2022年最初の交流G1・川崎記念は2100mで行われる一戦です。
昨年の覇者カジノフォンテン、一昨年の覇者チュウワウィザード、2018年の覇者ケイティブレイブの3頭の交流G1勝馬が参戦。さらにはG1未勝利のメンバーも左回りを得意とする女傑サルサディオーネ、名古屋グランプリを制して距離適性を見せたヴェルテックス、そのヴェルテックスに浦和記念で先着したタービランスも初のG1制覇を狙います。加えて、追込競馬でオープンに上がってきたブラックアーメット、中央在籍時は2100mオープン戦の常連だったエルデュクラージュ、こちらもJRAのダート長距離戦で勝ち上がってきたヒロイックテイルはG1初挑戦ですが、こちらも魅力十分なメンバー。
好天の川崎競馬場は西日に照らされて、良馬場での開催になりました。
砂煙を上げて、13頭が栄冠を目指して駆け出します。
レース概況
サルサディオーネがロケットスタートを決めてお決まりの逃げを打つなか、好スタートのカジノフォンテンが2番手、最内からエルデュクラージュが3番手で追走しまあす。さらに4番手は促されつつ進んでいくタービランス。チュウワウィザードはその後ろの5番手集団で先行馬の出方を伺います。ヴェルテックスはチュウワウィザードをがっちりマークするポジションへ。
ヴェルテックスの外からスタートがいまひとつだったヒロイックテイルが押し上げ、中団で構える2頭の外にロードゴラッソ御神本騎手の勝負服が見え隠れ。その後ろにケイティブレイブ、外にはホーリーブレイズ、インコースの後方にデルマルーヴルがポジションを確保します。更に後ろでブラックアーメットが末脚を溜め、最後方にフレアリングダイアの隊列で隊列が決まり、1コーナーへ。
サルサディオーネが淡々と逃げ、そのペースに併せてカジノフォンテンが2番手、エルデュクラージュが3番手、デムーロ騎手に押されながらヒロイックテイルが4番手で先行し、2週目の向こう正面では隊列が縦長になります。
向こう正面真ん中あたりでエルデュクラージュが逃げる2頭を大跳びの走りで捕まえにに行き、すかさずヒロイックテイルに鞭が入ります。前がやりあう中でもチュウワウィザードはまだ動かず、その後ろのヴェルテックスとタービランスはおっつけて先行集団に並びかけます。
コーナーでばてたサルサディオーネを各馬が交わしに行くところでアクシデントが発生、ヒロイックテイルとサルサディオーネの間にヴェルテックスが突っ込んだことで外に振られたタービランスが躓いてしまい、タービランスこそ立て直したものの鞍上の森泰斗騎手が落馬してしまいました。
そしてサルサディオーネが脱落し、直線で粘るカジノフォンテンを一完歩ずつエルデュクラージュが追い抜きにかかりますが、外からただ1頭手ごたえの違う走りでチュウワウィザードが交わし去ります。最後の50mほどで4馬身後方を突き放して2度目の川崎記念制覇を達成しました。
エルデュクラージュは後方から差してきた馬たちを凌いで2着の大健闘、アタマ差届かずヴェルテックスが3着、追込のブラックアーメットがヴェルテックスの進路をなぞって4着、カジノフォンテンは3頭に交わされましたが5着に粘り込みました。
各馬短評
1着 チュウワウィザード
圧倒的人気に支持されて臨んだ今年の川崎記念でしたが、逃げ先行馬たちを抜群の手ごたえで追いかけ、直線で促して抜け出すだけの「盤石の競馬」で勝利しました。
前でサルサディオーネ、カジノフォンテン、エルデュクラージュらがペースを上げ、ヴェルテックスやヒロイックテイルが先に動き出しても川田騎手の手は動きませんでした。
「(以前騎乗した川崎記念と比較して)能力は全く落ちていない」と川田騎手がインタビューで語っていたように、やはり実力は抜けていたということでしょう。同時に「多少ズブくはなっている」とのことでしたが、ハイペースを追いかける今日のレースでもしっかり後続を突き放したので、心配は無用でしょう。
一昨年の川崎記念以来のコンビでしたが、やはり交流重賞の川田騎手には敵なしのようです。
無事に行けば次走は昨年2着のドバイワールドカップ。無事の参戦、そして願わくば勝利を持ち帰って欲しいですね。
2着 エルデュクラージュ
JRA在籍時はとにかく「東京2100mダート」を得意とし、これまでに挙げた7勝のうちオープン2勝を含めて4勝。左回り2100m巧者のエルデュクラージュは南関移籍3戦目で初のG1挑戦でした。
コース適性は報知オールスターカップでも発揮されて2着、そして今回はサルサディオーネとカジノフォンのペースに乗じて、持ち前のスタミナで前の2頭を交わして2着の大健闘と言えるでしょう。
昨年は船橋2400m戦のダイオライト記念2着もありますし、地方長距離重賞を渡り歩くローテーションになるはずです。決して右回りがダメな馬ではないので、大井金盃や六甲盃、ダイオライト記念、白山大賞典、名古屋グランプリなどなど、2000m以上のレースであれば出番があるでしょう。特に地方競馬であれば先行馬がより結果を残しているので、今年は地方のマラソンレースで大活躍するかもしれません。
3着 ヴェルテックス
浦和記念2着→名古屋グランプリ1着を経て、地方競馬の2000m以上のレースで適性を見せたヴェルテックス。
終始チュウワウィザードをマークし、ズブさを補うべく横山武史騎手が早めに促して追走、追って追いつけなかったヒロイックテイルとばてて後退したサルサディオーネの間を割って抜け出し、最後の最後にエンジンがかかったところがゴールに見えました。
あとワンテンポだけ加速のタイミングが早ければ2着に入れた可能性が残るだけに、2100mでは若干短いのかもしれません。浦和記念でタービランスを捉えられなかったことを鑑みても適性は更に長い距離でしょう。
次走にダイオライト記念を選ぶようであれば、南関の長距離巧者たちと再び対決することになるはずですから、距離延長で改めて応援したいですね。
4着 ブラックアーメット
ダートの追込馬と言えばベテランのウェスタールンドがいますが、こちらは明け4歳の新星。
川崎記念では後方からの差し切り勝ちは難しい傾向にあるのですが、向こう正面残り半周で促されるとすぐにペースを上げて先行馬群に追いつき、ヴェルテックスの進路をなぞって直線勝負へ。
ゴール番直前でヴェルテックスのギアが上がった差での4着でしたが、初のG1挑戦、距離もメンバーレベルも初モノのレースであったことを鑑みればこちらも大健闘。どうしても展開が嵌らないと差し切り勝ちは難しいですが、これまでの出走レースのほとんどで上り3位以内の末脚を披露しているので、賞金別定戦などで斤量が軽くなればチャンスでしょう。距離はもう少し短い1800-2000mが合いそうに見えました。
5着 カジノフォンテン
今回は逃げたサルサディオーネに付き合って2番手でレースを進め、コーナーもロスなくインコースから直線に入りましたが、エルデュクラージュのスタミナには敵わず、後方から追ってきたJRA組にも交わされて5着まででした。
それでも6着のヒロイックテイルを4馬身離していますから、地力の高さは見せることが出来ました。
今回の場体重は+13キロでしたが、夏の帝王賞から前走のチャンピオンズカップまで馬体を減らし続けていたので、しっかり回復出来たうえでの結果であれば、このまま馬体維持できれば昨年の輝きを取り戻せるはずです。
今年のJBC競争は左回りの盛岡競馬場開催ですから、G1ロードを駆け抜けるのであれば、気の早い話ですがフェブラリーステークス→かしわ記念→南部杯→JBCクラシック→チャンピオンズカップとチャンスが続くので、どこかでもう一度勝つ姿が見たいですね。
競走中止 タービランス
鞍上の森泰斗騎手がコーナーで落馬し競争中止となってしまいましたが、タービランス自身はゴールまでしっかり完走したところを見ると大きな故障は心配しなくても良さそう。
幸い大外を回っていたこと、後方のブラックアーメットがロスを省く進路運びをしていたことで人馬とも大きなダメージは無い……かと思いますが、タービランス上がってくる脚に勢いがあっただけに残念な結果でした。
浦和記念ではヴェルテックスに先着し、JRA重賞クラスのメンバーとも互角に戦える実力は明け9歳でも健在に見えましたので、次走こそ無事完走を祈りましょう。
レース総評
13頭が駆け抜けた蹄跡が真っ白な砂煙の中で見えなくなるほど馬場が乾いたコースで、ペースも相まって例年以上にスタミナと末脚を問われる川崎記念でした。
勝ったチュウワウィザードは勝手知ったるコースでの好走でしたが、これまでスタミナを武器に走っていたエルデュクラージュ、差してきたヴェルテックスとブラックアーメットには展開が味方した1戦でした。カジノフォンテンはG1馬として追われる立場ながら、掲示板に残す5着であれば健闘していると思います。
地方馬には長距離路線で大井金杯が、交流重賞ではダイオライト記念が待っています。牝馬のサルサディオーネは左回りのエンプレス杯に向かうかもしれません。
オメガパフュームが現役続行を決め、チュウワウィザードにテーオーケインズとG1クラスの馬たちは強豪ぞろいですが、ヴェルテックスやブラックアーメットのように明け4歳5歳の比較的若い馬たちも台頭していますから、2022年の交流重賞も白熱した1年になりそうです。
写真:shin 1