今年も交流重賞の大一番、JBCデーがやってきました!
昨年度より新設されたJBC2歳優駿も含めて、4レースの交流重賞が1日で開催されます。
その開幕戦は、牝馬のナンバーワンを決めるJBCレディスクラシック。金沢競馬場1500m戦に12頭がエントリーしました。
春の牝馬戦で強いレースを見せたマルシュロレーヌは週末の米・ブリーダーズカップデーに向けて旅立ちました。しかし、牡馬相手でも圧倒的な逃げを見せるサルサディオーネや、前走レディスプレリュードで久々の勝利を挙げたレーヌブランシュ、地元金沢で12勝を挙げているハクサンアマゾネスや昨年のJBCレディスクラシック2着のマドラスチェックなど、多士済々のメンバーが揃いました。
レース前には通り雨もあり、天候が心配されましたが、レース前には日差しが戻ったおかげか良馬場でのスタートになりました。
レース概況
スタート直後にサルサディオーネが外に膨れてごちゃつき、ハクサンアマゾネスとリネンファッションが位置を下げました。矢野騎手がすぐに軌道修正して、いつも通り逃げを打ちます。
その直後にマドラスチェックが促して2番手、レーヌブランシュが3番手、クリスティーが4番手。更にその外にはダノンレジーナが並んでコーナーに入ります。
先行集団の後ろからグランデストラーダが押し上げて中団へ。リネンファッションは武豊騎手がロスを避けインコースに誘導し、向こう正面で早めにサルサディオーネを捉えるべく2番手まで押し上げます。テオレーマは後方5番手に構え、その後ろにラインカリーナ、ルイドフィーネ、ハクサンアマゾネス、マルカンセンサーが続いていきました。
マドラスチェックが引き続き3番手、レーヌブランシュが2馬身ほど離されて4番手。ダノンレジーナ、グランデストラーダが続いて、そのインコースでテオレーマが仕掛けどころを狙います。
3コーナー入り口でサルサディオーネが捕まり、リネンファッションが先頭、マドラスチェックが2番手に押し上げます。テオレーマも、その直後まで上がっていきました。
コーナーを抜けて直線でマドラスチェックがリネンファッションを競り落として先頭に立ちましたが、その外から鞭が入ったテオレーマが末脚全開、一気に差を広げて2馬身半差をつけて女王の座をつかみ取りました。タイム1.32.1はレコード、1番人気に応えての勝利でした。
マドラスチェックは昨年に続き惜しくも2着、リネンファッションが3着。レーヌブランシュも最後伸びてきましたが4着まででした。地方馬最先着はラインカリーナ、後方で末脚を溜めて、レーヌブランシュの外から追い込んでレーヌブランシュのクビ差まで迫る走りを見せました。
各馬短評
1着 テオレーマ
先行激化の流れを見て末脚を溜めるいつものスタイルでの競馬にしたのが、この大一番で嵌った、快心のレースでした。
マリーンカップから川田騎手が乗り続けていましたが、今回マルシュロレーヌがブリーダーズカップ遠征に向かったことで、コンビ継続が実現しました。今年の交流重賞で無双している鞍上が継続騎乗してくれるのは、陣営にとっても心強かったことでしょう。
サルサディオーネをとらえるために先行各馬が終始動き、先頭が目まぐるしく変わる中、自らのスタイルである末脚を引き出すことに集中。サルサディオーネが捕まったタイミングを逃さずに先行各馬を捲っていく走りは圧巻でした。
唸る末脚はペースが落ち着いたり、先行有利な馬場では届かないこともありますが、相手が強くなるほどフルに発揮できる武器でもあります。距離適性を考えれば次の大勝負はフェブラリーステークスになりそうですが、外一気の末脚は新女王の確かな武器であることを証明しました。
2着 マドラスチェック
昨年のこのレースではタイム差無しの2着、今年に入ってからは先行して粘り込むレースを続けていたものの、マルシュロレーヌやテオレーマに差し切られて惜敗していました。さらに前走は芝の巴賞を使っていたこともあり、JRAからの参戦組では最も人気の無い6番人気での参戦でした。
終始サルサディオーネを追いかけ、直線ではリネンファッションを競り落とした走りは今年こそ勝てそうな勢いでしたが、テオレーマに狙い撃ちされての2着惜敗……。ただ、着差こそあれ、負けて強しの競馬でした。
齋藤新騎手は2019年夏以来の2度目の騎乗でしたが、競りかけても競られても簡単には崩れないこの馬の良さを引き出す積極果敢なレース運びで、マドラスチェックのベストを引き出す好騎乗に見えました。「ただ一頭、強い馬がいたこと」。敗因は、この一言に尽きるでしょう。
3着 リネンファッション
名手・武豊騎手が鞍上のリネンファッションはこの夏から交流重賞に挑戦して2着2回の「上り馬」として大一番に参戦しました。
スタートでサルサディオーネが外に膨れて先行位置が取れず、コーナー入り口でダノンレジーナに前に入られる等、展開の不利があったと言えるでしょう。しかし武豊騎手がインから逃げるサルサディオーネを追いかけた騎乗は、前走スパーキングレディーカップでの走りを彷彿とさせました。
レース序盤で脚を使ってしまった分、最後にマドラスチェックに振り切られてしまいましたが、ロスがあってもレーヌブランシュやラインカリーナに追いつかれなったのは実力をつけた証と言えます。
たらればは禁物ですが、ロスなくスムーズに運べれば2着はあったかもしれませんし、この夏の成長で4歳シーズンを好走できたので、来シーズンの交流重賞は勝てるかもしれません。
4着 レーヌブランシュ
前走レディスプレリュードで久しぶりの勝利を挙げたレーヌブランシュ。やはり1500mは、少し距離が短かったようです。
好位先行からスムーズに回ってきましたが、クロフネ産駒らしく持続力タイプの末脚を使うので、コーナーでテオレーマに瞬時に交わされてしまいました。直線では伸びているのですが、200mでは間に合わいませんでした。
敗れてはいるものの、末脚比べでは分が悪いだけで、馬自身は前走同様いい状態で走れているように見えました。年明けのTCK女王杯や距離が延びるエンプレス杯なら、来年も持続力勝負が出来るはずです。
10着 サルサディオーネ
左回りの川崎や船橋では牡馬ですら逃げ切られてしまうスピードを持つ一方で、右回りの大井競馬場では成績を落としている馬なので、日本テレビ杯の回顧でも「右回りでの本番はどうか」と懸念していましたが、悪い予感が的中してしまいました。
主戦の矢野騎手はレース後のインタビューで「馬は元気だったけど初めてのコースで戸惑っていた」と話していましたが、もしかしたら久しぶりの有観客開催や南関移籍後は初となる遠征競馬も影響したのかもしれません。
また、レース展開も人気の逃げ馬の宿命として追われる立場にありました。
今回は南関のトップホースとして参加したことに敬意を表したいです。7歳牝馬ですが12月には得意コースのクイーン賞もあります。来年のJBC開催は「左回り」の盛岡競馬場なので、もう1年元気な姿を見たいところです。
レース総評
JBCデーの開幕戦から各馬が激しく動く展開のレースで、決着タイムも金沢1500mのレコードタイムが出るハイレベルな戦いでした。
テオレーマの末脚はもちろん、先行して2着に残したマドラスチェックは久しぶりに強い姿を見せてくれましたし、得意ではない条件でも果敢に逃げを打ったサルサディオーネ、逃げ馬を徹底マークして見せ場を作った武豊騎手とリネンファッション、最後に伸びて来たレーヌブランシュとラインカリーナ等、各馬の見どころ満載のレースでした。
牝馬限定の交流重賞は12月に船橋1800mのクイーン賞が開催されます。
今回逃げ切れなかったサルサディオーネは得意な条件でのレースに戻りますし、テオレーマも船橋1600mのマリーンカップを勝ってのJpn1チャレンジでしたので、再びの好勝負が繰り広げられることでしょう。
テオレーマの生まれ故郷である笠松牧場はダービー馬ディープスカイ以来となるG1級競走の勝利。今度は牧場長の水上行雄オーナー所有馬での勝利ですから、喜びもひとしおでしょう。
川田騎手、石坂調教師、関係者の皆様、優勝おめでとうございます!
写真:ひでまさねちか