[重賞回顧]豪雨の仁川決戦!"三冠対連覇"の行方~2026年・宝塚記念~

いよいよ春のGⅠ最終戦、宝塚記念を迎えた。
昨年から施行時期が1週間早まったことで、多彩なローテーションを歩んできた実力馬たちが集結した。

中心は大阪杯、天皇賞(春)を連勝し、春古馬三冠に王手をかけたクロワデュノールだ。
台風6号の影響を受けた追い切りでも力強い動きを見せ、フランスで雨中の重賞を制した実績もある。
焦点となるのは馬場適性よりも、春3戦目でどこまで力を維持できているかだった。
父キタサンブラックが2016年、2017年と2年連続で挑んで届かなかった宝塚記念のタイトルへ挑む。

同じく天皇賞(春)組からはタガノデュード、シンエンペラー、ミステリーウェイが参戦。
中でもタガノデュードは年明けから5戦目となるタフなローテーションで、高杉吏麒騎手とのコンビで大駆けを狙う。

一方、大阪杯から直行したのがメイショウタバルとダノンデサイルだ。
昨年の覇者メイショウタバルは、故・松本好雄会長へ捧げたタイトルに続く連覇を目指す。
鞍上は前週の安田記念を制した武豊騎手。秋の凱旋門賞挑戦へ向けても重要な一戦となる。

ダノンデサイルには主戦の戸崎圭太騎手が復帰。日本ダービー、ドバイシーマクラシックに続くGⅠ勝利を目指す。昨秋からGⅠで3度の3着とあと一歩が続く中、3つめのタイトル獲得を狙う。

さらに日経賞組のマイユニバース、ミクニインスパイア、コスモキュランダ、金鯱賞組のシェイクユアハート、ダイヤモンドS組のスティンガーグラス、阪神大賞典組のマイネルエンペラー、ファミリータイムなど、各路線の実力馬も集った。

そして長期休養から復帰し、これが2戦目となるシュガークン、有馬記念以来となるミュージアムマイルとレガレイラ、海外遠征帰りのビザンチンドリームとジューンテイクも参戦。
様々な道程を歩んできた18頭が、グランプリホースの座を目指す。

しかし、人馬を待ち受けていたのは想像を超える試練だった。阪神競馬場を突如襲ったゲリラ豪雨である。パドックから本馬場入場へ向かう頃には視界を遮るほどの雨風となり、馬場状態は良馬場から一気に重馬場へ悪化した。

激しく降りしきる雨の中、それでもファンの声援は止まない。
人馬は水煙の向こうにあるスタート地点へと歩を進め、春競馬の掉尾を飾る大一番の幕が上がった。

レース概況

スタートで好発進を決めたのは大外のミステリーウェイと内のシュガークン。
その間からクロワデュノールが先行ポジションを狙い、コスモキュランダも横山武史騎手に促されて先頭へ向かった。

コスモキュランダがハナを奪うと、外からメイショウタバルがこれを追う形で2番手へ。
スタンド前では武豊騎手が手綱を抑え、無理に競りかけることなく折り合いを優先した。
クロワデュノールはその直後をぴったりマークし、外にマイネルエンペラー、内にシュガークンとミュージアムマイルが続く。
さらにミクニインスパイア、ファミリータイム、ジューンテイクが続き、後方にはレガレイラ、シンエンペラー、ダノンデサイルが控える。
ビザンチンドリーム、スティンガーグラス、タガノデュードらは末脚勝負に懸ける構えで向こう正面へ入った。

逃げるコスモキュランダとメイショウタバルの間にはおよそ5馬身の差。両馬ともペースを落として息を入れながら、重馬場での消耗戦に備える。
武豊騎手が刻むリズムに合わせるように先行勢も折り合い、クロワデュノールも5番手で我慢。
ミュージアムマイルは最内でロスなく脚を溜め、後方のダノンデサイルとレガレイラは動き出しの機を待っていた。

残り1000mを切ると後方勢が徐々に進出を開始するが、マイユニバースが後退。
横山典弘騎手騎乗が残り1000m過ぎで促したが前に動けず、残り800m付近で追うことを止めて、競走中止となった。

一方、前ではなおもコスモキュランダが主導権を握る。メイショウタバルはコーナーから徐々に差を詰め、勝負どころへ。
雨が降り続き、スタミナとパワーを問われる馬場の中で、シュガークン、マイネルエンペラー、ジューンテイクらの手応えが苦しくなっていく。

その中でもクロワデュノールはメイショウタバルの直後で余力十分。ミュージアムマイルは内から外へ進路を切り替え、さらに外からビザンチンドリーム、シェイクユアハート、レガレイラが進出する。空いたスペースにはダノンデサイルが潜り込み、各馬が最後の直線へ向かった。

直線入り口でメイショウタバルが手前を替え、一気にコスモキュランダへ並びかける。しかしコスモキュランダも簡単には譲らず、重馬場の中で懸命に粘り続けた。

その後ろからはクロワデュノールが抜群の手応えで追撃を開始し、ダノンデサイルも馬群を割って4番手まで浮上。勝負はメイショウタバル、クロワデュノール、コスモキュランダ、ダノンデサイルの4頭へ絞られた。

残り200mで先頭に立ったメイショウタバルに対し、クロワデュノールが一完歩ずつ差を詰める。しかし昨年の覇者は最後まで脚色を鈍らせない。
坂を上がってスピードこそ落ちたものの、粘り強く踏ん張り続け、追いすがるクロワデュノールをクビ差凌いで宝塚記念連覇を達成した。

3着争いは最後まで粘ったコスモキュランダとダノンデサイルの接戦となり、ゴール寸前でダノンデサイルがアタマ差先着。上位4頭は5着以下を大きく引き離し、この日の馬場と展開に適応した実力を示した。

5着には最後方待機から追い込んだタガノデュード。レガレイラは7着、ミュージアムマイルは9着に終わった。外を回っても、内で脚を溜めても簡単には差を詰められない重馬場の中、最後は雨を苦にしないメイショウタバルと、総合力で応戦したクロワデュノールが前で力を示した一戦だった。

また、ダノンデサイルも後方待機組では唯一上位争いへ加わり、最後までコスモキュランダへ迫る内容を披露した。大阪杯に続き、再びの3着は惜しい結果ではあったが、タフな条件でも崩れない強さを改めて印象づけている。

各馬短評

1着 メイショウタバル 武豊騎手

安田記念のシックスペンスに続き、武豊騎手は2週連続のGⅠ制覇。
メイショウタバルも宝塚記念連覇を達成し、父ゴールドシップとの父子連覇という初快挙を成し遂げた。
さらに松本好雄会長の逝去から約1年。メイショウ軍団にとっても待望のGⅠタイトルとなった。

武豊騎手は逃げ馬のメイショウタバルで無理にハナを奪わず、コスモキュランダを前に置く形でレースを進めた。かつては気性面との戦いが続いた馬だが、この一年で折り合いに進境を見せ、展開に左右されにくい競馬ができるようになった。

3歳で毎日杯を制して以降、稍重以上の馬場では無敗。今回もその適性を存分に発揮し、直線では満を持して先頭へ立った。春古馬三冠に王手をかけていたクロワデュノールの追撃を凌ぎ切った姿は、昨年以上の完成度を感じさせるものだった。

阪神巧者、道悪巧者という枠を超え、現役屈指の実力馬を退けて掴んだグランプリ連覇。
その走りは、秋に控える凱旋門賞への期待をさらに膨らませるものだった。

2着 クロワデュノール 北村友一騎手

昨年挑戦した凱旋門賞への一次登録を見送り、春古馬三冠という国内最高峰の目標へ照準を定めたクロワデュノール。
父キタサンブラックは4歳時3着、5歳時には大敗を喫した宝塚記念だったが、その父が越えられなかった壁に果敢に挑んだ。

レースでは好位でしっかり折り合い、メイショウタバルを射程圏に入れながら追走。道悪の中でも上がり2位タイの35秒2を記録し、最後まで王者らしい脚で迫った。
あとクビ差届かなかったのは、相手が道悪巧者だったことも大きいだろう。それでも大阪杯1着、天皇賞(春)1着、宝塚記念2着という戦績は圧巻の一言。
4歳春にして王道路線を堂々と走り切った姿は、この秋への期待をさらに膨らませるものだった。

3着 ダノンデサイル 戸崎圭太騎手

大きなフレームと力強い馬体を持つ“ベリベリホース”ことダノンデサイル。
重馬場でのレースは未知数だったが、その不安を払拭する内容だった。

後方でじっくり脚を溜め、勝負どころまで我慢した戸崎騎手の判断は見事。
直線では他馬が苦しむ馬場の中を力強く伸び、差し馬勢では唯一上位争いへ加わった。
日本ダービー勝利から直行した菊花賞、海外遠征となったインターナショナルSを除けば大きく崩れておらず、今回もその堅実さを証明した格好だ。


初めての重馬場を克服したことは大きな収穫であり、右回りだとモタれると言われていたが、実際の走りでは直線外を鋭く伸びて来た。ドバイの地でカランダガンに勝った末脚は5歳春も健在だ。
得意とされる左回りの天皇賞(秋)、ジャパンCでは再び主役候補の一頭となるだろう。

4着 コスモキュランダ 横山武史騎手

昨年末の有馬記念からブリンカーを着用して2着健闘、新たな一面を見せ始めたコスモキュランダ。
年明け初戦の日経賞はコーナーでの進路取りが噛み合わなかったが、今回はメイショウタバルとの再戦に向けて、自らレースを作る選択をした。

スタート後は迷いなく先頭へ立ち、重馬場の中でも自分のリズムを守り続けた。
直線ではメイショウタバルに交わされても簡単には止まらず、クロワデュノール、ダノンデサイルとの争いにも最後まで加わった。

アタマ差で馬券圏内こそ逃したものの、この4着は数字以上の価値がある。
ブリンカー着用と積極策は確実にこの馬の武器となっており、新たなレーススタイルが確立されたと言えるだろう。次の勝利の日まで、そう遠くはないはずだ。

レース総評

阪神競馬場を襲った豪雨は、人馬に容赦なく降り注いだ。

重馬場となった春のグランプリで最後に輝いたのは、昨年の覇者メイショウタバルだった。

昨年は亡き松本好雄会長の悲願であった有馬記念制覇を目指し、国内路線を歩んだメイショウタバル。
天皇賞(秋)ではスローペースの逃げを打ち、有馬記念では後続に競られ続ける厳しい展開を経験した。
その一戦一戦が、この日の勝利へ繋がっていたのかもしれない。

この一年で折り合いに進境を見せたメイショウタバルを導いたのは武豊騎手だった。
有馬記念で激しく競り合ったコスモキュランダを先に行かせ、自らは2番手で構える。
重馬場が得意なメイショウタバルの脚を信じ、満を持して抜け出す競馬はまさに名手の真骨頂だった。

もっとも、この勝利は単なる道悪巧者の逃げ切りではない。

相手は大阪杯、天皇賞(春)を連勝し、春古馬三冠に王手をかけていたクロワデュノールだった。
良馬場であればまた違った結果があったかもしれない。
しかし競馬は、その日その瞬間に与えられた条件の中で強さを競うスポーツである。

レース直前に突如として降り出した豪雨、良馬場から一気に重馬場へ変わった阪神競馬場。
その過酷な条件の中で現役最強クラスのライバルを退け、連覇を成し遂げたことにこそ価値があるのだ。

今年、メイショウタバルは凱旋門賞という新たな夢へ向かう。
松本好雄会長が愛したメイショウ軍団の物語は、松本好隆オーナーに受け継がれ、再び世界へ向けて走り出そうとしている。

春のグランプリを連覇したメイショウタバル。
その背を押したのは、天から見守る松本会長の想いだったのかもしれない。

雨降りしきる阪神競馬場から始まった新たな挑戦は、今度はパリロンシャンの大地へ続いていく。

写真:@gomashiophoto、INONECO、RINOT、すばる

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