[今週の注目]神戸新聞杯へ - ロブチェン&松山弘平騎手、三冠への始動!

この秋、コントレイル以来6年ぶり、そして史上9頭目となる牡馬三冠馬の誕生を目撃できるかもしれない。三冠馬の歴史を振り返れば、初代セントライトから八代目コントレイルまで、わずか8頭の誕生に80年近い歳月を要した。その数字が、「三冠達成」という偉業の険しさを雄弁に物語っている。

前回の三冠達成は2020年。コントレイルが無敗で歴史的偉業を成し遂げたものの、当時はコロナ禍の真っ只中で、競馬場で観戦できた観客は1000人にも満たなかった。静寂のスタンドで迎えた三冠達成は、どこか寂しさを伴う瞬間でもあった。しかし今年は違う。競馬場に多くのファンが集い、歴史が動く瞬間をその目で確かめることができる。9度目の感動を、ぜひこの秋に迎えたい。

その主役となるのがロブチェンだ。皐月賞では逃げてリアライズシリウスの追撃を3/4馬身封じ、日本ダービーではゴール前で抜け出したパントルナイーフをアタマ差で差し切った。ロブチェンは、春の二冠を制し、松山弘平騎手を鞍上に三冠への挑戦権を手にしている。

そして今週、ロブチェンと松山騎手が秋初戦となる神戸新聞杯に登場する。ここから菊花賞へ向けて、いよいよ三冠ロードが再び動き出す。

■三冠馬たちが歩んだ「秋の第一歩」

菊花賞が10月施行となった2000年以降の三冠馬——ディープインパクト(2005年)、オルフェーヴル(2011年)、コントレイル(2020年)——はいずれも神戸新聞杯をステップに菊花賞へ向かった。そして3頭とも神戸新聞杯を勝ち、菊花賞まで連勝している。それは秋初戦を確実にものにすることが、三冠達成の「必須条件」であるかのようだ。

一方で、春に二冠を制しながら菊花賞で敗れた馬もいる。ネオユニヴァース(2002年)とメイショウサムソン(2006年)だ。どちらも神戸新聞杯から始動したが、ネオユニヴァースはゼンノロブロイ、サクラプレジデントに屈して3着。菊花賞でもザッツザプレンティの3着に終わった。メイショウサムソンも春の勢いから「まず負けない」と見られていたが、神戸新聞杯でドリームパスポートに差し切られ2着。菊花賞でも1番人気ながらソングオブウインドの4着に敗れ、三冠の夢は潰えた。

こうした歴史を振り返ると、神戸新聞杯は単なる前哨戦ではなく、三冠馬の行方を左右する「試金石のトライアル」と言っていい。ロブチェンが偉大な先輩たちの列に名を連ねるためにも、ここは絶対に落とせない一戦となる。神戸新聞杯を勝ち切り、その勢いのまま菊花賞へ駆け上がってほしい。

■ロブチェンという存在 - 掴みどころのなさが魅力へ変わるまで

ロブチェンは、父に菊花賞と天皇賞(春)を制したワールドプレミア、母にソングライティングを持つが、兄姉に目立った活躍馬はおらず、デビュー前から大きな期待を背負っていたわけではない。新馬戦も2番人気での出走だった。しかし、その新馬戦を3馬身差で逃げ切ると、続くホープフルステークスでは7番人気ながら豪快な差し脚を披露。ゴール前で先頭に立ったフォルテアンジェロを一瞬で差し切り、2歳王者の座を掴んだ。

逃げて勝ち、差して勝つ。ロブチェンは逃げ馬なのか、差し馬なのか。強いのか、偶然の連勝なのか。掴みどころのない走りに、ファンの評価は割れた。3歳初戦の共同通信杯ではリアライズシリウスを先に行かせて差しに回ったが、外から伸びたベレシートにも差し負けての3着。2歳王者の敗戦でクラシック戦線は混沌とするかに見えた。

それでもファンはロブチェンを信じた。皐月賞でも日本ダービーでも、彼は1番人気に支持された。そしてロブチェンは、その期待に応えて二冠馬となった。

今年の神戸新聞杯の構図

今週の神戸新聞杯には14頭が登録している。京都新聞杯まで3連勝しダービー9着のコンジェスタス(父コントレイル)、毎日杯勝ちでダービー6着のアルトラムス(父イスラボニータ)、京成杯の勝ち馬グリーンエナジー(父スワーヴリチャード)らがロブチェンに挑む構図だ。デビューから手綱を取り続けている鞍上の松山騎手が、どんな作戦でトライアル戦を戦うのかも注目される。

春の主役が、秋も主役であり続けるのか。それとも新勢力が牙を剥くのか。三冠への道は、神戸新聞杯を経て、さらに熱を帯びていく。

■三冠の秋へ - ロブチェンと松山弘平騎手の挑戦

神戸新聞杯の先に広がるのは、いつもの菊花賞とは少々異なる。今年の菊花賞には、ロブチェンと松山騎手が歩んできた道のりが、大輪となって結晶する「秋の頂」がある。菊花賞という長距離戦は、馬の総合力と騎手の判断力が試される舞台。春の二冠で見せた勝負強さを、さらに強く証明しなければならない。

ロブチェンの背中をデビューから操ってきた松山騎手は、デアリングタクトで牝馬三冠を達成し、競馬史に名を刻んだ名手。もしロブチェンとともに菊花賞を制すれば、史上初の「牡馬・牝馬の三冠騎手」という新たな勲章が加わる。これは騎手としてのキャリアにおいても、大きな意味を持つ。

松山騎手は、派手な言動をしない。静かで、誠実で、馬と向き合う姿勢に揺るぎがない。だからこそ、ロブチェンのように「掴みどころのない才能」を持つ馬を、丁寧に導いてきたのだろう。逃げても差しても勝てるロブチェンの多面性は、松山騎手の柔軟な判断力と相性が良い。二冠を制した春のレースは、その信頼関係が生んだ勝利だった。

そして迎える神戸新聞杯は、三冠への道をつなぐ重要な一戦だ。過去の三冠馬たちは必ずこのレースを勝ち、菊花賞へと駆け上がっていった。一方で、ここで敗れた二冠馬は菊花賞で涙を飲む。つまり、歴史はこのレースの重みを語っている……。

しかし三冠馬の歴史をさらに遡れば、ミスターシービーもナリタブライアンも、菊花賞前のトライアル・京都新聞杯で敗れている。それでも本番の菊花賞では、誰もが息を呑む圧巻の走りで三冠馬となった。だから、トライアルの勝敗に過度に怯える必要はない。大切なのは、ロブチェンらしい競馬を貫き、秋へ向けて確かな手応えをつかむことだ。

秋の京都で、ロブチェンが長い直線を駆け抜ける姿を想像する。スタンドの歓声、馬場を叩く蹄音、そして松山騎手の手綱さばき——その瞬間、ふたりの物語は頂点へと向かうはずだ。

ロブチェンが三冠馬となり、松山弘平騎手が牡馬・牝馬の三冠騎手となる。そんな歴史的瞬間を、今年の秋に迎えたいものである。

Photo by I.Natsume

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