フランス、ロンシャン競馬場の2400m、日本のホースマンが掲げる「遥かなる夢」凱旋門賞のコースを舞台に、前哨戦となるG2ニエル賞(3歳限定戦)、G1ヴェルメイユ賞(3歳以上牝馬限定戦)、そしてG2フォワ賞が開催されました。
今年の凱旋門賞には日本からクロノジェネシス、ディープボンドの2頭が参戦します。
クロノジェネシスは凱旋門賞に直行。一方のディープボンドはノースヒルズの僚馬エントシャイデンとともに渡仏、フォワ賞をステップに凱旋門賞を目指す「彼自身の戦い」が幕を開けました。
この舞台には同じノースヒルズの3冠馬コントレイルはいません。異国の地での戦いを託されたディープボンドは、彼自身の強さを証明するべく、Cデムーロ騎手とともにフランス遠征の第一歩を踏み出しました。
レース概況
抜群のスタートを切ったディープボンドは、そのまま自身初の逃げの競馬に挑みます。
キーファーズの勝負服、サンクルー大賞を勝ったブルームが、追いかけて2番手に上がってきますが、Cデムーロ騎手の手は動くことなく、鉄壁の折り合いで前半の登りへと入ります。
東欧最強ともいわれるオパサンが3番手、内の4番手にロンシャン競馬場でG3を勝っているイレジーン、後方にダルマイヤー大賞勝馬スカレティ、殿はサブライミスの隊列で、6頭が少しばらけて序盤戦が進みます。
オパサンはペースを嫌ってか引っかかりながら走っているのに対して、ディープボンドはいつもの雄大なフットワークでマイペースを維持します。隊列は変わらないまま、フォルスストレートへ。
フォルスストレートの途中でCデムーロ騎手が鞭を持ち替え、それに反応してディープボンドも仕掛け始めますが、ブルームがそれを追いかけて上がってきます。
直線に入り鞭が入ると、ブルームに詰められていた差を再び広げてラストスパートに入り、ブルームもデットーリ騎手のアクションに応えて差を詰めようとします。
しかし、最後は脚色が同じになり、持ち前のスタミナでディープボンドが1着を守り切って勝利しました。
終始直後から追いかけたブルームが2着、後方から追ってきたイレジーンが3着でした。
勝馬短評
スタートセンスが良く今回は逃げましたが、前に馬が行っても掛からない折り合いの良さが武器です。
父父ディープインパクトのような瞬発力やキレは無い馬ですが、父キズナ譲りの雄大な馬格と大きなフットワークでパワフルにレースを進めます。
父キズナ、父父ディープインパクトに続く3代目の凱旋門賞挑戦ですが、母系にも目を向けると母母父は86年凱旋門賞勝馬ダンシングブレーヴですし、5代母クリヒデは62年目黒記念2着、そして東京3200mで開催された天皇賞秋の勝馬ですから、スタミナの下地は十分に備えている血統構成と言えます。
阪神大賞典、天皇賞春、そしてフォア賞で見せたロングスパート勝負で後続を寄せ付けない走りは、4歳になってスタミナに磨きがかかった結果と言えるでしょう。フォルスストレートの途中から鞭を持ち替えた際には、一瞬仕掛けが早すぎないか不安でしたが、杞憂に終わりました。
レース後にCデムーロ騎手がコメントしていましたが、サンクルー大賞を逃げ切ったブルームにペースを渡さず、ディープボンドのペースで終始レースを進めて得意の展開に持ち込んだことで、後続を寄せ付けずに逃げ切ることが出来ました。欧州の力の要る馬場も、フォワ賞の走りを見たところは苦にしないようですね。
レース総評
3歳時のディープボンドは、言葉を選ばずに言えば「コントレイルのお目付け役」でした。
皐月賞ではロスなく先行するもそのはるか前でコントレイルとサリオスの末脚比べを見届け10着、ダービーではコントレイルの外を走ってペースメイクし、直線は自身も粘り腰を発揮するも5着まででした。
菊花賞でもコントレイルの前に位置取り、直線で一度は先頭に立って見せました。コントレイルはアリストテレスとの激闘の末、三冠馬になりましたが、それと同時に今後は長距離戦に挑まないことも伝えられました。
そして、今シーズンのディープボンドはコントレイルのいない「長距離戦」阪神大賞典を5馬身差で勝利すると、続く阪神3200mの天皇賞春を菊花賞馬ワールドプレミアの2着とし、中長距離のスタミナ比べという自らの戦いへ舵を切ることになります。
フォワ賞の走りは、まさにこれまでのディープボンドの強さをしっかりとフランスの競馬関係者に見せつける内容でした。日本の3冠馬の僚友として「コントレイルのスピード」に1年間付き合い、そして自らの武器であるタフネスを兼ね備えた今、ディープボンドが主役になる時がやってきたと言っても過言ではないでしょう。
クロノジェネシスとともに、日本馬の代表として凱旋門賞で素晴らしい走りが出来ることを願っています。
僚友以上の最高の栄誉をディープボンドが手に入れる日を、心から楽しみにしています!