改修が終わった京都競馬場
最初の重賞は安田記念トライアル
今週から開催が替わって、関西圏は京都開催になります。
約2年5か月の改修期間を経て、今週から久々の開幕を楽しみにしていた競馬ファンも多い事でしょう。その京都競馬場の改修後、最初の重賞が、安田記念のトライアルレースであるマイラーズカップです。今年もG1タイトルを狙える馬が集まって、楽しみなレースになるのは間違いありません。まずは簡単に、京都競馬場の改修について紹介していきます。
京都競馬場の主な改修ポイントは?
まずは京都競馬場のコースに改修した点の紹介です。
改修の中心はスタンドなどの設備面についてですから、京都競馬場のコースそのものが大きく変更したわけではありません。ただ、細かい点で変更した点があり、レースにも影響を及ぼすであろう点が二つあります。
- 外回りのコースの4コーナーのカーブの角度が緩くなり、コーナーを曲がりやすくなった
- 馬場の排水性を高める仕組みを一新した
一点目の『コーナーの角度が緩くなった点』は、安全性の問題として騎手からも改修の希望出ていたようでした。外回りコースは3コーナーから下り。下りで勢いがつきつつ4コーナーで急角度で曲がるコース形態だったため、内を通っていた馬が外に膨れやすくなっていました。また、外にいる馬が4コーナーで内を狙って切れ込んでインを取る動きと相まって、外に膨れる馬とインに切れ込む馬が交錯する危険性もありました。
そこで、今回の改修では4コーナーの入口である残り600Mぐらいのところから外に1Mほど角度を広げて、そのままコーナーの角度を緩やかにして、コーナーを曲がりやすくしたようです。実際、トップジョッキーも試乗したところ、非常に好評だったようです。安全に、フェアな駆け引きが行われるコースになるのではないでしょうか。
二点目の『排水性を高める工事』についてですが、京都競馬場があった場所は元々湿地帯で、排水性の悪さが指摘されていました。そこで今回の改修に伴って、馬場を全面的に排水性を高める工事を行っています。一番下の路盤に水の道になる溝を掘り、そこに排水をするための管を入れることで、事象の改善をはかりました。
また、逆に水分を適性に貯めておく機能もできたそうです。これによって京都の馬場が硬くなり、異常なまでに高速馬場になることも少なくなるだろうと言われています。レース中に馬が怪我をしてしまうことも少なくなかった印象のある京都競馬場ですが、今後はクッションが利いた良好な馬場状態が続けるための馬場・路盤に生まれ変わったと言っていいでしょう。
新しい馬場になって、レースはどのように変化するか?
京都競馬場の馬場・コースが変化したことによって、どのようにレースが変化していくのかを推測していきましょう。個人的には2つの大きな変化があると考えています。
- コーナーで速度を落とさずに回れるので全体的に走破タイムが速くなる
- 外からインに切れ込む馬が少なくなるので、馬場状態がいいなら内が有利になる
外回りコースで直線が長いコース形態であっても、3コーナーの下りからロングスパートで内々を回って距離ロスなくロングスパートを仕掛けて押し切ろうとする馬と、外から長くいい脚を使って追い込んでくる馬の比較になるのではないでしょうか。
マイラーズC 注目馬紹介
シュネルマイスター - マイルの距離なら現役トップクラスの地力。改めて力を見せつけたい。
実績面において上位なのが、シュネルマイスターです。
3歳時にはNHKマイルカップを勝ち、マイルCSでは2着と、マイル界のトップにいましたが、22年はまさかの未勝利。特に秋以降は非常に残念な結果になってしまいました。今年は巻き返しを期待したい馬の1頭でもあります。
今年初戦の中山記念では直線で不利があり4着。
不利が無くても勝ちまでは難しかったとは思いますが、2着争いはもう少し際どかったかもしれません。
今回は得意のマイルの距離に戻り、ルメール騎手を迎え、早めの栗東入りで準備万端といったところ。久々の勝利を挙げて安田記念に臨みたいところでしょう。
地力は間違いなく上位なので、力を発揮できるかどうかが鍵になるでしょうか。
ジャスティンスカイ - 3連勝の勢いそのままに重賞制覇を目指す。
出走馬で随一の勢いを感じるのが、現在3連勝中のジャスティンスカイでしょう。
2勝クラス、3勝クラス、そして前走はリステッドの洛陽Sまで、1600Mの距離で3連勝して重賞に挑みます。
洛陽Sでは5番手のインを進み、直線では少し外に出して上り3ハロン33秒9の脚を見せて勝ち切りました。道中は緩めの流れで進んだので全体的なタイムはそこまで速くはないですが、インをうまく立ち回って抜け出た勝ち方は好印象。今回のマイラーズカップでは3番枠に入ったので、同様の立ち回りができるのではないでしょうか。
初めての重賞挑戦になりますが、マイルの距離では3戦3勝と完璧な成績。
このメンバーを相手に、どんな競馬ができるか楽しみな1頭です。
ソウルラッシュ - 阪神、京都でマイラーズカップ連覇という記録を狙う。
昨年のマイラーズカップの覇者、ソウルラッシュも注目の1頭です。
3連勝で挑んだ昨年のマイラーズカップは、直線で大外から豪快に差し切る派手な勝ちっぷりで重賞初制覇。
続く安田記念では13着でしたが、昨年秋は富士Sで2着、マイルCSで4着とマイル界でトップクラスの成績を残しました。
今年はG1制覇も期待される1頭であることは確かですから、まずはマイラーズカップで結果を残し、安田記念に挑みたいところでしょう。ただ、今回は大外枠に入ってしまったのでそこがどうか、というところは気になります。
逃げ馬が飛ばして前が止まる展開になれば昨年同様の大外一気はあり得ますが、馬場状態が良好な場合には苦戦を強いられるかもしれません。それでも能力の高さは明らかですので、逆に外からの差し、追い込み馬がどのくらい伸びて来るのかを示すいい基準になるかもしれません。シュネルマイスターが本調子を出せるのか、ジャスティンスカイが重賞級か…と、ライバルには不安要素もあるので、ソウルラッシュが安定度の高さから外枠という条件を跳ね除ける可能性も十分です。
ガイアフォース - マイル戦への挑戦。路線変更が吉と出るか?
昨年のセントライト記念の勝ち馬、ガイアフォースにも注目です。
デビューが小倉の芝1800Mで、それ以降はずっと2000M以上の距離を使ってきた同馬のマイル参戦に、驚いたファンも少なくないでしょう。3歳春時にクラシック路線で結果が出なかった馬がマイル路線に切り替えて結果を出すのはよくある話ですが、4歳の、しかも1回2000M以上の距離を使ってからのマイル参戦はあまり記憶にありません。かなり思い切ったレース選択と言えるでしょう。
元々は中距離でスピードの出る馬場で速いタイムを出して勝ってきた馬です。
速い時計が出る馬場自体は歓迎のはず。マイルの距離が合うかどうかはレースが終わってみないと分かりませんが、いきなり結果を出してもおかしくはありません。
この馬の場合は「揉まれるか、揉まれないか」が、より重要な問題なので、距離そのものはあまり関係がないのかもしれません。セントライト記念では外々を回って勝ち切りましたし、菊花賞では外からプレッシャーを受け続けて凡走してしまったので、余計にその印象が強いです。
今回は7番枠で周りに先行馬もいます。
道中で揉まれてもなお自分の走りができるかどうか、がポイントになりそうです。
グラティアス - 内枠から、新コースを味方につけたい。
4コーナーの角度が緩くなったことから『内枠が有利になるのではないか』と推測が可能な新京都競馬場。
左右の回りは違いますが、3~4コーナーで下りながら曲がっていく中京コースでは、同じようにコーナーを緩くする、A→Bコースの柵の移動で内の有利性が顕著になります。高松宮記念週で、前週まで馬場が荒れていたのにBコース替わりで内が有利になった例と同じケースが、今回の京都競馬場のコース改修でもあり得ると見ています。
そうなれば内枠の馬、特に1番枠のグラティアスがその恩恵を受けるのではないでしょうか。
同馬は重賞勝ちはありませんし、近走も勝利がありません。決め手にやや欠けるタイプですが、1番枠を生かして内々をロスなく回り、ゴールまでの最短距離を通って持続的に脚を使うことができれば、地力以上に走れる可能性があるのではないでしょうか。
キングエルメス - 注目の逃げ・先行馬。このメンバーを相手に粘りを見せたい。
やはり注目は逃げ・先行馬でしょう。平坦コースである京都で、良い馬場状態での開催ともなれば、前に行く馬が有利です。展開に恵まれるとするならば、先行馬でしょう。
逃げ・先行馬は何頭かいますが、その中でも注目がキングエルメスです。
2歳時には京王杯2歳Sの勝ちがありますが、それ以降は海外遠征もあって良い結果が出ていませんでしたが、前走の睦月S(中京芝1600M)で久々の勝利を挙げています。道中2番手で進み、上り3ハロン33秒8の脚を見せての快勝。スローペースだったことで展開に恵まれましたが、今回のマイラーズカップもやや先行馬が手薄なので2,3番手の位置を取って速い上りを出すことができれば展開に恵まれて好走する可能性も十分と言えます。
コースが変わって様子見をする他陣も出てきそうな中で、積極的な人馬が好走する可能性は十分です。
新しく生まれ変わった京都競馬場でのレースはワクワクしますし、どんなレースになるのか非常に楽しみです。
コースは大きく変わっていませんが、細かい点が修正されたので、以前とは少し違った傾向にもなりそうです。スピード優先の京都らしい速い走破タイムでの決着になりそうですし、そのまま安田記念にも参考になりそうなレースになるかもしれません。他にも新しい試みがたくさんある京都開催を楽しみたいですね。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。
写真:かぼす