[今週の注目]今度こそ勝利の笑顔を!グランマエストロが挑む、世代最後の芝の3歳未勝利戦

未勝利脱出。その一言が、どれほど遠く、どれほど重いものなのか。どんなに良血でも、どれほど素晴らしい馬体を持っていても、なぜか勝ち切れないまま夏を終える馬たちが、毎年必ずいる。「1勝」の扉は、想像以上に狭く、残酷だ。夏の後半になると、その重圧は週を追うごとにズシリと増して、次第に逃げ場を失っていく。

そして今週、現3歳世代の未勝利戦はラストを迎える。

勝つか、終わるか——その二択しか残されていない世界だ。勝者と2着の差が、天国と地獄ほどに開いてしまうのが、世代最後の3歳未勝利戦。前後に行われる2歳未勝利戦なら「2着なら上々。勝利への目途が立った」という明るい未来がある。しかし、この3歳未勝利戦で2着に終われば、その瞬間に「次のステージ」を探さなくてはならない。努力も成長も、あと一歩の健闘も、ここでは救ってはくれない。

9月の中山開催前半は、勝負の厳しさと敗者の切なさが交差する場所だ。暑さが残るスタンドの風景はいつもと変わらないのに、レースに挑む馬と陣営の胸の内だけが、静かに張り詰めている。

ここで勝てなければ終わってしまう。その覚悟が、馬の走りにも、人の表情にも宿る。この舞台には、勝者の歓喜と同じだけ、敗者の無念が積み重なっていく。

だからこそ、9月の中山の未勝利戦は、毎年胸に刺さるのである。

中山競馬場で行われた昨年の「世代最後の3歳未勝利戦」を制したのは、ブエナビスタの孫であり、ソシアルクラブの仔オルグジェシダだった。2歳秋のデビュー以来、常に人気を背負いながら、2着・3着を繰り返す日々。「勝てそうで、なぜか勝てない」。そんなもどかしさを抱えたまま季節は巡り、迎えた9月中山の最後の3歳未勝利戦。

その舞台で彼女は、長く胸に溜め込んだ霧が晴れたかのように、真っ直ぐに伸びた。後続に2馬身の差をつけて駆け抜けた瞬間、ウイナーズサークルに広がった関係者の安堵の笑顔が忘れられない。

「最後の一戦・最後の勝ち馬」が、今までの悔しさを洗い流してくれる——それを強く感じさせたオルグジェシダの勝利だった。

そして今年もまた、崖っぷちに立たされ、最後の未勝利脱出に挑む馬がいる。母は名牝グランアレグリア。母とは毛色が異なり、栗毛の美しい馬体がひときわ目を引く初仔、グランマエストロだ。

前走、7月福島の未勝利戦でもこのコーナーで取り上げたが、直線で先頭集団に迫りながら、そこから伸び切れず8着。距離が長かったのか、小回りコースが合わなかったのか——理由を探しても、答えは見つからず。ただ、掲示板を外したという事実だけが重く残り、その先の出走への道は一気に狭まってしまった。

グランマエストロは、昨年のPOG本では巻頭グラビアを飾り、有力馬として多くの誌面で紹介された。実際、私がPOGで第一指名したのもグランマエストロ。父エピファネイアとの配合から、クラシック戦線を賑わす未来を疑わなかった。

 デビューは8月新潟の最終週。単勝1.7倍の支持を集めた新馬戦は、直線で伸び切れず8着に敗れる。しかし誰もが「レースを覚えればすぐに勝てる」と信じていた。その後も上位人気に推され、パドックでは抜群の周回を見せながら、3着・2着・3着・2着・4着と惜敗を積み重ねる。7戦目にはダートにも挑戦したが6着と、次第に選択肢と時間が少なくなっていく。

決して力不足とは思いたくない。ほんの少しの展開の利と、運と、そしてグランマエストロ自身の闘争心に火がつけば——おっとりとした栗毛の奥に眠るスイッチが入れば、「最後のひと踏ん張り」は必ずできるはずだ。

泣いても笑っても、今週で3歳未勝利戦は終わる。

毎年のことだが、8月の新潟開催あたりから、掲示板を外した馬たちは静かに舞台を去っていく。残るのは5着以内に入った馬たちだけ。「泣きの1回」に挑む前走入着馬同士の戦いとなり、当然レベルは一気に上がる。

グランマエストロも8月半ばに帰厩し、調教を重ねてきたが、出走枠を見つけることは非常に厳しい。新潟最終週、中山初週の未勝利戦は除外濃厚で登録すら叶わず、いよいよ最後の週にすべてを賭けることとなった。

9月13日(日)中山4R、芝1600m。

前走入着馬が多く登録してくれば、それだけで枠は埋まる。出走間隔だけを頼りにするグランマエストロの名前が、出馬表に記される保証はどこにもない。仮に枠があっても抽選となり、運の後押しが必要になる。

それでも、彼を応援したい。未勝利で終わるような馬ではないと信じたい。「1勝の重み」がズシリと胸に沈むこの時期、誰よりもそれを感じているだろう陣営の笑顔を、ウイナーズサークルで見たいと願っている。

世代最後の芝の3歳未勝利戦。

たったひとつだけ残された未来を、最後につかみ取るのは誰なのか。毎週午前中に施行される「未勝利戦」と思わず「世代最後の芝の3歳未勝利戦」として、どうか、熱い気持ちで見守ってあげてほしい。

Photo by I.Natsume

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