![[今週の注目]期待の新馬イルリサット登場! - 母アエロリットと菊沢調教師の「夢のつづき」](https://uma-furi.com/wp-content/uploads/2026/08/0O9A9105-scaled.jpg)
今週、注目の新馬が日曜の札幌でデビューする。
馬名イルリサット。父キズナ、そして母は2017年のNHKマイルCを制したアエロリット。その3番仔である。上の兄2頭とは異なり、母と同じ芦毛に出たイルリサットは、1歳時からアエロリットそっくりだった。黒みを帯びた芦毛の馬体に大きな流星、ゴムまりのように弾力のあるシルエット。アエロリット産駒初の牝馬ということもあり、サンデーレーシングの募集ツアーでは展示スペースに多くの会員が集まった。

アエロリットの初仔コンドライト(牡・鹿毛/父ドゥラメンテ)は新馬・未勝利で惜敗を繰り返すも、結局8月末までに勝てずじまい。1勝クラスで初勝利を目指すことになった矢先の3歳秋に屈腱炎を発症。無念の引退となったが、志半ばで競走生活を退いたコンドライトは、北海道で乗馬に転身して、馬術大会にも出ているという。

2番仔アエログラム(牡・黒鹿毛/父シルバーステート)も3戦して未勝利。アエロリットの産駒として期待されながら、兄たちにとって「1勝」が遠いままだ。だからこそ、3番仔で初の牝馬イルリサットへの「アエロリット産駒の初勝利」への期待は自然と高まっていく。
イルリサットは順調に育成され、今年4月24日に菊沢厩舎へ入厩。ノーザンファーム空港での育成時代から評判が高く、「体力があり運動神経が良い、センスの塊」というコメントが聞こえていたため、早くから注目度は抜群だった。
春に発売されたPOG各誌でも、イルリサットは軒並み有力馬として紹介されている。巻頭の馬体写真で大きく取り上げられ、インタビュー記事でも「期待の関東牝馬」として必ずと言っていいほど名前が挙がっていた。

菊沢調教師の「ゲートセンスは良さそう」というコメント通り、5月7日にゲート試験を一発合格。すると「イルリサットはいつデビューするのか?」が話題となり、天栄トレセンへ調整に出た後は各所で情報が飛び交った。
6月府中デビュー説が流れたものの、ノーザンファーム空港へ移動したことで「北海道シリーズデビュー説」が急浮上。函館か、札幌か——やきもきしながら北海道シリーズは進んでいった。
そして札幌開催が中盤に差しかかった8月6日、イルリサットは函館競馬場へ入厩。同時に、8月30日(日)1800m新馬戦でのデビューが発表された。
函館では調整も順調で、1週前追い切りでは菊沢調教師を背に5F62.9-3F35.4の好時計で並走馬に先着。鞍上は横山武史騎手。どんな走りを見せてくれるのか、期待が高まる週末となった。

キズナ×アエロリットという魅力的な血統、そして芦毛の牝馬。その馬を迎え入れる菊沢調教師の胸中には、きっと言葉にならない感情があるはずだ。
アエロリットが厩舎にいた頃——
彼女はいつも凛として、気難しさと繊細さを同居させながら、それでもレースでは迷いなく前へ進んだ。あの軽やかな先行力、風を切るようなストライド、そして最後まで譲らない芯の強さ。菊沢調教師は、そのすべてを間近で見つめ、受け止め、アエロリットをGⅠ馬に育て上げた。

そして今、その娘イルリサットが再び厩舎の扉をくぐってきた。母と同じ芦毛の馬体、同じ流星。「似ているな」と思った瞬間に、胸の奥で何かがそっと灯る——師のそんな心の動きがあったとしても不思議ではない。
母をGⅠ馬へと導いた師が、再びその娘と夢を見る。それは血統のロマンであると同時に、菊沢厩舎に流れる「夢のつづき」でもある。
イルリサットがゲート試験を一発合格した日、あるいは追い切りで軽々と並走馬を交わした瞬間。菊沢調教師はきっと、アエロリットの面影と、イルリサット自身の新しい才能が重なって見えたのではないだろうか。
「この子はどんな未来を描くのだろう」
そんな期待と、母を思い出す温かな記憶が、菊沢調教師の胸の中で静かに混ざり合っているはずだ。

兄たちが果たせなかった「アエロリット産駒の初勝利」。その扉を、3番仔の牝馬イルリサットが開いてくれると信じたい。
アエロリットが見せてくれた先行力。娘イルリサットの走りの中に、どれほど母の面影が宿っているのか。あるいは、父キズナ譲りの持続力や勝負根性が新たな個性として芽吹くのか。
その答えは、日曜の札幌で初めて明らかになる。
母アエロリットは、NHKマイルC後、ただ一度、札幌のコースを走った。横山典弘騎手を鞍上にクイーンS(芝1800m)を逃げ切る。そして今週、娘イルリサットも「物語の始まり」の地を北の大地に選ぶ。日曜日の札幌芝・1800mの新馬戦。鞍上は奇しくも横山典弘騎手の次男、横山武史騎手である。
イルリサットが北の大地の芝を駆け、その第一章が札幌に美しく刻まれることを、心から願っている。

Photo by I.Natsume
