競馬界は今、一口馬主ブームの真っ只中にあります。
2018年JRA馬主リーディングのベストテンでは7クラブがランクイン。
毎週、全国の競馬場のウイナーズサークルでは出資者の皆様の笑顔が溢れています。
一口馬主とは一頭の競走馬を複数名で分割出資する、金融ファンドのこと。
この制度であれば馬主資格を持っていない個人であっても、馬主気分を味わうことができる仕組みになっています。
一言で言ってしまえば、株と似たようなモノとお伝えした方が分かりやすいかもしれません。
一例としてシルクホースクラブのアーモンドアイで考えますと、募集価格3,000万円を500口で割ります。
そうすることで1口6万円としてクラブから募集がかかります。
出資希望者は6万円をクラブに支払うことで、
アーモンドアイの1口の権利を得ることができるわけです。
出資者はその後クラブへの会費とアーモンドアイの預託料の500分の1を毎月クラブへ支払いながら、馬主気分を味わう事が出来ます。
もちろん、獲得賞金も口数に応じて分配されますので、例えば約11億稼いだ場合、出資した方は1口200万以上手元へ配当金があった事になります。
6万円の出資金で200万以上の配当があり、一口馬主として夢を見る事もできる訳ですから、ブームが到来した今の状況も、頷けます。
現在、クラブ数は22クラブ。
この連載では各クラブの特徴や費用を解説することで、少しでもこれから始める方々や入会検討中の皆様の参考にしていただければと思っています。
第1回は、社台サラブレッドクラブです。
社台サラブレッドクラブ
費用
募集口数40口
①入会金 32,400円
②競走馬出資金目安 40分の1口 25万円~300万円
③月額会費 3,240円
④維持費出資金 実費変動制(厩舎預託料など生じた金額を口数に応じて支払い。月60万円預託料が発生した場合60万÷40口で一口当たり15,000円の支払いとなる。初回のみ25,000円が発生する。)
⑤保険料出資金 競走馬出資金の3%
がおおよそ発生する費用だと思って下さい。
毎月発生する金額は③と④になりますので、
毎月『3,240円+維持費出資金』がかかります。
維持費出資金に関しては、放牧や外厩・在厩によって大きく変動するので、きちんとした数字を出すのが難しいです。
ただ約款には、全て税抜きの数字で、以下の通りに記載されています。
北海道の社台グループの施設では1日あたり11,000円。
社台グループの主要トレセン(外厩含む)では1日12,000円~13,500円。
トレセン在厩時には月額60万円~80万円。
参考程度にご覧ください。
その他にG1出走登録料や馬運車等の輸送代金もありますので追記しておきます。
サンデーサラブレッドクラブとの関係性
社台サラブレッドクラブへ入会する場合、サンデーサラブレッドクラブとの関係性を理解しておかなければなりません。
『社台サラブレッドクラブとサンデーサラブレッドクラブは共同募集クラブ』
となります。
共同募集クラブとは以下の状態を指します。
①会費3,240円を支払う事で両クラブの会員になれているという事になります。
②募集馬に関しても両クラブ通し番号になり、社台&サンデー共同募集になります。
③過去4年間で2クラブ通算で出資した合計金額が実績という形で出資の際に優遇されます。
その事を念頭に下記の項目へお進みください。
出資方法
・第一次募集
↓
・先行受付
↓
・第二次募集
の順番になります。
社台サラブレッドクラブの出資に対する抽選の特徴は、
『第一希望、第二希望、第三希望と最大3頭までのドラフト式である』
『まずは希望者全員で10口を抽選、その後30口を過去4年間での出資実績金額の順である』
という点です。
まず、『第一希望、第二希望、第三希望と3頭までのドラフト式である』
という点を紐解いていくと、会員は約一週間前から始まる毎日更新される中間発表を参考にしながら、第一希望、第二希望、第三希望までの最大3頭をクラブに対して申し込みをする事になります。
まずは第一希望ドラフトです。
個々の実績や新規会員を隔たり無く平等に、全員でまずは抽選枠10口をかけて抽選をします。
ここが、最大のポイントです。
社台サラブレッドクラブの場合、40口のクラブですので、第一希望が抽選になるという事は41口以上の票数が投票された事になりますので、当選率は最大でも24.3%という事になります。
2019年度の1番人気の募集馬へは103名の方が第一希望で出資申込を希望したので、当選率は9.9%という事に。
まずは、この抽選を突破しなければなりません。
そしてこの抽選に漏れてしまった方々で実績順で出資が確定していきます。
過去4年間で『社台サラブレッドクラブ、サンデーサラブレッドクラブ2クラブの合計出資額が多い方』の順番になります。
先にも書きましたが、社台サラブレッドクラブとサンデーサラブレッドクラブは同時募集になります。
抽選に外れた方を出資額が大きい順番に並べ替えて出資できる40名へ絞り込みます。
このドラフト方法にも賛否両論あるかと思いますが、ある意味ホースマンの世界では当然の結果であり、私個人はむしろ優しい方法だと思っています。
なぜなら、競り市やセールにおいては誰が一番高値を付けたかが全てであるからです。
本来であれば、出資金額の多い方が全てにおいて優遇されてもおかしくはないからです。
しかし、それでは新規会員や出資金額が少ない会員の方があまりにも不利になりますので、最初に平等な抽選を行っています。
そうすることで出金額は気にする事無く、平等なチャンスを得られるからです。
こうして、抽選と出資額により第一希望抽選が終了します。
ここで満口にならなかった募集馬で第二希望抽選がはじまります。その際に第一希望で出していた方は無条件で当選となり、残口数を希望者で抽選します。
第二希望からは出資額は関係なく、平等抽選となります。
第二抽選が終わり、それでも満口にならなかった募集馬に関しては、第三希望抽選が行われます。
これにて大激戦の第一次募集は終了します。
毎年、会員になる前から激戦を拝見していましたが、2019年より筆者も会員となり、より一層この第一次募集が過酷なのか肌で感じる事が出来ました。
社台の募集馬を第一希望にするべきか……
サンデーの募集馬を第一希望にすべきか……
第二希望で出資できるのか……
第三希望でも出資できるのか……
締め切り前日でも投票率は40%くらいで、会員の60%の方は申込しない傾向にあり、最終日にドッと票が入りますので、票読みも重要な戦略となります。
こうして幕をとじた後に、先行募集が始まります。
これは第一次募集で一口も出資が叶わなかった会員様に対し、残口がある馬を優先的に出資できるようにする救済処置です。
そして、先行募集が終了後、非会員の方でも会員の方でも申し込みが可能な第二次募集(通常募集)が先着順で開始されます。
どんなに出資したい募集馬がいたとしても最優先1頭や最大3頭までに絞り込まなければいけないので、出資できた時には何とも言えない感情が巻き上がってきます。
会員メンバー特典
ここからは会員の特徴を列挙したいと思います。
- 出資馬の写真プレゼント
- 社台グループの月刊誌「Thoroughbred」
著名人の方々の連載と国内外の競馬サークルの出来事やニュース、愛馬の情報が月刊誌として郵送されてきます。
- 口取り(ウイナーズサークルにて優勝記念撮影)へ参加可能
出資会員様のみで10名、重賞の場合20名。40口クラブですので当選確率は高いです。
- 優勝賞品の提供
愛馬が優勝した際に獲得した宝飾品や純金メダルなどの優勝賞品は、出資会員の中から購入希望者1名様に提供され、その際の売却代金は当該馬の出資会員様に分配されます。
- 優勝写真のお届け
- 優勝馬のゼッケン提供
抽選になりますが優勝した場合、縁起物として抽選でプレゼントされます。
- 北海道牧場見学ツアー
毎年6月(4回)、9月に北海道牧場見学ツアーが実施されます。
このツアーは、北海道にある社台グループの牧場を巡り、会員募集される1歳馬をセリさながらに見学できるツアーで、目の前で社台グループの一流馬を見る事ができるツアーです。
- 牧場ですごす休日
北海道にある社台グループの各牧場、および仙台近郊の山元トレーニングセンターなどの育成施設は、事前にお申し込みをいただければ訪問可能となっています。
- ノーザンホースパークの入場無料
ホテルやレンタカーも優待があります。
- 出資愛馬へのネーミング
これも40口ですので非常に採用されやすいです。
- 親睦パーティ
東西のホテルで開催する「会員の集い」も好評。毎回、有名ジョッキーや調教師など競馬サークル関係者が多数参加する一大イベントです。
各一口クラブが特徴ある会員サービスを行っていると思いますが、やはり充実のラインナップだと思います。
特に毎月自宅へ届く「Thoroughbred」を見るたびに、社台グループの会員の一員なんだなぁ、と感じる事ができます。
クラブへの想い
1983年に馬主リーディング第1位を獲得。
以降2005年にサンデーレーシングに対しリーディングを譲るまでの22年間、王座を守り続けた偉大なるクラブ──それが、社台サラブレッドクラブです。
あまりにも多くの活躍馬がいて多くのファンの皆様がいらっしゃるので、筆頭格すら書く事が難しいのが本音です。
ダイナカールやサッカーボーイ、ギャロップダイナ、ダイナガリバー……みんな一口クラブ「社台サラブレッドクラブ」の競走馬です。
サンデーサイレンス産駒が躍進し始めた頃の1996年に競馬を見始めた私にとって、この社台の勝負服は神々しいものでした。
この1996年の秋は特に圧巻で、10月27日にバブルガムフェローが4歳(現在の3歳)で史上初の天皇賞秋を制覇し、11月3日はダンスインザダークが菊花賞を驚異の鬼脚で制覇。さらに11月17日にはジェニュインのマイルチャンピオンシップ制覇。
その間のG1も「吉田一族」のファビラスラフィンの秋華賞とダンスパートナーのエリザベス女王杯が制覇していますから、約1ヵ月間ほぼ同じ勝負服のG1制覇を見せつけられ続けた事は、競馬を見始めた少年時代の私にとってあまりにも衝撃的な出来事でした。
この縦縞の勝負服には逆らってはダメなんだ。
特に黄、黒縦縞、袖青一本輪の社台サラブレッドクラブには気を付けよう。
この勝負服を着たら、馬が速くなるに違いない。
──それほどまでに強烈に、脳裏に焼き付けられました。
あの日から時間が流れ、2019年。
時代は社台グループ内のノーザンファームが隆盛を極めています。
馬主リーディングはノーザン系一口クラブに次ぐ第4位。
しかし、いつまでも黙っているクラブではありません。
育成の坂路コースを作り直し、調教メニューを一新。
逆襲の狼煙ははっきりと空高く上がり始めました。
ぜひ、これから競馬ファンになる人へ、私のような強烈な思い出を残し続けるクラブであってほしいと、心の底から思っています。
人それぞれにドラマや、想いがあります。
この連載では一人でも多くの方へ、一口馬主クラブの感動をお伝えできれば幸いです。
※本文中ではすべて愛馬会法人名称で統一しております。クラブ法人名は社台レースホースになります。
※文中の数値等は2019年現在の数字となっております。
写真:かず