伝統の古馬G2競走「日経新春杯」。
1990年代には、カミノクレッセやムッシュシェクル、メジロブライトなど個性的な馬が勝ったレースで、競馬のオールドファンにはたまらないレースともいえます。
この原稿を書いている私自身も、1998年のエリモダンディーの大外一気の末脚は今でも忘れられず、目に焼き付いています。
近年は2019年のグローリーヴェイズ、2017年のミッキーロケットと、このレースの勝利をきっかけにして、後にG1レースを勝利する馬が出ているように、出世レースともなっています。
そのような日経新春杯ですから、今年も個性豊かでこのレースをきっかけに大きく飛躍を目指す馬が揃いました。その中でも338kgというJRA最少体重優勝記録を持ち、昨年の菊花賞で5着と好走した4歳牝馬・メロディーレーンには大きな注目と期待が集まりました。
レース概況
ゲートが開くと、エーティーラッセンが積極的に先手を奪いペースを握ります。
ロードヴァンドール、レッドレオンがエーティーラッセンに続き、1番人気のレッドジェニアルはスタートが合わず後方2番手に位置取り、注目のメロディーレーンは最後方からレースを進めます。
スムーズに先手を奪ったエーティーラッセンですが、第1コーナーで一気にペースダウン。個別ラップを12秒台後半まで落とし、前半1000mのラップは61.6。
スローペースの前残りの展開を作ります。
その後もレースは淡々と流れ、直線へ。
道中で息をしっかりと入れることができたエーティーラッセンが逃げ切りをはかります。
その外からロードヴァンドール、プリンスオブペスカ、アフリカンゴールドがエーティーラッセンを捕まえに仕掛け始めました。
さらにその外では、モズベッロが鋭く伸びます。
残り200m。
エーティーラッセンが粘りますが、鋭く伸びたモズベッロが力強く交わして先頭へ。
その後は1馬身、2馬身と差を広げてセーフティーリードを確保します。
最後は2着レッドレオンに2馬身1/2差をつけ、快勝。
以降は、直線で進路取りに手間取ったレッドレオンが、残り200mで鋭く伸びて2着で入線。
3着は、最後までしぶとく粘ったエーティーラッセンが確保します。
人気を集めたレッドジェニアルは、出遅れとスローペースの展開が響き7着。
同じく後方からレースを進めたメロディーレーンも、9着と展開に泣きました。
各馬短評(血統的観点をふまえて)
1着 モズベッロ(2番人気)
母ハーランズルビーは米国のダート8.5ハロンのG1アルシバイアディーズステークス2着がある実績馬で、その父はストームキャット系のHarlan's Holiday。父はディープインパクトの後継種牡馬であるディープブリランテです。
このディープブリランテは距離短縮を得意とする種牡馬で、今回のモズベッロにおいても、前走のグレイトフルステークスから100mの短縮。100mではありますが、この距離短縮が血統的にはプラスに働いた印象です。
また3歳の夏を越えてメキメキと力をつけており、ここにきての成長力は著しいものがあります。また前走から斤量が2kg軽くなり、スタート後に即座に好位につけスローペースの展開の利を得たことも、勝因として働きました。
2着に2馬身1/2差をつけた点は「快勝」と呼べますし、今後のさらなる成長も見込めるため、引き続き重賞戦線での活躍が期待できます。
次戦の走りが、試金石といえそうです。
2着 レッドレオン(5番人気)
父ディープインパクト×母父Smart Strikeの配合は、桜花賞2着のレッドオーヴァルと同じ配合です。ディープインパクト産駒らしいキレ味というよりは、機動力を活かして前々でレースを進め、早め先頭でゴールまで粘り込む形が、この馬の好走パターン。
その点で考えれば、今回直線で進路確保に手間取り、残り200mしか末脚を活かせなかった点は厳しい競馬となりました。それでも2着を確保しているわけですから、勝馬同様に評価すべき一頭かと思います。
次走以降、スムーズな競馬ができた時に重賞戦線でどこまで力が通用するか、楽しみな走りとなりました。
3着 エーティーラッセン(11番人気)
父は、サマーバード。
サマーバード産駒にはエーティーラッセンの他に、メイショウエイコウやサノサマーがいます。安定して成績を残すというよりは、展開がハマれば穴を空ける馬が多い点が特徴的な血統です。
今回は斤量51kgという軽斤量とスローペースの展開の利が働いての3着と考えるのが妥当でしょう。この成績を受けて、次走以降で人気を集めるようであれば少し嫌いたいですが、今後も展開がハマった際の激走は十分に考えられるため、常にマークをしておきたい馬です。
7着 レッドジェニアル(1番人気)
日経新春杯で好走が目立つキングカメハメハ産駒ということで、血統的視点からも人気を集めた馬でしたが、結果は7着。
前半61.6のスローペースで出遅れて、直線最後方ではさすがに厳しいです。上り3Fはモズベッロと同じ34.5とメンバー中最速ですから、今回は度外視していいレースと考えます。
9着 メロディーレーン(6番人気)
レッドジェニアル同様にスタートが合わず、道中は離れた最後方からレースを進め、上り3F34.9とメンバー中3位の末脚を使いながら9着。終いを活かす競馬がこの馬の脚質ですが、さすがに後ろから行き過ぎた印象です。斤量49kgで最内枠と好走が期待できる条件だっただけに、少しもったいない競馬だったように感じます。
オルフェーヴル産駒だけに、古馬になってからの成長は期待できますので、今後の巻き返しに期待です。
総評
今年の日経新春杯は展開や斤量がハマったとはいえ、勝ったモズベッロの強さが際立ったレースでした。2着のレッドレオンも直線スムーズさを欠きながら、2着を確保と強さをみせています。
この2頭については、今後も重賞戦線での活躍が期待できそうです。
人気を集めたレッドジェニアル、注目を集めたメロディーレーンについても、展開が向かず力負けではありません。
こちらも、次走以降のレースに注目したいところです。
写真:かぼす