[ホープフルS]G1レース直前プレビュー

今年の中央競馬も、本日の開催日を残すのみとなりました。クリスマスに行われた有馬記念は堅い決着で終わりましたが、今回のホープフルSは難解で波乱も期待できるレースです。今年も競馬界はいろいろありましたが、JRA最後のG1であるホープフルSを的中させて『終わり良ければ全て良し』といきたい方も多いことでしょう。

それでは、今年のホープフルSについて、ご紹介していきましょう。

今年のホープフルSは大混戦?

まず、今年のホープフルSのメンバーを見ていきましょう。G1だけに実力馬は多数揃いましたが、16年のレイデオロ、18年のサートゥルナーリア、19年のコントレイルのように明らかに実力が一枚上の1番人気馬となるような存在はいません。また、重賞に格上げされた2014年以降において、勝ち馬は全て3番人気までの馬が並んでいますが、2,3着には8,9番人気の馬が入った年もあります。今年も人気の盲点になっている馬が2、3着に入る可能性は大いにあると言えるでしょう。

それでは有力馬たちが出走した前哨戦を振り返ります。

東京スポーツ杯2歳S 回顧

勝ち馬ガストリック、4着ドゥラエレーデ、5着フェイトが出走します。

前半1000M通過が58秒9と、一見すると速い数字です。先行馬が競り合いをしていたレース序盤にペースが流れていたのもあるでしょうが、当日はかなりの高速馬場だったので、ペースとしては平均くらいと見て良いでしょう。レースの中盤でペースが緩んで息が入った形になり、残り600Mからレースの上り3ハロン34秒9の切れ比べ。上位3頭の上り3ハロンは34秒0、34秒0、33秒8と速い上りは必要でしたが、瞬発力だけでは勝ち切れず、道中の位置取りや立ち回りといった器用さも求められたレースと言えます。

勝ったガストリックは道中は中団の内ラチ沿いを進んで、直線では早めに抜け出したドゥラエレーデのすぐ外の馬場の真ん中に出してからよく伸びました。外から伸びてきた2着馬と馬体を併せての競り合いになりましたが、2着馬より内を通っていた分、勝ち切れました。立ち回りの巧さや器用さをいかしての勝利と言えます。

今回は、距離延長になる2000Mでどうか、というところでしょう。器用な立ち回りの出来る馬ですが、能力の違いで問答無用に押し切れるほどの差があるわけではないはずなので、ライバルたちにもチャンスはあるでしょう。

特に、3着のハーツコンチェルトはスタートで出遅れ。道中も後方からの競馬で直線では一番外から追い込んできました。上り3ハロン33秒8を使ってゴール前で際どく迫りましたが勝ち馬から0秒2差の3着となりました。競馬ぶりは大物感たっぷりで、このレースで勝ち切ればそれこそイクイノックスやコントレイル級かと思えるほどでした。レースでは一番強い競馬をした1頭ですが、スタートや道中での運びを含めて不器用な面が見受けられます。ホープフルSでもスタートが鍵になりますし、中山コースに対応できるかどうかが鍵と言えます。もしその能力を全て出し切れば、後方からまとめて差し切ってもおかしくない馬です。

4着のドゥラエレーデは早めに抜け出したものの直線で切れる脚が使えませんでした。レース後のコメントでは『最後は馬が疲れてしまった』というムーア騎手のコメントもあったので、1800Mが長かった可能性もあります。直線の短いコースは向いていそうですが、2000Mでスタミナを求められるとどうか、というところでしょうか。

5着のフェイトは『脚がないわけではないんだけど、まだそれを使えていない感じだね』という福永騎手のコメントからも、まだ馬が成長段階で能力を出し切れていないと判断すべきかもしれません。4着馬からも2馬身弱は離されていますし、今後の成長に期待したい1頭です。

京都2歳S 回顧

勝ち馬グリューネグリーン、2着馬トップナイフ、3着馬ヴェルテンヴェルクが出走します。

逃げたビキニボーイと2番手のグリューネグリーンスタート後から競り合うように3番手以降を離して先行。向正面でペースを緩めたので、結果的に前半1000M通過が1分00秒4という平均ペースとなりました。そこで後続が追いついて残り600Mからの切れ比べ。この週からBコースに替わったのでタイム的にはやや遅いタイムの決着ではありましたが、2番手で進んで持続力を生かして押し切ったグリューネグリーンの持続力が光ったレースとなりました。その一方で差し馬には不利を受けた馬もいて、展開面が鍵を握ったといえるレースです。

勝ったグリューネグリーンは、前半でやや後続を離して進み、レースの中盤で息を入れる競馬。残り600Mから11秒7-11秒8という切れを見せ、押し切りました。このレースでは立ち回りの巧さが光りましたし、直線短いコースが合う先行馬と考えるべきでしょうから、中山芝2000Mは合うはずです。他馬との力関係では、新馬戦で今回人気になっているミッキーカプチーノに0秒3差で敗れていますが、新馬戦のレース後には『ペースが遅くて力んでしまった』というコメントがあったので、ある程度ペースが流れる方が向くのは間違いありません。コース適性は高いはずで、あとは根本的な能力がどのくらいあるか、京都2歳Sからどのくらい成長しているか、という点を気にしたいところです。

2着のトップナイフは道中6番手辺りを進んでいましたが、4コーナーで逃げて失速したビキニボーイに前をカットされて不利を受けてしまいました。そこから立て直してアタマ差の2着までという結果だけに、不利がなければ…というレースでした。もともと札幌の未勝利戦(芝2000M)では時計のかかる馬場ながらも好タイム勝ち。1勝クラスの出世レースの萩Sも勝っているので地力は高い馬です。今の時計のかかる中山の馬場では、人気以上に力を出せる馬と言えるでしょう。

3着のヴェルテンベルクは2着のトップナイフが不利を受けて体勢を崩した流れで不利を受けてしまいました。そこからしぶとく脚を使って3着に浮上しているので、こちらも不利が痛かった馬といえます。このレースでは11番人気でしたが、不利を受けての好走ですので、決してフロックではないでしょう。3戦して3着以下の無い馬ですし、今回は横山武騎手を鞍上に迎えていますから、雰囲気のある存在と言えます。

今年は1勝クラス勝ちの馬にも注目?

今年のホープフルSは大混戦の様相ですが、その要因として1勝クラス勝ちの馬が強い勝ちっぷりをしていることも挙げられます。上位人気に推されている馬もいますのでそのレースも振り返っていきます。

葉牡丹賞 回顧 12月3日中山芝2000M、1勝クラス

勝ち馬のミッキーカプチーノが出走します。

ホープフルSと同じ中山芝2000Mで行われたレースです。前半1000Mが1分00秒0、後半1000Mが59秒1というペースで前半が平均ペースぐらいで進んだにも関わらず、中間の1000M地点からペースアップする持続力勝負となりました。先行した馬には厳しい流れになり、その中でも長くいい脚を使うことが求められたレースでしたが、コースロスなく抜けてきたミッキーカプチーノが2着に3馬身半差をつける完勝を見せました。

この葉牡丹賞が行われた週は、12月の中山開催の開催初日で速い時計が出る馬場でしたが、勝ちタイムの1分59秒1は歴代の葉牡丹賞の中でも最速のタイム。しかもゴール前は流していたというのですから、能力は相当です。ホープフルSでも同じだけ走れば勝ち負けでしょう。気になる点とすれば、葉牡丹賞は非常にスムーズに馬群の間をロスなく回れたのに対し、ホープフルSでは大外の18番枠となった点。ここをどう立ち回るか? というところに注目です。また、葉牡丹賞の時よりも馬場が悪くなって時計がかかるようになっているのは間違いないので、葉牡丹賞と同様に走れるかも鍵になるでしょう。

野路菊S 回顧 9月24日中京芝2000M、OPクラス

勝ち馬のファントムシーフが出走します。

前半1000M通過が1分01秒4のスロー。そこからもペースが上がらず、残り600Mからの瞬発力勝負となりました。その中で上り3ハロン最速の33秒5という切れる脚を見せて快勝したファントムシーフ。同レースには後に京都2歳Sで2着となるトップナイフがいました。

ただ、同レースは7頭立てと少頭数。ホープフルSは18頭立てですし、前半からペースが流れる展開は経験していないので力を出し切れない可能性もあるでしょう。また、『キックバックを気にする』というコメントが同レース後に出ていたので多頭数はやはり不安と言えます。能力の高さは感じますが、1番枠で力を出し切れるかどうか、というところでしょう。

黄菊賞 回顧 11月13日阪神芝2000M、1勝クラス

勝ち馬のセブンマジシャンが出走します。

この日はレース前まで降り続いた雨の影響で重馬場となり、かなり時計のかかる馬場状態でした。前半1000M通過が1分04秒0。馬場状態を踏まえても、非常に遅い流れとなりました。そこからもペースが上がらず残り600Mからの切れ比べに。

そんな馬場、展開の中で9頭立ての少頭数ながらも後方から大外を回し、直線で一番外から差し切ったセブンマジシャンの勝ちっぷりは鮮やかでした。叔母にクロノジェネシスがいるという血統だったので時計のかかる馬場が向いたのもあるでしょう。

初戦は2番手から抜け出して勝っていて、このレースでは全く違う形で勝っているので、まだ能力の底を見せていないとも言えます。ただ、今回初めて強敵と戦うことになるので、G1クラスのメンバーに混じっての力関係がどうか、というところが問われます。

百日草特別 回顧 11月6日東京芝2000M、1勝クラス

勝ち馬のキングズレインが出走します。

前半1000M通過が1分01秒7とスロー。そこから残り800Mでペースが上がっての切れ比べというレースになりました。

キングズレインは道中4,5番手の内目を追走し、直線で少し外に出して抜け出し、そのまま押し切って勝利。9頭立てだったとはいえ、道中内目を進んで直線で抜け出すセンスの良さと切れる脚は、ここでは一枚上でした。

騎乗したルメール騎手も『距離は2000M以上がいい。まだ伸びしろがあるからOPでも大丈夫』と太鼓判。有馬記念で見事な手綱捌きを改めて見せつけたルメール騎手とのコンビという点でも注目です。


各馬の紹介だけでも長くなってしまいましたが、それだけ実力のある馬が揃い、どの馬でも馬券圏内に入る可能性がある大混戦のレースなのは間違いありません。展開は2歳馬だけに読み切れませんが、馬場はやや外を回す差し馬の方が有利になってきているかもしれません。

有馬記念が結果的には堅く収まってしまってちょっと寂しく思う方にとって、今回のホープフルSは大波乱になる可能性十分な楽しいレースとなるかもしれません。

どの馬にもチャンスがあると言えますし、一発大逆転の夢を託すのに相応しいレースと言えるでしょう。そんなレースを当てて、いろいろあった1年の締めくくりにしたいですね。この記事がその参考になれば幸いです。

写真:shin 1

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