[新種牡馬対談]サリオスの仔は牝馬が走る?チュウワウィザード産駒の成長性は? 治郎丸敬之×緒方きしん

2歳POGで注目の新種牡馬として挙げたエフフォーリア、ホットロッドチャーリーについて取り上げた前回の対談。今回は朝日杯フューチュリティSを無敗で制し、マイル路線で長くトップクラスの力を示したサリオスと、ドバイWC2着などダートの国際舞台で存在感を放ったチュウワウィザードについて語り合う。

馬体のプロ・治郎丸敬之さん、ウマフリ代表の競馬ライター・緒方きしんによる新種牡馬対談。POGで狙うべき産駒のタイプ、そして種牡馬としての可能性はどこにあるのか──。

■サリオス産駒の鍵を握るのは筋肉量

緒方:前回取り上げたエフフォーリアは、6月終了時点で9頭が中央競馬ではデビュー。うち4頭が1着となり、勝ち上がり率が5割を超えています。2歳6月からこれだけ走るなら、来年以降はさらに楽しみが広がりそうですね。ということで、今回は彼に続く有力な国内産の新種牡馬を見つけ出したいところ。まずは2020年に2歳マイルGⅠを制したサリオスからお話したいと思います。

治郎丸:エフフォーリアは順調なスタートだし、サリオスも良い感じだね。むしろ、サリオスを出すのがちょっと遅かったかな(笑)

緒方:治郎丸さんがホットロッドチャーリーを優先したので…(苦笑) 個人的には、サリオス産駒は牝馬が走るんじゃないかなと思っています。血統的な観点からはお母さんがドイツオークス馬のサロミナで、それにハーツクライという組み合わせだから、かなり重厚なイメージを抱きますよね。でも、きょうだいにレコードタイムで勝った馬もいるし、サリオス自身が無敗で朝日杯フューチュリティSを勝利。加えてサラキアやサフィラといった、マイルから中距離で重賞を勝ったきょうだいは牝馬に多いというのを踏まえると、産駒全体で見た時にはスピードタイプの牝馬に良い馬が出てくるんじゃないかなと。

治郎丸:馬体的な観点から見ても、あれだけ緩くて、大きな馬格をしていたサリオスが2歳のマイルGⅠを勝ったというのは少し不思議なところもあったね。でもサリオス自身の体高は161cmくらいで、そこまで高くない。つまり、脚が短めで重心が低く、そのうえで馬体重がある。そうなると、筋肉量が横にかなり乗っている、いわゆる分厚いタイプの馬だと考えられるんだよね。そこでミオスタチン遺伝子検査の話が出てくる。

緒方:ウチで連載していただいている福ちゃんのブログに記載されていた検査ですね! 『馬体の教科書』にも、このお話が乗っているのを読みました(笑)

治郎丸:すかさず、だね(笑) これはすごく簡単に言うと、筋肉量に関係する遺伝子の型を見るもので、大きく分けると、CC型、CT型、TT型の3つがある。人間の血液型のように分類されるイメージかな。CC型は筋肉量が豊富で、いわゆるマッチョなタイプ。短距離向きで、仕上がりも早いという傾向が多い。CT型はその中間で中距離向き。一方でTT型は筋肉量が少なく、スラッとしたタイプで、長距離向きになりやすいと言われているね。

緒方:宣伝になりますが、ウマフリで刊行している『サラブレッド大辞典』で、そのあたりの仕組みを詳しく解説しているので、興味ある方はそちらを読んでいただければと思います(笑)

治郎丸:この型は公表されていないから、あくまで僕が馬体を見て推測した型の話をするけど、サリオスはCC型だと思っている。筋肉量が豊富で、いかにもパワーのあるマッチョな馬だったからね。ということは産駒も、長くても1600mくらいまでを得意とする馬が多くなるんじゃないかな。あと牝馬は総体的に、筋肉量が少ないタイプに出ると、馬格の面でも厳しくなりやすい。そうなってしまうと勝ち上がるのはなかなか難しくなる傾向にあるんだよね。その点、サリオス産駒の牝馬は、父から筋肉量や仕上がりの早さを受け継げば面白い。早めにデビューして、短い距離でしっかり賞金を稼ぐという「早期性」のあるタイプなんじゃないかな。

緒方:僕が最初に言った「牝馬が走るんじゃないか」という話ともつながってくるわけですね。

治郎丸:そう。だから、緒方さんの意見も一理あると思っているよ。阪神ジュベナイルFなんかに出てきても全然驚かない。

緒方:そういったところも踏まえてですけど、サリオスはホームランだけじゃなく、コンスタントにヒットを打てるタイプになるんじゃないかと思ってるんですよね。2歳の夏重賞に毎年のように産駒を送り込んでくれるようになってくれたら嬉しいですね。

治郎丸:サリオス自身がかなり特殊な馬だったから、どこまで自分に似たタイプを出すかは見極めが必要になると思うけど、緒方さんの言う通り、ポンポンとヒットを量産するアベレージヒッターになり得る種牡馬だと思うよ。既に今年、函館でサリオス産駒の牝馬が芝の1200mで勝利を挙げているというのも、より後押しになるんじゃないかな。

■チュウワウィザードのスピードは世界クラス!成長度合いも問題ナシ?

治郎丸:緒方さんはチュウワウィザードはどう思っている? 僕は初年度に自分の繁殖牝馬にも配合したくらい、期待している新種牡馬なんだよね。

緒方:現役時代はドバイWCでも2着になったダートのトップホースですね。個人的には、これまで活躍しているダート種牡馬って、1600m実績を持っていて、かつ、早い時期から動いていた種牡馬が多いイメージがどうしてもあります。古馬になってから活躍し始めて、得意とする距離も少し長めであるチュウワウィザードは、そこに当てはまりません。たとえばルヴァンスレーヴも、現役時代は全日本2歳優駿を勝っているように、2歳から動けてマイルにも対応していました。

治郎丸:なるほどね。ただ、これは個人的な意見だけど、チュウワウィザードもルヴァンスレーヴに匹敵するくらい、ダート馬としてのスピードはトップクラスのものを持っていたと思うよ。成長曲線は確かにチュウワウィザードの方が少し遅めだったけど、この馬はドバイWCで2着に入ったくらいの実力の持ち主だったから、間違いなく世界レベルの速さがあった。だからそれに関しては心配いらないんじゃないかな。産駒もマイル戦あたりまでならバリバリ動けると思っている。緒方さんが気にしている成長度合いに関しても、ゆったりとしたローテーションを組む大久保龍志先生が、本当にこの馬の将来を見据えて大事に大事に使っていたから、必然的に上のクラスで花開くのが遅めの時期になったとも思っているし、チュウワウィザード自身が晩成タイプという風にはあまり思わないかも。

緒方:まあ、自分も不安要素を並べてはみたものの、実は産駒の写真を見て「成功しそうだな」と思っています。好きな馬だったからうれしいですね。成長度合いだけが心配の種になるのかなと思っていましたが、治郎丸さんの話を聞いてそんな心配はいらなさそうな気がしてきました。

治郎丸:『馬体の教科書』ではルヴァンスレーヴの方にスポットを当てて、「ルヴァンスレーヴはウクライナの総合格闘家であるイゴール・ボブチャンチンのように、ちょっと太く見えても、実は柔らかくとんでもなく強い筋肉をまとっているタイプだ」と記したけど、バランスだけで見るなら完成されたチュウワウィザードの方が良いと思っている。岡田牧雄さんが以前、チュウワウィザードについて「1年経つと1秒タイムを縮められるタイプ」と表現していたことを覚えているしね。だから、チュウワウィザードの産駒は早い時期から動けるかつ、年月の経過とともにどんどん成長した姿を見せてくれるかもしれないよ。

緒方:デュランダルにキングカメハメハという血統的に見ても、極端に晩成という感じではないですよね。3歳ダート路線で存在感を出してくる馬が出そうな気がしています。東京ダービーに間に合う馬が出てきたら面白いですよね。

治郎丸:そうだね。中央ダートでスピード負けしない産駒は出てくるはずだし、馬体のバランスも良い。僕はかなり楽しみにしています。

緒方:今年の新種牡馬は、前回のお話と合わせても見るべきポイントがかなり多いですね。それでいて有力な新種牡馬の仔が6月から産駒が勝ち上がっていますから、新たな風が到来してくれたら面白いと感じます!


サリオスは、豊富な筋肉量と仕上がりの早さを産駒に伝えられそうとの見方となった。特に牝馬やマイル前後で動けるタイプには注目したい。

一方のチュウワウィザードは、現役時代の印象から晩成・中距離型と見られやすいものの、ドバイWCで通用したスピードは確かなもの。産駒のフレームの良さや成長力を考えれば、ダート路線で大物を送り出す可能性も十分にある。2歳ダート路線に大物の看板を引っ提げて登場するチュウワウィザード産駒が現れるのも、そう遠くないかもしれない。

写真:@pfmpspsm、s1nihs

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