競馬というスポーツは「ブラッドスポーツ」と呼ばれることがある。ブラッドとは「血」、つまり血統が重要な位置づけを持つスポーツということだ。
競走馬の血統、さらにはそんな血統と競馬に携わる人との関係性や絆が、多くのドラマを生み出してきた。2017年に行われた京都金杯もまた、そんな血統と騎手との絆が感じられたレースであった。
今回はこの2017年京都金杯について振り返っていく。
2013年に生を受けた、エアスピネル。
この馬は父にダービー馬キングカメハメハ、母に秋華賞馬エアメサイアというG1馬同士の配合という、まさにサラブレッドと呼ぶにふさわしい血統の持ち主であった。
そんなエアスピネルは順調に育ち、クラシックでの活躍を期待される馬となる。そして阪神競馬場で行われる新馬戦の鞍上には、武豊騎手が指名された。
武豊騎手はエアスピネルの母・エアメサイアの主戦騎手でもあったため、2代に渡ってこの一族の馬でクラシックを目指すことになったのである。
そして新馬戦、デイリー杯と連勝し、1番人気で迎えた朝日杯FS。武豊騎手にとっては前人未到のJRAG1全制覇がかかってたレースだが、結果は2着。しかも敗れた相手は奇しくもエアメサイアのライバルであるシーザリオの子供リオンディーズであった。
その後クラシック戦線に挑んだエアスピネルだが、そつない走りを見せるものの善戦止まり。どうしてもあと一歩が足りない……そんな状態が続いていた。
古馬になって迎えた初戦は、関西の競馬の開幕を告げる京都金杯であった。前走の菊花賞からは実に1400mの距離短縮。しかしながら結果を残している京都コースということもあり、人気は単勝1倍台まで集めていた。
フルゲート18頭で行われたこのレースは、激しい先行争いで幕を開けた。
ゲートが開くと6頭ほどがズラッと好位のポジション争いを繰り広げ、しばらくして徐々にペイシャフェリシタ、アルマディヴァンの順に隊列が固まっていった。エアスピネルはそんな先行集団を見る形で6番手付近に落ち着き、さらに京都競馬場の下り坂に乗じてジワリとポジションを押し上げ、なんと4コーナーでは4番手まで進出していた。
迎えた直線でもその抜群の手ごたえは変わらない。
直線半ばで一気に先頭を捕えると後続を突き放しにかかった。後方からは同世代のブラックスピネルが追い込んでくるも、武豊騎手の左ムチに応えるように粘り続け、後続の強襲をハナ差しのいでゴールイン。
見事、古馬になっての初戦を白星で飾った。
このレースの勝利で武豊騎手は31年連続の重賞制覇という記録を樹立。自身が持つ記録をまたしても更新した。そしてエアスピネルは復活の勝利を母のパートナーと共に、母がG1を勝利した舞台でもある京都競馬場で達成したのだ。
また武豊騎手も自身ゆかりの血統で記録を更新。
まさに人馬の血の絆が見られた勝利であった。そうして、2017年の競馬界はまさに血統によるドラマティックなスタートで幕を開けたのだった。
写真:ゆーすけ