[POG2021-2022]目指せ日高の星! ユニオン期待の2歳馬たち

厳しい寒さが緩み、皐月賞や桜花賞トライアルと銘打たれたレースが施行され、名実ともにクラシックの季節が近づいてきました。春のクラシックシーズンの到来は、次の年のクラシック──つまり2歳戦が近づいてきたということでもあります。
クラシックの大本命というと、ノーザンファームや社台ファームといった"社台グループ"の生産馬が多く挙がってきますが、日高地方の牧場を主体としたユニオン・オーナーズも、2018年の皐月賞馬・エポカドーロや2020年のクラシックを皆勤したビターエンダーなどを送り出しています。

今回はそんな先輩たちに続く有望な若駒たちを紹介します。

出資抽選馬(2頭)

レディベル

最初に紹介するのはレディベルです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父はキズナ、母はレディインディ、その父A.P.Indyの牝馬です。
栗東・矢作厩舎に入厩予定で、一次募集で申し込みが殺到、出資抽選が行われました。
父ディープインパクト系種牡馬×母父A.P.Indy系種牡馬の組み合わせは、アルアインやグランアレグリアと共通しています。パターン的にはマイル~中距離あたりを得意とする可能性が高いですが、キズナ産駒だけに思いがけない長距離適性が現れる可能性もあります。

半兄にダートグレード重賞で活躍したリーゼントロック、半姉にカナダのリステッド競走を制したMoment of Majestyがいる血統です。さらに祖母FijiはアメリカのGI2勝馬、めいにアメリカのGIII勝ち馬Fools Goldなど、活躍馬の多い一族に属します。

血統に違わず育成の動きは良好で、すでに15-15調教をこなしており、早期入厩早期デビューが狙えます。育成を担当しているのがモズアスコットなど、多くの"矢作っ子"を送り出してきたシュウジデイファームというのも心強いところです。

プラティナマリア

次に紹介するのはプラティナマリアです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父はエピファネイア、母はプリンセスゴールド、その父サンデーサイレンスの牝馬です。
栗東・橋口厩舎入厩予定で、レディベルと同様に、一次募集で申し込み多数のため出資抽選の対象馬となりました。

父と母父の組み合わせはルヴァンスレーヴ(父シンボリクリスエス、母父ネオユニヴァース)やアルフレード(父シンボリクリスエス、母父サンデーサイレンス)、そして父エピファネイア(父シンボリクリスエス、母父スペシャルウィーク)に共通しています。サンデーサイレンスの2×3という濃いクロスからはアドマイヤドバイが出ていますし、3×3に拡大するとノットフォーマルやキョウヘイ、トラストらが活躍しています。濃いクロスが決定的なマイナスになることはなさそうです。

半兄に準OPまで出世したゴールデンヒーローがいる程度で、兄姉には目立った活躍馬がいませんが、ステイゴールド・レクレドール兄妹を筆頭に活躍馬の多い"ロイヤルサッシュ牝系"の出身だけに、一発の可能性が魅力です。
ゴールドシップ、ジャスタウェイの育成を担当した吉澤ステーブルにて調教を積んでいて、進度ではレディベルに劣りますが、見栄えのする馬体で可能性を感じます。

先行募集馬(2頭)

出資抽選馬に続いては、当歳から募集されていた先行募集馬2頭を紹介します。

スピアヘッド

先に紹介するのはスピアヘッドです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父はハービンジャー、母はチュウワプリンセス、その父スペシャルウィークの牡馬で、美浦・菊川厩舎に入厩予定です。
似たような血統構成を持つ馬には、長期欧州遠征で成果を上げたディアドラ(父ハービンジャー、母父スペシャルウィーク)がいます。

半姉は未勝利引退、半兄は1勝を挙げて以降やや苦戦気味と、兄姉の成績は目を見張るものはありません。しかし、おばに'10 北九州記念2着のスカイノダン、おじにGI3勝馬で種牡馬のジャスタウェイがいる牝系です。デインヒルの系統らしく首が太く、あまり大柄になるとノド鳴りリスクがありそうですが、バランスの良い馬体をしています。

プラティナマリアと同じ吉澤ステーブルにて育成されていますが、進度的には先の2頭に劣ります。
夏が明けてから、東京開催あたりでのお目見えになるかもしれません。

ブレスバイルーラー

2頭目は、ブレスバイルーラーです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父はルーラーシップ、母はアルーリングハート、その父ダイワメジャーの牡馬で、栗東・佐々木厩舎に入厩予定です。

本年(2021年)のクロッカスS勝ち馬のストライプが、父ルーラーシップ×母父ダイワメジャーの組み合わせを持っています。ダイワメジャーは早熟性とスピード、ボディビルダーのようなマッチョボディを伝える種牡馬ですが、ルーラーシップはキセキのようなステイヤーからディアンドルのようなスプリンターまで様々なタイプを送り出す"化ける"タイプの種牡馬です。本馬も、母父の力を借りてスピード豊かになりそうな体形をしています。

祖母アルーリングボイスが小倉2歳SとファンタジーS、三代母アル―リングアクトが小倉3歳S(当時)を勝利した重賞馬で、おばのアンヴァルはオパールSを、おじのオールザゴーはマーガレットSを制するなど、活躍馬の多い牝系に属していることからも、期待が持てます。

軽種馬育成調教センターにて育成を受けていますが、調教進度はゆったりとしたものです。
530kgに迫ろうかという雄大な馬体に、気性の悪さもある父の産駒傾向を加味して、慎重に進めていると考えられます。この馬もまた、秋~今年中のデビューを目途に調整されていくのではないでしょうか。

兄姉活躍馬(3頭)

続いては、近親に活躍馬を持つ馬たちを紹介していきましょう。

フェルンマンボ

最初にご紹介するのは、フェルンマンボです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父ヘニーヒューズ、母スズカエルマンボ、その父シンボリクリスエスの牝馬で、栗東・辻野厩舎に入厩予定です。

血統構成が似た馬としては、ダート戦線で活躍したエイシンバッケン(父ヨハネスブルグ、母父シンボリクリスエス)が挙げられます。父と母父の組み合わせからも、馬力型でダートに出そうなイメージがあります。
クラブの看板馬の一頭であるクイーンマンボの半妹に当たる馬で、おじに2005年の春の天皇賞を制したスズカマンボ、おばに2010年代初頭に短距離戦線で活躍したスプリングサンダーがいる、活発な牝系に属しています。馬力のありそうながっちりとした胸前をしていて、短いところを得意としそうな印象の馬体です。

また、調教でも動きのいいところを見せていて、15-15調教をこなせるところまで進んでいます。このままいけば、早めのデビューが想定されます。
「砂の貴婦人」と名付けられた馬が芝のGIレースを制したクラブだけに、ダート向きと決め付けるのは早計でしょう。芝さえこなせば、桜花賞のチャンスはありそうです。

ジュエルシティー

次にジュエルシティーを紹介します。

©ユニオンオーナーズクラブ

父エピファネイア、母エアラホーヤ、その父ボストンハーバーの牝馬で、栗東・松永昌博厩舎に入厩予定です。
似たような血統構成を持つ馬には、2010年兵庫ジュニアグランプリ3着馬ケイアイカイト(父シンボリクリスエス、母父A.P. Indy)や、2013年北海道3歳優駿3着馬エイシンホクトセイ(父シンボリクリスエス、母父Pulpit)などがいますが、サンプルは少ないです。

ダートグレード競走を2勝しているラプタス、中長距離重賞で4度の2着があったマジェスティハーツの半妹に当たる馬で、祖母テンザンストームの半姉にはアメリカのGI馬Capote Belleがいます。おじに当たるメイショウボンハオ・メイショウボノムは準オープンまで出世している、なかなかの牝系に属しています。

がっしりした前駆にエピファネイア・シンボリクリスエスの血を感じます。
丸みのあるトモは半兄ラプタスに似ていますが、一回り、二回りのパワーアップは欲しいところです。

軽種馬育成調教センターでの育成は息を入れつつ進めている状況で、良化にはまだ時間が必要でしょう。兄姉や近親馬のデビュー時期を考慮すると、今年中に競馬場で姿を見れれば上首尾といえます。

キングズソード

3頭目のご紹介は、キングズソードです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父シニスターミニスター、母キングスベリー、その父キングヘイローの牡馬で、栗東・寺島厩舎に入厩予定です。2019年のエーデルワイス賞を制したコーラルツッキーも、父シニスターミニスター×母父キングヘイローの組み合わせを持っていて、ダート短距離向きの組み合わせと言えます。

全兄は2017年のプロキオンSを制したキングズガード。
四代母の産駒に1991年の東京新聞杯を制したホリノウイナー、五代母の産駒に1980年の京都4歳特別を制したタカノカチドキがいて、血を遡るとアストニシメントにたどり着く、歴史ある牝系の馬です。

軽種馬育成調教センターにて育成が進められていますが、ここに来て馬体重が500kgを超えるなど、馬体の成長が見られます。成長に合わせてじっくり進めていくことが予想され、全兄も未勝利戦でのデビューだったことからも、早期でのデビューは難しいかもしれません。

ユニオン「ならでは」の馬(2頭)

次は、日高の生産牧場直結のクラブの特色を反映している馬を、2頭ご紹介します。

オンリーワンエルフ

1頭目はオンリーワンエルフです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父ワンアンドオンリー、母スウィートラブミー、その父キングズベストのセン馬で、美浦・青木厩舎に入厩予定です。

似た血統構成を持つ馬には2013年の北九州記念を制したツルマルレオン、2019年のシリウスSを制したロードゴラッソ、2015年のクイーン賞を制したディアマイダーリンがいます(3頭ともに父ハーツクライ、母父Kingmambo)。2/3がダート馬と言うところから、馬力型に出る可能性が高いでしょう。

祖母スウィートエルフがOP2着、三代母ダンシングエルフはOP馬、五代母のマイエルフは1979年の福島記念勝ちと、地道に"走る馬"を出してきた牝系に属しています。馬房や馬場で馬っ気を出して集中を欠く様子から2歳になってすぐに去勢されることになってしまいましたが、14頭しかいないワンアンドオンリー初年度産駒で、一口募集されているのはこの馬だけです。こうしたロマンに賭けられるのも、一口出資の醍醐味です。

賀張共同育成センターにて育成が進められていますが、去勢手術後はいったんペースが緩められ、再立ち上げの途上です。しかし、写真を見てわかるように毛艶が良く、体調は良さそうです。また、早期去勢は効果が大きく、育成ペースも早まるでしょう。上手く早期デビューにこぎつけてほしいところです。

ミスルーマー

もう1頭はミスルーマーです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父Distorted Humor、母フォースデラネイチャー、その父Scat Daddyの牝馬で、栗東・宮厩舎に入厩予定です。受胎した状態で輸入されて国内で出産した、いわゆる「持ち込み馬」です。
似たような血統構成を持つ馬には、父と母父をひっくり返した形ですが、2016年のフェブラリーSを制したモーニン(父ヘニーヒューズ、母父Distorted Humor)がいます。

母のフォースデラネイチャーはアメリカのGIIIで3着の実績を持っている活躍馬。さらに四代母Wislaは、アメリカのリステッド競走を制しています。寸詰まりの胴で距離は短めに出そうですが、アメリカ産馬らしい馬力と豊かなスピードを秘めていそうです。

現在は軽種馬育成調教センターで育成が進められています。成長を確かめながらの育成という状況ですが、「動きがいい」という評判も漏れ聞こえています。順調なら秋~冬に競馬場にお目見え出来そうな印象です。

評判馬(2頭)

最後に評判が良く、クラシック戦線に向かえそうな2頭を紹介します。

カンパニュール

最初のご紹介は、カンパニュールです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父ハーツクライ、母シスタリーラヴ、その父Bellamy Roadの牝馬で、栗東・吉岡厩舎に入厩予定です。
似たような血統構成を持つ馬には、OP馬のプリンスオブペスカ(父ハーツクライ、母父チーフベアハート)がいます。

母シスタリーラヴはカナダ古牝馬チャンピオンで、半兄には先日すみれSを完勝したディープモンスターがいる、母の代から急速に力をつけた牝系と言えます。ボリュームある前駆にトモのボリュームアップが追い付いてきたら迫力ある馬体に成長しそうです。

軽種馬育成調教センターにて育成が進められていますが、15-15にも対応しているようで、動きが良いことも伝えられています。ひと頓挫あったため再度の立ち上げになるでしょうが、兄と変わらない時期に競馬場に登場するのではないでしょうか。

タイクーン

最後の1頭は、タイクーンです。

©ユニオンオーナーズクラブ

父ドゥラメンテ、母ビューティーコンテスト、その父Singspielの牡馬で、栗東・本田厩舎に入厩予定です。
似たような血統構成を持つ馬には、地方重賞馬のサラーブ(父ルーラーシップ、母父Singspiel)がいます。

半兄は2017年のポートアイランドSを制したムーンクレスト。祖母のBeldarianは、アイルランドのリステッド競走2着の実績があり、おじにアメリカのGIIIで2度の3着があるMacduff、おばにオーストラリアのクイーンズランドダービーを制したDarianaがいるなど、断続的に活躍馬の出ている牝系に属しています。

馬体のボリューム感はカンパニュールに劣りますが、脚長で均整の取れた馬体からクラシックへの期待が高まります。現在は軽種馬育成調教センターにて育成が進んでいて、500kgを超える馬体を維持しながら15-15調教もしっかりとこなしています。早期デビューに向けて、視界は良好です。

終わりに

ここまで、計11頭の若駒を紹介してきました。
ユニオンの2020募集馬は43頭いて、全頭を網羅することは難しく、ごく一部の紹介にとどまってしましました。ここで紹介されなかったから活躍できないのか、といえばそうではありません。43頭すべてが活躍を期待され、夢を乗せて走ります。

ユニオン・オーナーズの募集馬たちはクラシック向きではない馬たちが多いように思いますが、丈夫に、元気に走り続けてくれる馬が多く「会える機会が多いこと」が励みになります。
現4歳世代の2018募集馬は2021年3月現在、8頭が中央で勝ち上がり、2頭が地方から復帰してくれました。
2019募集の3歳世代もサバイバルの様相です。2020募集世代が1頭でも多く勝ち上がり、会員の皆さんの元気な姿を見せてくれることを祈っています。

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