[重賞回顧]父が届かなかった「盾」獲りへ~2021年・阪神大賞典~

1953年から続く伝統の長距離重賞・阪神大賞典は、今年で69回目。
1987年に春に移設して以来、天皇賞(春)の主要な前哨戦に位置付けられている。古くは、タマモクロスやメジロマックイーン、スペシャルウィークなどが、近年はディープインパクト・ゴールドシップ・レインボーラインたちが、このレースを制したのちに、天皇賞(春)制覇を果たしている。

毎年少頭数で行われることが多いこのレース。
だが今年は、2011年以来の水準となる13頭立て。さらに、GI馬の参戦はなかった。
単勝1.3倍の圧倒的1番人気に推されたのは、アリストテレス。
三冠馬コントレイルにクビ差まで迫った菊花賞、そして古馬相手にAJCCで重賞初制覇と、至って順調。大接戦の菊花賞のパフォーマンスから「今年の中距離路線はコントレイル、長距離路線はアリストテレス」という声も聞こえた。

続く8.7倍の2番人気は、前年の覇者であるユーキャンスマイル。
ダイヤモンドステークス制覇など、現役屈指のステイヤーである。菊花賞3着に導いた武豊騎手と、2年2か月ぶりのコンビで参戦する予定であった。ところが、武騎手が負傷のため藤岡佑介騎手に騎乗変更となった。

オッズ1桁台はこの2頭。
以下、菊花賞4着のディープボンド、前走日経新春杯で重賞初制覇となったショウリュウイクゾ、ダンスインザムードの仔であるダンスディライトなどが続く。その他、アルゼンチン共和国杯勝利のタイセイトレイル、弥生賞勝利のメイショウテンゲン、函館記念勝利のアドマイヤジャスタなども参戦した。

レース概況

各馬、揃ったスタートを見せる。
タイセイモナーク、ショウリュウイクゾ、ディープボンドなどが先行する中、11番からスタートしたツーエムアロンソがそれらを外から制してハナを奪った。それにシロニイ、タイセイモナークなどが続いてゆく。
ディープボンドやショウリュウイクゾ、アリストテレスなどが、中団に位置して9頭ほどの馬群を形成。
馬群の最後尾ダンスディライトから3馬身ほど千切れてタイセイトレイル、ユーキャンスマイルが後方待機、ナムラドノヴァンが最後方であった。

馬群は縦長となり、最初の直線コースに進入した。
最初の1000メートルは62.4秒、良馬場で行われた前年よりも速いペースで通過していく。

再びバックストレッチに向かうと、次第に馬群は三極化。
逃げるツーエムアロンソには、シロニイとタイセイモナークがついていく。
そこから3馬身千切れて、4番手のディープボンドが先頭の中団グループには8頭。そのさらに後方には、ユーキャンスマイルとナムラドノヴァンの最後方で待機していた。

第3コーナー付近で、最後方の2頭の鞍上が追い始め、それに応じて各馬が盛んに動いた。ペースが速くなる。ゴーストはここで減速し、後に競走を中止した。
追い込み勢のユーキャンスマイル、ナムラドノヴァンは外を回し、逃げるツーエムアロンソにはシロニイが取り付く。ディープボンドはその直後の3番手に位置し、アリストテレスはそれをマークする形となった。

最後の直線コースに進入すると同時に、シロニイが先頭となったが、すぐにディープボンドがかわして先頭に躍り出る。2馬身ほど後ろにいたアリストテレスはそれを追いかけまいと鞭が入ったがついていけず、ディープボンドが後続との差をどんどん広げていった。
大外から追い上げたユーキャンスマイル、ナムラドノヴァンが脚を脚を伸ばしたものの、逃げ粘る2番手のシロニイをかわしたころには、ディープボンドは独走態勢。

ディープボンドは3分7秒3というタイムで決勝線を通過した。
5馬身遅れて、追い込んだユーキャンスマイル、ナムラドノヴァンが入り、圧倒的1番人気に支持されたアリストテレスは2.2秒遅れた7着に敗退した。

各馬短評

1着 ディープボンド

好位の4番手から、追い込み馬とほぼ同じタイムの上がりを見せて突き放して圧勝、京都新聞杯に続く重賞2勝目を挙げた。
2000メートルより距離の長い競走では、いまだに掲示板を外していない。3歳時の三冠競走は、同じ前田晋二氏所有(ノースヒルズ)のコントレイルには敵わなかったが、長距離に活路を求めてタイトル獲得。
GIタイトルに大きく前進した。

和田竜二騎手は、シゲルピンクルビーに続いて2週連続重賞勝利。
重賞は昨年4勝、一昨年0勝のところ、2021年はすでに2勝を挙げている。
阪神大賞典は2000年テイエムオペラオー、2011年ナムラクレセントに次いで3勝目。2頭はともに和田騎手と天皇賞(春)に向かい、それぞれ1着、3着である。ディープボンドも本番では無視できない存在だ。

2着 ユーキャンスマイル

最後方から長いスパートをかけて追い上げ、大本命アリストテレスを早々にとらえたが、優勝馬は5馬身先にいた。藤岡佑介騎手の代打騎乗を感じさせないパフォーマンス。

良馬場の前年と比べて5秒遅いタイムだったが、上がり3ハロンは最速タイでまだまだ健在。
引き続き、フィエールマンに代わるポジションになり得る存在だろう。

3着 ナムラドノファン

13頭中9番人気ながら3着に食い込んだ。
ユーキャンスマイルと最後方で待機し、最速タイの上がりで追い込みを見せた点は、大きな収穫。

7着 アリストテレス

ゲート直後に接触があって以降、かかってしまい、圧倒的1番人気に支持されたものの敗退となった。
ルメール騎手は、敗因を馬場に求めている。前走は不良馬場を制しているが、重馬場の今回は圧倒的人気を裏切る形となってしまった。

不良馬場、重馬場と連戦して、春3戦目となる天皇賞(春)。ディープボンドが中山金杯14着から巻き返したように、本番での巻き返しに期待したい。

競走中止 ゴースト

最後の直線コースで競走を中止、心房細動と発表された。
オープンクラス昇格後2戦目、重賞初出走で今後の活躍が期待されていただけに、無事が確認されて一安心。再び競馬場に姿を見せてくれることを願う。

レース総評

ディープボンドが、前哨戦の阪神大賞典を制した。
天皇賞(春)の優先出走権を獲得し、優勝候補の最右翼に躍り出たと言って良い。

父キズナは、前田晋二氏が所有。
さらに2014年、キズナと同様に産経大阪杯(GII)を制し、優先出走権を獲得している。1番人気で臨んだ天皇賞(春)は、優勝したフェノーメノに0.1秒及ばず4着。翌年も1番人気だったが7着に敗れ、それが引退レースとなった。
引退後、種牡馬となり送り出した初年度産駒たち、キズナ産駒が天皇賞(春)初めて参戦することとなる。
産駒には、骨折で叶わなかった凱旋門賞遠征や、秋の国内GI参戦が早く見たいものだ。
「絆」よりも『深い』「絆」が、父の届かなかった天皇賞盾獲りを目指す。

フィエールマンが頂点に上りつめたステイヤー界。しかしすでにフィエールマンは引退した。
新星アリストテレスがその座を受け継ぐかに思われたが、前哨戦でまさかの敗退。加えて阪神競馬場芝3200メートル、第1回、2回と地続きのロングランの最終日(通算24日目)での開催である。
熱戦続く仁川の春は、まだまだ折り返し地点である。

写真:バン太

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