乗する姿を見られなくなるような気さえしていた。それでも彼を応援する気持ちは変わらず、ネット情報を通じて、デルマー、サンタアニタでの勝利ニュースを知り、胸をなでおろす。

そして渡米から9か月後、M・デムーロ騎手は、アメリカ西海岸で重賞4勝を含む42勝という堂々たる成績を残し、再び日本へ戻る決断をした。

「ラストチャンスと思って頑張ります!」

帰国を決めたときのインタビューコメント。この一言に、どれほどの覚悟が込められているのか。「俺はまだ終わっていない」という強い意志が言葉の奥に確かに宿り、応援するファンたちに熱く伝わっている。

■復帰に賛否があるのは当然。それでも──

M・デムーロ騎手の日本復帰に賛否があるのは当然のこと。近年の成績不振のイメージや若手騎手の台頭で騎乗機会が限られる懸念、年齢的なピークを過ぎたのでは…という声も確かにある。しかし彼は、そんな声をすべて受け止めたうえで「ラストチャンス」と覚悟を口にした。その真っ直ぐさこそ彼が愛され、帰還を歓迎する声が大きい理由だ。

そして、M・デムーロ騎手は、日本の競馬に「感動の物語」をもたらしてきた騎手である。

彼の勝利には、いつも「人間の情熱」があり、多くのファンはそれを全身で受け止めた。

M・デムーロ騎手は、勝って泣く。負けても泣く。馬のために泣き、仲間のために泣き、ファンの声援に泣く。あの涙は、決して演出ではない本物の涙である。彼が勝負に本気で向き合っているからこそ、感情が溢れてしまうのだろう。

もうひとつ、M・デムーロ騎手は、馬の個性を掴む天才だ。気難しい馬でも、繊細な馬でも、彼は必ず「その馬のスイッチ」を見つける。ヴィクトワールピサも、ドゥラメンテも、ラヴズオンリーユーも、ユーバーレーベンも…。

彼が勝ち取った勝利は、ただの1勝ではない。そこには、必ず物語を伴う。勝った瞬間に天を仰ぐ、馬に頬を寄せる、ファンに深々と頭を下げる、涙を流しながらインタビューに答える…。そのひとつひとつが、私たちの心を震わせるのである。

■復帰後のM・デムーロ騎手に期待すること

2026年5月2日、M・デムーロ騎手が日本での騎乗を再開する。

アメリカで磨いた反応の速さ、勝ちに行く姿勢。勝負勘を取り戻した“攻めのミルコ”の強気な騎乗を再び日本で見られることが嬉しい限りである。彼の存在が若手にとっての脅威になり、学びの対象になるはずだ。気難しい馬にスイッチを押すことができる騎乗は、彼の職人芸である。そして何より、M・デムーロ騎手の姿を、パドックで、本馬場で、ウイナーズサークルで見られることが、ファンの心を熱くする。そのシーンを私たちは待っていた。

5月2日土曜日の京都競馬3日目。

メインのユニコーンS(GⅢ)でデールエルバハリに騎乗する他、全5レースの騎乗が確定したM・デムーロ騎手。真っ先に見たいのは、パドックを笑顔で周回する彼の姿だろうか。本馬場に登場したら、何と声をかけようか。そんなことをあれこれ考えながら迎える週末は、特別な週末になりそうである。


アメリカでの42勝は、この日のための準備運動にすぎない。だからこそ、M・デムーロ騎手の日本復帰はニュースではなく、9か月前に戻っただけだと思っている。ファンはずっと、その時を信じて待っていた。

5月2日、M・デムーロ騎手が再び日本のターフに立つ。

本当の勝負は、これからだ。

だからこそ、今はただこの言葉を贈りたい。

「おかえりなさい、ミルコさん」

あなたが帰る場所は、いつだって日本のターフの上にある──。

Photo by I.Natsume

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