[重賞回顧]歴史的良血馬が一気に開花!女王の座はジェラルディーナの手に~2022年・エリザベス女王杯~

1975年に英国のエリザベス女王が来日したことを記念し、前身であるビクトリアカップの距離や条件を踏襲する形で、翌76年に創設されたエリザベス女王杯。2022年は、即位70周年の「プラチナジュビリー」を祝し「エリザベス女王即位70年記念」の副題がつけられる予定だったが、9月8日に女王が崩御され、副題の付与も取りやめとなった。

今回は女王が崩御後、初めて行なわれるレース。例年以上に特別な意味合いを持ち、3歳vs古馬の図式はもとより、11年ぶりの外国馬参戦。そして、出走18頭中15頭が重賞ウイナーという豪華メンバーが集結するなど、非常に見所の多いレースとなった。

それだけに、人気は割れて大混戦の様相を呈し、単勝10倍を切ったのは4頭。その中で1番人気に推されたのはデアリングタクトだった。

2020年に牝馬三冠を達成し、史上最高のメンバーといわれたジャパンCでも3着と好走した本馬。ところが、4歳春に繋靱帯炎を発症。長期の休養を余儀なくされてしまったが、ヴィクトリアマイルで戦列に復帰すると、宝塚記念で3着に好走。前走のオールカマーは6着に敗れたとはいえ外枠不利の馬場で、完全復活とGI4勝目が期待されていた。

これに続いたのが、3歳馬スタニングローズ。今シーズンは5戦4勝2着1回と素晴らしい成績を残しており、秋華賞ではスターズオンアースの三冠を阻んで優勝。オークスの雪辱を果たした。今回そのライバルは参戦せず、GIウイナーという点でも実績は上位。一気に最強牝馬の座まで手にするのか、大きな注目を集めた。

3番人気となったのが、スタニングローズと同じ高野友和調教師が送り出すナミュール。ここまでのGI4戦、上位人気に推されながら勝利を手にしていないものの、オークス3着、秋華賞2着と、確実に着順を上げている。必勝を期す今回、同厩のライバルにリベンジを果たした上で、待望のGI制覇なるか注目を集めていた。

そして、4番人気に推されたのがジェラルディーナで、父はモーリス、母がジェンティルドンナという現役屈指の超良血馬。オープンに昇級して以降、やや伸び悩んでいたものの、今夏、飛躍のきっかけを掴み、鳴尾記念で2着に好走。小倉記念3着をはさみ、前走のオールカマーで重賞初制覇を成し遂げた。久々のGI出走となる今回、顕彰馬にも選出された偉大な母から最強牝馬の系譜を受け継ぐため、是が非でも勝利したい一戦だった。

レース概況

ゲートが開くと、ほぼ揃ったスタートから、予想どおりローザノワールがハナを切る展開に。外国馬として11年ぶりの出走となったマジカルラグーンが続き、ウインキートスが3番手。さらにそこからウインマイティー、スタニングローズ、ピンハイ、ウインマリリンの4頭が、半馬身間隔で追走していた。

一方、上位人気馬では、デアリングタクトが中団8番手に構え、その1馬身後ろにナミュール。ジェラルディーナは、さらにそこから2馬身差の13番手に控えていた。

前半1000mは1分0秒3の平均ペース。逃げるローザノワールと2番手のマジカルラグーン。最後方のアカイイトと17番手ライラックの差がそれぞれ3馬身ほどあり、前から後ろまでは17、8馬身ほどの差ができていた。

その後、3コーナーに入ったところでローザノワールがペースを上げると、早くもマジカルラグーンの手応えが怪しくなって後退。続く4コーナーで、ウインの勝負服3騎が2番手へと進出し、テルツェットとジェラルディーナの8枠2頭も前との差を詰めたところで、レースは最後の直線勝負を迎えた。

直線に入ると、ローザノワールのリードは1馬身。ウインマリリンとジェラルディーナがこれを追い、一度はウインマリリンが先頭に立つも、坂を上ったところで今度はジェラルディーナが先頭へ。さらに大外から、後方待機策のライラックが勢いよく追い込み、圏内はこの3頭に絞られた。

しかし、ジェラルディーナはその追撃を許さず、C・デムーロ騎手の大きなガッツポーズとともに見事1着でゴールイン。1馬身4分の3離れた2着争いは大接戦となり、写真判定の結果、グレード制の導入以来GIでは史上初となる2着同着。ウインマリリンとライラックが、仲良く分け合う形となった。

重馬場の勝ちタイムは2分13秒0。阪神ジュベナイルフィリーズ以来、2年ぶりのGI出走となったジェラルディーナが初のビッグタイトルを獲得。2021年の秋華賞を制したアカイトリノムスメ以来、三冠牝馬から2年連続でGIウイナーが誕生した。

各馬短評

1着 ジェラルディーナ

パドックでチャカつくのはいつもどおり。しかし、道中引っ掛かるようなところはまるでなく、中団やや後方を追走すると、勝負所で一気に進出。そこからゴールまで良い脚を長く使うという、このコースの必勝パターンで勝ち切った。

母も管理した石坂正調教師が2021年2月末で定年し、現在の斉藤崇史厩舎に転厩。その初戦となった城崎特別で右手綱の尾錠が外れ大敗するも、そこから条件戦を3連勝。その後の3戦はやや伸び悩んでいたものの、父と同じく4歳夏に本格化。ついにビッグタイトルを手にした。

小倉と阪神の外回りという異なる条件で2勝しているが、今回や前走を見ると、やはり小回りの持久力勝負があっていそう。条件的には香港カップか有馬記念も期待できそうだが、冬場にあまり結果が出ていないことも考えると、来年の宝塚記念で楽しみな存在ではなかろうか。

2着(同着) ウインマリリン

中団より後ろに控えていた馬が上位を独占する中、先行馬で唯一、上位入線を果たした。

展開を考えると最も強い競馬をしており、この馬も瞬発力より持久力で勝負するタイプ。香港カップか有馬記念に出走することがあれば、少なくとも相手には加えたい存在。

2着(同着) ライラック

毎レースのようにパドックでキビキビと歩き、いつも良く見せる馬。ただ、出遅れることも多く、なかなか結果が伴わなかったが、ついに激走を果たした。

2021年は2頭、22年は3頭出走した秋華賞組。エリザベス女王杯で連対したのは、いずれも秋華賞で着順が下位、かつ上がり2位をマークした馬だった。該当馬がいれば来年以降も狙いたかったが、23年からは再び京都開催に戻るため、この傾向が使えるかはなんともいえないところ。

また、血統面に目を向けると、父オルフェーヴル×母父キングカメハメハはニックスともいえる配合で、21年日経新春杯勝ちのショウリュウイクゾや、重賞で2着3回のタガノディアマンテ。ダート転向後3戦2勝のウシュバテソーロ。そして牝馬のホウオウピースフルとモルフェオルフェなどオープン馬を多数輩出しており、オルフェーヴル産駒で最も成功するパターンと言える。

レース総評

前半1000mが1分0秒3で、12秒3をはさみ、同後半は1分0秒4とイーブンペース。常に、11秒後半から12秒前半のラップが刻まれ、先行各馬にとっては息の入りにくい厳しい流れに。結果、序盤は中団より後ろに構え、勝負所から上昇を開始した外枠勢が上位を占めた。

阪神芝2200mの重賞は、ほぼ毎回こういった流れになるが、この必勝パターンをどの馬を繰り出すかは前もって予想しにくい。

ただ、その中で明確な傾向が2つあり、1つ目は8枠の強さ。特に、当コースで行なわれるGIでは顕著になっており、過去10回の宝塚記念と今回を含めたエリザベス女王杯3回の計13レースで8枠に入った馬が10勝。異常なまでの強さを発揮している一方で、2、3着が多く勝ちきれていないものの、1枠の健闘も目立っている。

2つ目は、上がり3ハロンの順位と着順が直結するということ。

上述した13レースで、今回上がり最速を繰り出した馬は14頭おり(17年の宝塚記念は上がり最速が2頭)、8勝2着6回とパーフェクト。一方、前走上がり最速は30頭が出走し[2-1-1-26/30]。ジェラルディーナは今回も前走も上がり最速だが、全体的に見ると苦戦している。

今回上がり最速を繰り出すのはどの馬か。これを前もって予想するのは非常に難しいことだが、少なくとも逃げ・先行馬が上がり最速を繰り出す可能性は非常に低い。そのため、8枠に入った差し、追込み馬を狙うのが、阪神芝2200mのGIを攻略する近道かもしれない。

最後に、ジェラルディーナの血統に着目すると、父モーリスで、母がジェンティルドンナという超のつく良血。両親合わせてGIを13勝しており、年度代表馬のタイトルを計3回も受賞。ジェラルディーナは、日本の競馬史に残るような超良血といっても過言ではない。

ただ、これまでGIを4勝以上した名牝中の名牝と呼ばれるメジロドーベル、ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタの産駒からは重賞ウイナーが誕生しておらず、現役時は名牝であっても、名繁殖牝馬になることは難しいと思われていた。

ところが、ここにきて三冠牝馬のアパパネから秋華賞馬のアカイトリノムスメが誕生し、ジェンティルドンナからもジェラルディーナが誕生。これら2つのファミリーが枝葉を広げる可能性は高く、アーモンドアイ、グランアレグリア、クロノジェネシスといった名牝たちからも、素晴らしい産駒が続々と誕生することだろう。そういった、将来の楽しみも広がるエリザベス女王杯だった。

写真:よぴ@UMAYOPI

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