[デイリー杯2歳S]クラレント、タガノエスプレッソ、エアスピネル…出世レースを駆け抜けた近年の個性派を振り返る。

秋の京都開催(昨年から代替で阪神開催)で行われるデイリー杯2歳Sは、その後活躍する馬たちが多いことから、旧3歳S時代より出世レースの1つに数えられています。
2歳Sに変更になった2001年から2020年までの20年間でも4頭のG1馬を輩出していますから、当然、参戦する馬たちも将来を期待されいる馬ばかり。

今回はデイリー杯が"2歳S"表記になった21世紀から、あえて、G1勝ち馬ではなく、G1未勝利の個性派たちをご紹介いたします。(情報ならびに戦績は、2021年11月現在のものです)
G1には手が届かずとも、記憶に残る活躍をした馬、現在も挑戦を続ける馬たちが多いのも、このレースの魅力です。

クラレント 2011年

父ダンスインザダーク、母エリモピクシーの栗毛馬クラレント。半兄リディル(父アグネスタキオン)もこのレースの勝ち馬です。クラレントにとって、新馬戦を勝ち上がった2戦目での重賞チャレンジでした。

12頭立てのレースでは、クラレントとダローネガが出遅れ、外からアルベルトバローズが飛び出す形でスタート。鞍上・福永騎手のゲンテンが掛かってハナに立ち、メイショウハガクレとアルベルトバローズが続きます。クラレントは最内から中段まで位置を上げて6番手、ダローネガは最後方で末脚一気を狙う展開に。

3コーナーで外からダローネガが捲りを仕掛け、4コーナーではクラレントの外まで位置を上げます。
直線ではゲンテンとメイショウハガクレが追い比べを続ける中、外からダローネガ、最内からクラレントが末脚を繰り出し4頭の勝負になりましたが、クラレントがダローネガの末脚を半馬身差凌いでの勝利でした。

クラレントはその後3戦連続して着外に終わるのですが、NHKマイルカップでは逃げるカレンブラックヒルを後方から追いかけて3着に好走します。
3歳秋以降はマイル~2000m戦を中心に走り、コンビを組んだ富士S、東京新聞杯では末脚勝負で勝ったかと思えば、エプソムカップでは一転して2番手からの競馬で同世代のジャスタウェイを完封。
2014年夏は田辺騎手とのコンビでサマーマイルシリーズの関谷記念と京成杯AHを勝ち、7歳で引退するまで41戦走って重賞6勝の活躍を見せました。高速決着にも対応する能力がありながらも、最後の連対になった2017年京王杯スプリングカップでの道悪粘り込みもできるという、多彩な戦術を武器に戦える馬でした。

余談ですが、母エリモピクシーの産駒には非常に優秀な馬が揃っています。エリモピクシーの全姉はエリザベス女王杯勝ち馬エリモシックですが、そのエリモシックの産駒には重賞勝ち馬がいません。競走成績と繁殖成績が逆転したパターンと言えるのではないでしょうか。

エリモピクシーの名を高めたクラレント・リディルはデイリー杯2歳ステークスの兄弟覇者。半弟レッドアリオンはマイラーズカップと関屋記念、サトノルパンは気性が難しかったので距離の短い京阪杯を制覇しています。
その下の妹弟たち(レッドアヴァンセ、レッドヴェイロン、レッドオルガ)も重賞勝ちこそありませんが東京マイル重賞で馬券内に入着──。エリモピクシーの産駒9頭のうち4頭が重賞ウィナー、活躍前に亡くなったレッドベルダ、競走馬になれなかったエリモピクシー2017を除く7頭が重賞入着のオープンクラスというすさまじい繁殖成績を残しました。

クラレントは現在乗馬として活躍し、在籍しているオリンピッククラブのTwitterで障碍飛越に挑戦している様子が紹介されていました。第2の馬生でも息の長い活躍が出来るといいですね。

タガノエスプレッソ 2014年

父はディープインパクトの全兄ブラックタイド、母はタガノレヴェントンの現9歳馬タガノエスプレッソ。
デビューから初勝利まで3戦走り、4戦目での重賞挑戦がデイリー杯2歳ステークスでした。

9頭立ての少頭数で、末脚を繰り出して勝ち上がったメンバー構成の中、ダートの新馬戦を勝ち上がったレザンドゥオールがルメール騎手に促されてハナに立ちます。

2番手にプリメラアスール、3番手はアルマワイオリ、その外にタガノエスプレッソが4番手、中段ではオルフェーヴルの弟アッシュゴールド、1番人気のナヴィオンが末脚を溜めます。

4コーナーから岩田騎手が仕掛けてコーナーの出口で先頭に立つと、外からアッシュゴールドが勢いよく迫り、内からはナヴィオンが抜け出してきますが、2頭を振り切って1着でゴール、2頭よりも早めにポジションをとった分、リードを残すことが出来ました。
その後芝とダートで1勝ずつ勝利を重ねますが、重賞では弥生賞3着以外は掲示板外に敗れてしまします。

しかし、7歳春から障害レースに戦場を移すと、平地競走で培ったスピードと低空飛越を武器に中京開催の阪神ジャンプステークスを勝利。平地障害のダブル重賞制覇を達成しました。
続く阪神開催の京都ジャンプステークスでは、逃げてオジュウチョウサンを凌ぐ金星を挙げて障害重賞連勝。さらに中山大障害・中山グランドジャンプでも連続3着に好走し、JG1競争制覇まであと一歩の活躍を続けています。

おそらく今年の最大目標は年末の中山大障害、オジュウチョウサン、メイショウダッサイが立ちはだかりますが、無事完走して栄冠をつかめるか注目があつまります。まずは大目標に向け、今週末の京都ジャンプステークス(阪神開催)に出走。半兄タガノトネールは武蔵野ステークスを勝利した後、調教中の事故でこの世を去り、G1勝利は叶いませんでした。兄の願いも乗せて、大舞台への挑戦が続きます。

エアスピネル 2015年 

先日のマイルチャンピオンシップ南部杯に出走し、現在も走り続けるエアスピネル。
重賞初制覇は2015年のデイリー杯2歳Sで、現在まで重賞3勝、G1での2着3回の成績を残しています。
父はNHKマイルカップと日本ダービーを制した変則2冠馬キングカメハメハ、母は秋華賞勝馬エアメサイアの良血馬で、デビュー時よりG1戦線での活躍が期待されていた馬です。

レースでは小倉2歳Sを制して先に重賞ウィナーになっていたシュウジに1番人気を譲りましたが、新馬戦からの参戦ながら2番人気に支持されて出走します。

エアスピネルはスタートで出遅れますが、逃げるシュウジをマークするレースを選択し、中段に構えます。
2番手にノーブルマーズの黄色いシャドーロールが揺れ、3番手にクラウンドジャック、エアスピネルは道中その外4番手まで位置を上げて3コーナーへ。

インコースに入れてロスなくレースを進めたシュウジが後続を振り切って先頭に立ちますが、コーナーで外を回ったエアスピネルは最後の直線で肩ムチ一発で加速し、シュウジを差し切って3馬身半の差をつけて勝利しました。シュウジの半馬身差3着にノーブルマーズ、4着はナイトオブナイツでした。

エアスピネルはその後1番人気に推されて朝日杯フューチュリティステークスに挑みます。
3戦目でレースに慣れたのか、直線に向いて余裕の手ごたえで先頭に立ちますが、大外からリオンディーズが一気の末脚を繰り出し、3/4馬身差の2着に敗れました。リオンディーズの母はエアメサイアをオークスで差し切ったシーザリオで、武豊騎手の「そこまでお母さんに似なくていいのにね」というコメントが印象に残っています。

翌年の2016年クラシックはディープインパクト産駒が牡馬牝馬ともに強い世代で、エアスピネルは皐月賞4着、日本ダービー4着、菊花賞3着と世代上位の実力であることを示しながらも、G1タイトルには手が届きませんでした。

古馬になった4歳シーズンに京都金杯と富士ステークスを勝利し、得意のマイル戦で強い走りを見せますが、ムーア騎手が乗ったマイルチャンピオンシップでもハナ差2着に敗れます。

その後7歳で戦場をダートに移したエアスピネルは鮫島克馬騎手とのコンビでプロキオンSを2着に好走し、8歳になった今年のフェブラリーステークスでも上がり最速の脚で追い込みカフェファラオの2着に善戦、まだまだ衰えることなく走り続けています。

エアスピネルと同期の現8歳世代はまだまだ元気に走っている馬も多く、先日の京都大賞典では同期の日本ダービー馬マカヒキが復活の勝利を挙げました。
ノーブルマーズは宝塚記念3着に好走後、現在は南関東に移籍し、デイリー杯4着のナイトオブナイツやクラシックで対戦したロードクエストは盛岡競馬で芝重賞を勝利しています。

エアスピネルのG1タイトルへの挑戦はまだまだ続きます。
JBCスプリントは回避しましたが、勝利を目指して今週末の武蔵野ステークスで得意のマイル戦に挑みます。これからもひたむきに走る姿を応援し続けます。

写真:Horse Memorys

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