[重賞回顧]絆が繋げた菊勲章〜2021年・菊花賞〜

「最も強い馬が勝つ」3冠最終戦の菊花賞。

今年は京都競馬場改修工事のため阪神競馬場での開催となった。

3歳馬にとっては未知の距離である3000mに加え、パワーとスタミナが必要となる阪神競馬場とあってレースや展開の予想は混迷を極めた。さらに皐月賞馬エフフォーリア、日本ダービー馬シャフリヤールも不在とメンバーも大混戦。どの馬にもチャンスがあるこの菊花賞、果たしてどのような結末となるのか。

レース概況

G1馬不在の大混戦メンバー。
人気の方もかなり割れ気味であった。
最後まで1番人気を争ったのはレッドジェネシスとステラヴェローチェ。

レッドジェネシスは前走神戸新聞杯で2着連対。
京都新聞杯で重賞制覇を上げており、長距離特性や安定感から軸としての人気を集めた。
一方のステラヴェローチェは、今年のクラシックを盛り上げた立役者。
連続3着と悔しい思いをしていただけにこの菊花賞は是非勝利を上げたい所だろう。そしてセントライト記念勢では、マリアライトを母に持つオーソクレース、弥生賞を制し急坂もこなすタイトルホルダーも人気を集めた

しかし絶対的な主役は不在。
高揚感漂う混戦メンバーに競馬ファンはくぎ付けとなった。

阪神競馬場はレースが進むごとに曇り空が広がっていたものの、寒さは少し和らぎ競馬日和となっていた。通常では阪神大賞典でしか使用されない3000mスタート地点に3歳馬が集結。

ファンファーレと共に拍手が沸き上がり、18頭がゲートを飛び出した。

各馬揃ったスタートからポジションを探り合う。まず気合をつけて飛び出したのはタイトルホルダー。最内1番のワールドリバイバルを抑えて逃げの手を打った。オーソクレースが中団に構え、レッドジェネシスとステラヴェローチェは後方に構えた。

タイトルホルダーが刻んだペースは1000m60秒フラット。

1周目のスタンド前では大きな拍手が沸き上がった。
その拍手に乗ってセファーラジエルが最後方から2番手までポジションを押し上げる。

2周目に入っても各馬隊列は大きく変わらず。ステラヴェローチェとレッドジェネシス、アサマノイタズラは依然最後方で脚を溜める戦法を貫いていた。

残り600m。タイトルホルダーが後続を引き連れ、2番手にセファーラジエル。その後ろはモンテディオ、グラティアス、ディヴァインラヴと広がって直線に向いた。

直線に向くとタイトルホルダーが一気に突き放す。リードを3馬身、4馬身と差を広げる。2番手で粘るディヴァインラヴにオーソクレースとステラヴェローチェが差し込んで2着争いに持ち込むが、先頭までは及ばず。

一人旅となったタイトルホルダーが、3000mを逃げ切ってのゴールイン。

大きく左腕を突き上げた横山武史騎手。

父である典弘騎手が制したセイウンスカイの菊花賞を彷彿させるような、圧巻の逃げ切りであった。

各馬短評

1着 タイトルホルダー (横山武史騎手 4人気)

スタートから気合をつけてハナを主張。
気性面をいたわりながら、気持ちよく3000mを逃げ切った。

中間のラップをしっかり落とすなど絶妙な手綱さばきを見せた横山武史騎手の騎乗もお見事。父ドゥラメンテが出走できなかった菊花賞の舞台で、その子タイトルホルダーが見事「初タイトル」を手にした。

2着 オーソクレース (C.ルメール騎手 3人気)

終始中団でレースを進めたオースクレース。2週目4コーナー手前で進出を開始し、直線ではディヴァインラヴやステラヴェローチェとの競り合いを制して2着に入線した。

前走骨折明けでも3着に入るなど「タフな」走りを披露しているオースクレース。
今後も母譲りの勝負強さでリベンジを誓う。

3着 ディヴァインラヴ (福永祐一騎手 6人気)

今回のメンバーで唯一の牝馬が、菊舞台を盛り上げた。

中団からレースを進め、4コーナー手前では先団まで迫って直線へ。激戦の2番手争いで先に抜け出し、強襲する各馬も封じる場面もあった。連勝で勝ち上がった夏の上り馬。打倒アカイトリノムスメ、ソダシに向けて戦いは続いていく。

総評

約40年ぶりの阪神開催で行われた菊花賞。

親子2代での菊花賞制覇を達成した横山武史騎手、そして、父ドゥラメンテの無しえなかった菊花賞制覇を果たしたタイトルホルダー、さらには岡田スタッドからの菊花賞制覇など、様々な絆を感じさせてくれる菊花賞となった。

思えば典弘騎手が菊花賞を制した時も、セイウンスカイでの逃げ切りだった。

あの時と同じく黒い帽子での逃げ切り、そして左手のガッツポーズ……。
名馬を思い出させてるタイトルホルダーと武史騎手の走りに、阪神競馬場はいつも以上の拍手に包まれた。

写真:俺ん家゛

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