気がつけば、好きになっていた〜万能型サラブレッド・レイデオロ〜

近代日本競馬の結晶と呼ばれたディープインパクトと双璧をなす名馬・キングカメハメハを父に持つ、レイデオロ。『黄金の王』という名の通り2017年のダービー馬として3歳馬の頂点に立った馬であり、JRAの部門別最優秀牡馬に2度も選ばれた。

その走りはまさに万能型で、どんな展開・どんな騎手のエスコートにも対応できる柔軟性を持ち合わせていた。

私がレイデオロに初めて知ったのは、2018年の産経賞オールカマーだった。
約半年ぶりのレースであるものの1番人気に推され、後方で待機しつつ4コーナーを回ると先行していたアルアインをクビ差で差し切ると、実力の高さを証明した。
次走の天皇賞・秋では人気こそスワーヴリチャードに譲ったものの2番人気に推されると今度は2着のサングレーザーに1馬身差(0.2秒差)で勝利。

そして、主役として有馬記念へと駒を進めた。
2走連続で実績馬を相手に強さを見せつけたレイデオロに対し、私は頭を悩ませていた。

レイデオロの長所はどんな展開や騎手のエスコートにも対応可能で、しかもその多くが重賞・G1で勝ち負けできるほどのクオリティで走れるところである。そのため馬券予想という上では、かなり頭を悩まされる存在でもあった。

「やはりこの馬が勝つのか?」
「この馬を切れば、穴馬券になるんだが……」
「苦手な展開になれば、いやしかし……」

そんな風に唸っているうちに、有馬記念の日がやってくる。

そこで驚くべき心の変化が訪れた。
実際にターフでみるレイデオロの姿を見ると、すぐに好きになってしまったのだ。
レース中の力強い走りとは裏腹に、愛くるしい顔で歩いている姿は、私の心を捉えた。
そしてその有馬記念でも、1着のブラストワンピースにクビ差の2着と、レイデオロは好走を続けた。

有馬記念を終え、ドバイ初挑戦後に国内3戦全馬券内という結果を受け、レイデオロは2度目のドバイシーマクラシックに出走することが決まった。

しかし、2度目のドバイシーマクラシックの結果は6着。
2コーナー付近でハナに立つとそのまま逃げる形となり遅いラップで進んだが、4コーナー過ぎに追い込んできたマジックワンドやオールドペルシアンに抵抗するような余力がなくそのままレースを終えてしまったのだった。

実際にレース映像をリアルタイムで見ていたが、レースの後レイデオロに対しては同情の声が多く聞こえてきた。私としては、騎乗内容がどうこうというよりも、レイデオロがこれまでと違う走りを負担の大きい海外レースでしてしまったことで、大きなダメージが入ってしまっているのでないかと気がかりだった。

結局、日本に帰ってきてからのレイデオロは1度も馬券内に入ることができず、2019年の有馬記念で引退と発表された。

──その、最後の有馬記念。
現地で見ることはできなかったものの、テレビの前でレースを見守った。

レイデオロは後方から仕掛けていったが差し切れず7着。
残念な結果にはなったが、最後まで一生懸命走るレイデオロの姿をもう見れなくなると思うと、なんだか悲しい気分になった。レイデオロはこれまでの成績も評価されて種牡馬入りし、偉大な父であるキングカメハメハの後継者として期待されている。

ダービーを制覇し、天皇賞・秋を制覇し、有馬記念やあジャパンカップでも2着に善戦しながらも、ひょんなことで歯車が狂ってしまい、最後は11着→7着となってしまった。
しかしレイデオロの懸命に走る姿は、目に焼き付いている。

現役後半は思い通りの結果は出せなかったものの、ディープとも縁のある良血馬だ。
馬産地の期待も高いはずである。
レイデオロのように活躍できる産駒を輩出してくれることを期待するが……まずは、何よりも元気で長生きしてほしい。そう、切に願っている。

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