高知競馬場は四国唯一の競馬場として、レースが開催されています。
一時期は経営が非常に苦しいところまでいきましたが、ネット投票の普及、地方競馬史上初となる通年ナイター開催(夜さ恋ナイター)、全国区で活躍する馬や人の登場、その他関係者の様々な努力・工夫なども相まって、経営状況は大幅に改善してきています。そのため、賞金も底を脱して増額されてきています。
今回は高知競馬を馬、人にスポットを当てながらご紹介したいと思います。
現在の高知競馬場は1985年に開場したもので、地方各競馬場の中では比較的新しい部類に入ります。
アクセスは高知駅、南はりまや橋から無料のバスがありますが、通常開催では1本しかありませんので無料バス利用の際は時刻には注意が必要です。帰路も通常1本です。競馬場まではおよそ30分ほどで到着します。
入場門をくぐればすぐに新聞販売所があり、高知で販売されている専門紙の一つ「中島高級競馬號」は日本最古の競馬新聞とされ、予想印の元祖とされているそうです。
高知の馬場は基本的に内が深くなっているので、やや内を開けて走る展開となりますが、3~4コーナーで内を突いてポジションを挙げることも見られ、道悪になれば直線で内を突いて伸びてくることもあります。
高知競馬ではJRAや他地区から転入してくる馬が多く、高齢の馬も目立ちます。古くは、最高齢勝利記録を達成したオースミレパードやナリタブライアン世代のナムラコクオーがいました。
JRAでそこまで活躍できなかった馬や地方デビューの馬でも、記憶に残ったり話題となる馬が、高知競馬には多く現れます。連敗記録が話題となったハルウララ、JpnI南部杯であわやの3着に入り大波乱を演出したグランシュヴァリエや、遠征でも結果を残してきた長距離砲リワードレブロン、長年高知の重賞戦線を牽引したエプソムアーロン、短距離で活躍しているサクラシャイニー、全国区で活躍しているディアマルコ、フリビオンなど、その他にもJRAで重賞を勝った馬や思わぬ良血馬が高知で現役を続けて走っていたりします。彼らの名前を見つけて懐かしむのも一つの楽しみではないでしょうか。
高知では新馬戦も復活し、高知デビュー馬にも素質のある馬が現れるようになりました。今後も高知から全国区で活躍する馬、記憶に残る馬は増えてくると思います。
高知で開催される唯一のダートグレード競走、黒船賞の第1回を制したのは地元高知のリバーセキトバでした。現在ではJRAの壁は相当厚いものとなっており、第2回からは全てJRA所属馬が制していましたが、2018年、兵庫のエイシンヴァラーがJRA勢を破り、第1回以来となる20年ぶりに、地方所属馬として黒船賞を制しました。今後もエイシンヴァラーのようにJRAを破る、そんな競走馬が出てくることを期待したいと思います。
高知競馬は人に注目してみてもバラエティに富んでいると思います。
高知を代表する騎手と言えば、やはり赤岡修次騎手が挙げられます。2016年には通算3000勝を達成し、2006年から9年連続高知リーディングを獲るなど、長年高知の第一人者として君臨しています。ファンを大切にするジョッキーで、あの彼の笑顔にはまさに「土佐の人の良さ」というものが滲み出ているのではないでしょうか。最近では南関東での期間限定騎乗や全国各地のスポット参戦など、活躍の場は広がっています。
赤岡騎手が南関東で騎乗するようになって地元での騎乗数が減り、代わって2015~17年と高知リーディングに輝いたのが「赤い彗星」と称される永森大智騎手です。永森騎手は2016年札幌で行われたWASJでJRA初勝利を挙げるなど、急激に実力を増して勝鞍を伸ばしてきていますから、ポスト赤岡に一番近いのは間違いないでしょう。
その他にも通算2800勝を超えるベテラン西川敏弘騎手、落馬事故で左目を失明しながらも復帰して現役を続けている宮川実騎手、韓国でも度々騎乗している倉兼育康騎手、さらには宮下瞳騎手(愛知)の現役女性騎手最多勝記録を追う別府真衣騎手、下村瑠衣騎手の2人の女性ジョッキー、廃止となった福山競馬出身の三村展久騎手、佐原秀泰騎手、嬉勝則騎手などが在籍しています。
また、各地所属の若手騎手を期間限定騎乗として受け入れ、南関東など、なかなか騎乗機会に恵まれない地区の若手騎手に実戦の機会を与えているだけでなく、高知では全日本新人王争覇戦が行われており、地方だけでなくJRAの若手ジョッキーにも騎乗機会を与えています。
騎手の受け入れに限らず、高知競馬は他にはなかなかない取り組みを行っていることも注目できます。
まずは最終レースの「一発逆転ファイナルレース」でしょう。近走成績の良くない馬達を選抜して行われるこのレースは波乱必至であり、それこそ最後になんとか一発逆転を、と狙う方々には絶好のレースではないでしょうか。
次に、場内その他で放送される「モーニング展望。」にもご注目ください。当日のレースが始まる前に、当日騎乗するジョッキーが出演し、騎乗馬について、またその他プライベートな話までアナウンサーと軽快に?トークを繰り広げるのです。こんなの見たことありますか?
新しいところでは2010年に創設された「福永洋一記念」が挙げられます。
JRAの福永祐一騎手の父であり「天才」と呼ばれながら落馬事故で騎手生命を絶たれた福永洋一元騎手が高知の生まれであることから、その功績を称え創設された重賞競走です。
開催日には福永祐一騎手、また洋一元騎手も高知へ来場し、表彰式では洋一さんがステージに登場します(体調その他の都合で来場されないこともあります)。数多くのファンが洋一さんの姿を見に訪れ、毎年大変な盛況となっています。
私は福永祐一騎手、そして洋一元騎手のドキュメントを見て競馬にのめりこんだ人間ですので、このレースの創設が初めて高知競馬へ行くきっかけとなりました。今後も体調と相談して、続けられる限り毎年元気な姿をファンに見せてほしいと願っています。
最後に、高知競馬に欠かせない人をご紹介したいと思います。
それは1994年から高知競馬の実況を担当しているアナウンサーの橋口浩二さんです。高知競馬をご覧になったことがある方ならよくご存じだと思いますが、落ち着いた聞きやすい声、的確な実況、幅広い情報を調べ上げてファンに伝え、個人協賛レースのコメントは心をこめて読み上げる──まさに高知競馬を愛している、高知競馬に熱い実況アナウンサーと言えます。
それだけでなく橋口アナは学生時代にバンド活動をしておりキーボードを担当していたそうで、高知競馬のファンファーレ、締切音楽は橋口アナが作曲したものなのです。さらには公式ハロンタイムの計測、「モーニング展望。」の司会、表彰式の司会と、こんなに色々こなす場内実況アナウンサーの方は2人といないのではないでしょうか。凄すぎます。また、あのハルウララブームの仕掛け人でもあります。ハルウララの連敗記録に気付いて新聞社に伝えたのが橋口アナだったのです。
まだ高知競馬ってよく分からない、知らないという方がいれば、ネット観戦でも是非一度レースを見てもらえればと思います。一生懸命に走る馬達の姿、高知競馬に携わる人達の高知競馬愛を感じてみてください。
そして高知競馬の魅力を感じていただけたなら、是非一度現地へ訪れてみてください。売り上げも回復基調にあり、これからますます馬、人と高知競馬は魅力あるものとなっていくと思います。
高知競馬で馬券を当てた後は、是非高知の美味しい食を味わって下さい。
写真:馬人