安田記念ってどんなレース?

安田記念の「安田」は、明治・大正・昭和にわたって競馬に携わり競馬法制定や東京優駿(日本ダービー)の創設などに尽力、日本中央競馬会の初代理事長も務めた安田伊左衛門氏に由来します。
1951年に「安田賞」の名称で創設され、1958年5月に安田伊左衛門氏が死去してた年の第8回からは名称を「安田記念」としています。

創設当初は東京競馬場の芝1600mで3歳以上の馬によるハンデキャップ競走として施行されました。
1984年のグレード制導入にG1レースとして格付け。施行時期もオークスの前に移り、4歳以上の馬による定量戦に変更しました。その後、1996年からは日本ダービーの翌週に移設の上、3歳馬の出走も出走が可能となりました。

安田記念を制した馬達

JRAにおける上半期のマイル(1600m)王決定戦の安田記念。
過去にはニホンピロウイナー(1985年)、オグリキャップ(1990年)、タイキシャトル(1998年)、ダイワメジャー(2007年)、モーリス(2015年)といった歴史的名馬が優勝したレースでもあります。

1984年のG1昇格後、安田記念を連覇した馬には、ニホンピロウイナーの子供であるヤマニンゼファー(1992・1993年)とG1レース7勝を挙げたウォッカ(2008年・2009年)がいます。

今年の主な出走馬

アーモンドアイ(牝5 美浦・国枝厩舎 56Kg ルメール騎手騎乗)

ヴィクトリアマイルを制し、芝G1レース7勝目を挙げたアーモンドアイ。
ここで勝てば、シンボリルドルフ・テイエムオペラオー・キタサンブラックらを抜き、JRA史上最多となる芝G1レース8勝目となります。

父のロードカナロアは芝1200mのG1レースを5勝している短距離馬でしたが、2013年には安田記念を制しています。種牡馬としてもアーモンドアイの他、サートゥルナーリア(皐月賞)を出すなど活躍馬を輩出。
母のフサイチパンドラは2006年のエリザベス女王杯を制しております。

初めての中2週の競馬がどう出るかが、今回の大きなポイントとなります。
いつも一生懸命走るアーモンドアイにとってレース後のダメージが少なくないそうで、これまでは桜花賞からオークス、秋華賞からジャパンカップといった「中6週」が最も短い間隔でした。

それにも関わらず出走していく辺りを見ると、前走のヴィクトリアマイル後のダメージがそれほどなかったということなあのでしょう。事実、ヴィクトリアマイルを振り返ると、直線半ばで持ったまま先頭に立つ堂々たる競馬。ゴール前にはルメール騎手が後ろを振り返る余裕がありました。それでいて、ラスト600mのタイムが32.9秒とメンバーで最速でした(2番目に速かったのはノームコアら3頭の33.2秒)。

昨年はスタート後、他馬に寄られる不利がありました。
それでも勝ったインディチャンプとはタイム差なしの3着。
不利が無ければ、芝G1レース8勝目という快挙を達成する可能性は高いでしょう。

インディチャンプ(牡5 栗東・音無厩舎 58Kg 福永騎手騎乗)

昨年の安田記念、マイルチャンピオンシップを制し、最優秀短距離馬に輝いたインディチャンプ。安田記念史上3頭目となる連覇が掛かっています。

父のステイゴールドは現役時代、主に中長距離で活躍しました。種牡馬になってからはオルフェーヴル(牡馬三冠などG1レース6勝)など中長距離で活躍する馬を輩出します。
インディチャンプの持っているスピードは母のウィルパワーに起因しているのかもしれません。
母方の祖母トキオリアリティーは2011年の安田記念を制し、種牡馬としてもラウダシオン(NHKマイルカップ)を送り出したリアルインパクトや、オーシャンステークス(芝1200m)を制したアイルラヴァゲインなどの母で知られています。また、インディチャンプの半妹(父はジャスタウェイ)であるアウィルアウェイは、今年のシルクロードステークス(芝1200m)を制しました。

万全の態勢で臨むインディチャンプにとって気になる点をあげるとすれば、早めに抜け出すとソラを使う(よそ見をして気を抜く)点です。ソラを使う馬が再び闘志に火をつけるのには時間が掛かり、その分、アーモンドアイらの追い込み馬に差されてしまう可能性は、ないとは言い切れません。
しかし、この馬をよく知っている福永祐一騎手がギリギリまで追い出しに我慢を掛けてくると思います。

福永騎手は、先週の日本ダービーをコントレイルとのコンビで制覇。勢いに乗っています。安田記念も2012年と昨年と2勝しているなど、相性の良いレースです。
アーモンドアイの偉業達成に立ちはだかる馬となる可能性は十分です。

グランアレグリア(牝4 美浦・藤沢和厩舎 56Kg 池添騎手騎乗)

昨年の桜花賞馬・グランアレグリア。
昨年秋以降は短距離路線にシフトを置き、阪神カップを優勝。さらに前走の高松宮記念では2着となりました。

父のディープインパクトはG1レースを6勝。種牡馬としても、前記のリアルインパクト(2011年)、サトノアラジン(2017年)といった安田記念を制した馬を送り出しています。母のタピッツフライはアメリカのG1レース・ジャストアゲームステークス(芝約1600m)などG1レースを2勝。タピッツフライの父であるタピットの産駒としては珍しく、芝のレースで高い適性を発揮した馬でした。

前走の高松宮記念を振り返ると、上位に入った4頭のうち、先行していた馬が3頭という成績。その中で、4コーナー12番手のグランアレグリアは唯一、直線一気のレースを披露した馬でした。
ラスト600mのタイムが33.1秒と、メンバーで最速タイのタイムを叩き出したもの。

一方で、桜花賞では4コーナーで先頭に立つ競馬で優勝するなど、自在性のある脚質を持っています。年上の桜花賞馬・アーモンドアイとの最初の対決が楽しみです。

アドマイヤマーズ(牡4 栗東・友道厩舎 58Kg 川田騎手騎乗)

一昨年の朝日杯フューチュリティステークス、昨年のNHKマイルカップと香港マイルを制したアドマイヤマーズ。今回はG1レース4勝目を目指し出走します。

父のダイワメジャーは2007年の安田記念などG1レースで5勝をあげました。
種牡馬としても、昨年の阪神ジュベナイルフィリーズを制したレシステンシアなど、短距離で活躍馬を送り出しています。母のヴィアメディチはフランスのG3レースであるリューリー賞(芝1600m)を制しました。母の父メディシアンもイギリスのG1レース・ロッキンジステークス(芝約1600m)を制し、子供達もヨーロッパの短距離G1レースを制しました。

アドマイヤマーズもドバイターフが直前で中止となった影響を受けた1頭で、今回は仕切り直しの一戦となります。
芝1600m戦では7戦6勝と、デビューから非常に安定した実績を残しています。
特に、前走の香港マイルは3歳馬としては初の制覇。負かした相手は、香港のマイル路線でトップホースのビューティージェネレーションやインディチャンプといったトップホース達です。得意の芝1600mで、香港での激走を再び披露できるのでしょうか。

ダノンキングリー(牡4 美浦・萩原厩舎 58Kg 戸崎騎手騎乗)

G1ウィナーが10頭揃った今回のレースで、G1未勝利のダノンキングリーは、一見すると格が落ちるかもしれません。しかしその実力を見れば、いつG1レースを取ってもおかしくない存在です。昨年の日本ダービーは僅差の2着、昨年の皐月賞・今年の大阪杯は3着と、G1レースでの好走経験のある馬です。

父はディープインパクト。母のマイグッドネスはアメリカで1勝をあげました。母方の祖母であるカレシングはアメリカのG1レース・ブリーダーズカップジュヴェナイルフィリーズ(ダート約1700m)を制している名牝です。
父ディープインパクト、母の父ストームキャットの配合からは前記のサトノアラジンをはじめ、キズナ(日本ダービー)、リアルスティール(ドバイターフ)など多数のG1ホースを出すなど、相性の良い配合として知られています。

ダノンキングリーにとって、舞台が東京競馬場に替わったのは大きなプラスとなるでしょう。
東京競馬場は、これまで4戦3勝・2着1回と連対率が100%の舞台です。特に、昨年の毎日王冠(G2・芝1800m)ではハンデ差が4Kgあったものの、インディチャンプを負かしています。
昨年11月の落馬事故から復活した戸崎圭太騎手との「コンビ復活」も楽しみです。

ダノンプレミアム(牡5 栗東・中内田厩舎 58Kg レーン騎手騎乗)

一昨年の朝日杯フューチュリティステークスを制し、昨年の天皇賞・秋とマイルチャンピオンシップで2着に入ったダノンプレミアム。こちらはG1レース2勝目を狙いに出走します。

父はディープインパクト。母のインディアナギャルはアイルランドのG3レース・リッジウッドパールステークス(芝約1600m)を2着に入りました。母の父インティカブはイギリスのG2レース・クイーンアンステークスを制し、その年の国際クラシフィケイション(現在のワールド・サラブレッド・ランキング)では130ポンドという評価に。アメリカの名馬オーサムアゲインと並び、高い評価を得ました。
前走のクイーンエリザベスステークス(オーストラリアG1)は3着に敗れましたが、59Kgのハンデと馬場が不良馬場と、この馬には合わなかった馬場でした。昨年の安田記念はアーモンドアイと同様に、スタートで隣の馬に寄られ、騎乗した川田騎手が2度ほど尻もちをつくような形となり、最後は追わずに最下位の16着でゴール。残念な結果とはなりましたが、ポテンシャルからいけば、G1レース2勝目も見えてくる逸材です。

その他では昨年のヴィクトリアマイルを制し、今年も3着だったノームコア(牝5 美浦・萩原厩舎 56Kg 横山典騎手騎乗)、昨年の高松宮記念を制したミスターメロディ(牡5 栗東・藤原英厩舎 58Kg 北村友騎手騎乗)、2017年のマイルチャンピオンシップを制したペルシアンナイト(牡6 栗東・池江厩舎 58Kg 田辺騎手騎乗)が出走します。

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