
父ハーツクライ、母ベネンシアドール。ラーゴブルーは紛れもない「良血馬」だ。
半姉はオークス3着で、ジャパンCと宝塚記念で2着に入ったデニムアンドルビー。1つ下の弟にはクラシック候補に挙がったキタノコマンドールがいる。活躍が約束された血統。そう言っても過言ではないだろう。
ラーゴブルーが生を受けたとき、姉のデニムアンドルビーは3歳シーズンを戦い終えてGII・2勝に加えてオークス3着という成績を残していた。姉とは3/4同血の間柄。よく似た配合のラーゴブルーに大きな期待がかかっていたことは言うまでもない。
2017年1月7日、京都競馬場で行われた3歳新馬戦でデビュー。血統背景が買われて3番人気の支持を集めたのだが、結果は9着に大敗した。そして翌月の未勝利戦でもソコソコ人気したが、12着と全く振るわず休養に入る。
5月末に復帰し、初のダート戦を試すも結果は最下位。その後、芝に戻ると成績は上向きはじめ7月の札幌戦は5着。続く8月のレースでは3着と、勝ち上がりまであと一歩のところまで着順を上げる。だが、最後の未勝利戦で2着惜敗。JRAで勝ち上がりが叶わず、新たな舞台を求めて川崎競馬に移籍した。

新天地で見せた可能性
当然ながら川崎競馬を始めとした南関東競馬ではダートの競走しか行われていない。姉は芝路線の一流馬。加えて一度だけ走ったダート戦で最下位に負けていたラーゴブルーにとっては厳しい戦いになるかに思えた。だが、移籍初戦は2番手から軽々抜け出し快勝。その後も「水を得た魚」のように勝ち星を重ね、2018年4月に行われたしらさぎ賞で重賞初制覇を飾った。名血は意外な形で花開いた──というわけではなく、血統に裏付けされた確かなダート適性と自身の成長が上手く噛み合った結果といえるのだ。
実は姉のデニムアンドルビーも生涯で一度だけダートに挑戦している。芝のGIで好勝負を演じるような馬がなぜ?と思うかもしれないが、ラーゴブルーやデニムアンドルビーの叔母はエリザベス女王杯の覇者にして、フェブラリーSやドバイWCで好走したトゥザヴィクトリー。さらには南関ダートで活躍したサイレントディールやビーポジティブも近親にあたる。
また、しらさぎ賞のレース後に内田勝義師が「成長がゆっくりの馬だから」と述べていたように、姉や弟よりもキッカケを掴むのが遅かったらしい。血統と成長力。2つが上手く合わさったラーゴブルーはその後も南関牝馬路線を邁進。12月には古馬の大目標である東京シンデレラマイルを制して重賞2勝目を挙げた。次なる目標はグレードタイトル──。マリーンCに照準を合わせた。

チャンスを掴んだマリーンC
2019年のマリーンCはJRAから4頭が出走する予定だったが、枠順確定後にゴールドクイーンが回避。そしてレース発走直前に1番人気のオウケンビリーヴ除外のアクシデント。これでJRA勢は僅か2頭。グレードタイトル奪取に向けてこれ以上ないチャンスでもあったが、何より、南関東では現役最強の牝馬として負けるわけにはいかなかった。
とはいえ、JRAの2頭はなかなか手強かった。アイアンテーラーは前年のクイーン賞覇者。もう1頭のリエノテソーロは全日本2歳優駿を制し、前年のスパーキングレディーCを勝利した実力馬とあって、決して楽に勝てる相手ではない。
レースはアイアンテーラーが先手を取り、リエノテソーロが外の2番手。ラーゴブルーが内の3番手を固め、終始3頭が一団で運ぶ展開になった。向正面でペースアップすると3頭が後続を引き離していき、直線は3頭が横に広がって激しい叩き合いに。ムチを入れ必死に粘るアイアンテーラー、外にヨレながら目いっぱいに追うリエノテソーロ。そして、2頭の間を割って真一文字に伸びたのがラーゴブルーだった。結果は1馬身半をつける完勝。JRAでは勝ち星を挙げられなかった良血馬が花開いた瞬間だった。
その後はGI級タイトルを求め、同年秋には浦和のJBCレディスクラシックに挑んだが結果は4着。期待されつつもGIに手が届かなかった姉や弟の無念を晴らすことは出来なかった。それでも地方馬最先着を果たし、南関東の最強牝馬として堂々の内容を披露。このレースを最後に引退し、グレードタイトルを引っ提げて繁殖入り。現在は“良血”を後世に伝えるべく、新たなステージに入っている。

写真:みき
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