今回は九州、四国地区の3歳クラシックについてご紹介したいと思います。
四国地区は高知競馬場のみですが、九州地区はかつて荒尾競馬場が存在し、佐賀と荒尾の両競馬場を使って3歳クラシックが争われていました。
九州地区
かつて荒尾競馬場が存在していた頃は、荒尾ダービー(1975-)、九州ダービー栄城賞(1959-)、ロータスクラウン賞(2004-)が九州三冠として2001年に成立しました。
しかし、2011年荒尾競馬が廃止になったことに伴い、九州地区は佐賀競馬のみの開催となり、荒尾ダービーに代わって飛燕賞(2005-)を一冠目とする新たな九州三冠が2012年に成立することとなりました。
佐賀のみとなって以降、三冠を制したのは2012年のエスワンプリンス1頭となっています。それでは九州地区の3歳クラシック路線を見てみたいと思います。
九州地区3歳クラシック路線
※開催日程は2016年度を参考にしています。
佐賀競馬はJRAネット投票の開始に合わせて重賞を多数新設したため、上記の他にも3歳限定重賞があり、ややわかりにくくなっているかと思います。ですので、ここではオーソドックスな3歳クラシック路線について紹介していきます。
年が明けるとまず3歳馬が目指すのは、牡馬なら筑紫野賞、牝馬なら花吹雪賞となります。
そこから第一冠である飛燕賞に向かうわけですが、ここはステップ競走である脊振山賞を経る場合と直行する場合とがあります。脊振山賞の1.2着馬には飛燕賞の優先出走権が与えられます。一冠目の飛燕賞は2005年創設と、まだ歴史が浅いです。レース名は一般公募で決められています。出走資格は佐賀所属馬に限定されています。2016年までの過去10年で1番人気が4勝、2着3回、3着2回と複勝率90%を誇り(唯一の馬券圏外も4着)、1番人気は順当に絡んでくるレースと言えます。
主な勝ち馬には三冠馬エスワンプリンスの他、「ロマンチックが止まらない!」の実況が話題となったロマンチックなどがいます。なお、飛燕賞の勝ち馬には九州ダービー栄城賞の優先出走権が与えられます。
飛燕賞の後はダービーまでしばらく期間が開くわけですが、牝馬の場合はグランダムジャパンに組み込まれているルプランタン賞が一つの目標となるかと思います。ダービーまでの間に重賞もいくつかありますが、直前にステップ競走として鯱の門特選が行われており、このレースの1着馬には九州ダービー栄城賞の優先出走権が与えられますのでここが別路線からの王道といえるかもしれません。
二冠目となる九州ダービー栄城賞はかつては佐賀、荒尾、中津の九州地区交流競走として、そして2004年からは高知所属馬も出走可能なレースとなりました。高知所属馬は2014年オールラウンドが本競走を制しています。また、本競走の優勝馬はジャパンダートダービーにおいて、九州地区における選定馬として優先されます。基本的には飛燕賞、ルプランタン賞を使っていた馬たちが上位となりますが、飛燕賞後敗れていた馬・古馬相手に敗れていた馬の巻き返しや、ステップ競走である鯱の門特選の上位馬にも注目したいところです。九州ダービーはなかなか3着まで人気通りとはなり辛く、初の2000mという距離で人気の先行馬が苦しくなったところを差してくる馬など、人気薄の食い込みも目立つレースとなっています。
過去の主な勝ち馬にはエスワンプリンスや前述のオールラウンドの他、カシノオウサマ、ギオンゴールド、キングプライド、ドンプリムローズなどがいます。
ダービー後は秋まで間隔が開きますので、有力馬は南関の黒潮盃など遠征を行い、その他では古馬と戦うなど力をつけて秋の三冠最終戦、ロータスクラウン賞を迎えます。
ロータスクラウン賞は2004年に一般公募で名称が決まり、2000mから1800mへと距離が短縮されました。本競走もダービーと同じく、高知所属馬も出走可能となっています。
なお、ロータスクラウン賞直前にはステップ競走である佐賀城特選が行われ、1着馬にはロータスクラウン賞の優先出走権が与えられます。春には間に合わなかった遅咲きの素質馬や、JRA・他地区から転入してきた馬たちと、春の実績馬の対決には注目です。
JRA遠征や他地区遠征など、強豪相手に挑戦していた馬などを除いては、近走で好走している馬が上位に来ることが多く、上位人気での決着が多くなっています。本競走の1着馬にはダービーグランプリの優先出走権が与えられます。主な勝ち馬にはエスワンプリンスの他、ナセ、ミヤノオードリー、ドンプリムローズ、高知所属で唯一制したクロスオーバーなどがいます。
九州地区3歳クラシックの注目ポイント
- 飛燕賞では年明け重賞の上位馬に注目
- ダービーは人気薄にもチャンスあり
- 秋最終戦に向かう夏の上がり馬と春の実績馬の対決
以上の3点を挙げたいと思います。
四国地区
四国唯一の競馬場である高知競馬場では一時期賞金水準が相当低いところまで落ち込みましたが、近年の売り上げ回復に伴い賞金が増額されてきており、2016年12月18日の開催からは更に増額となりました。また、2015年には1998年以来17年ぶりとなるサラブレッドの新馬戦が復活し、活躍馬ディアマルコなどを輩出しています。ディアマルコは他地区の重賞も制覇しており、これまで他地区からの転入馬が大半を占めていた高知において、地元生え抜きのスターがクラシックを賑わせることとなりました。
2016年も高知の新馬戦を勝利したフリオーソ産駒のフリビオンが2歳重賞の黒潮ジュニアチャンピオンシップと金の鞍賞を勝ち、3歳クラシックへ向けて堂々の主役へ名乗りを上げています。
新馬戦が復活したことで高知デビュー馬に有力馬が出てくるようになり、高知の3歳クラシックは来年以降も盛り上がりを見せていくのではないかと思います。
高知競馬の三冠レースは、黒潮皐月賞(1997-)、高知優駿(1973-)、黒潮菊花賞(1997-)の3レースで、1997年に成立しています。現在では全て高知所属馬限定のレースとなっています。これまで三冠を制したのはカイヨウジパング(1998年)、オオギリセイコー(2000年)、グランシング(2009年)の3頭です。
前述のディアマルコは高知優駿と黒潮菊花賞を制したものの、一冠目の黒潮皐月賞には出走せず、園田ののじぎく賞へ出走していたため(1着)、三冠達成はなりませんでした。それでは高知の3歳クラシックを見てみたいと思います。
四国地区3歳クラシック路線
※開催日程は2016年度を参考にしています。
高知における3歳限定重賞は黒潮菊花賞後にあと1レースありますが、ここではクラシックに焦点を当てますので以上の5つを表記しました。
路線としてはわかりやすいですが、それぞれのレースの間には3歳限定戦であったり、古馬との条件戦などが入ってくるので、臨戦過程は千差万別と言っていいのではないでしょうか。
ただ、重賞が少ないので、一冠目の黒潮皐月賞に向けては、その前に行われる土佐春花賞を使って上位にきていた馬は注目すべき存在となります。また、門別デビューの馬や高知の前年の2歳重賞の上位馬、前年の高知の新馬戦で勝利していた馬なども注目の存在と言えます。過去の主な勝ち馬には前述の三冠馬の他、スパイナルコードなどがいます。なお、黒潮皐月賞の上位3着までの馬には高知優駿の優先出走権が与えられます。
二冠目となる高知優駿では距離が一気に1900mへと伸びます。未経験の馬が多くなるからか、1番人気が敗れるケースが目立ち、人気薄の台頭も見られます。佐賀の九州ダービーを使ってきた馬や、他地区遠征で長い距離を経験してきた馬、また距離延長で変わり身を期待できそうな馬には注目したいところです。過去の主な勝ち馬には三冠馬の他、シャイニーフェイト、ディアマルコなどがいます。なお、高知優駿の上位3着馬には黒潮菊花賞の優先出走権が与えられます。
高知三冠の最終戦、黒潮菊花賞に向けては、当然春の実績馬が注目となりますが、準重賞栴檀特別の上位馬、また、高知優駿後、他地区へ遠征していたような馬は着順に関係なく地元で注目できます。秋になるとJRAから未勝利で転入してくる馬も増えますので、高知転入後力の違いを見せているような馬がいれば注目できる存在と言えそうです。黒潮菊花賞では牝馬の活躍が目立ち、2016年までの過去10年では6勝を挙げています。過去の主な勝ち馬としては、三冠馬の他、他地区の長距離戦でも活躍したリワードレブロンや、コパノエクスプレス、ディアマルコなどがいます。なお、黒潮菊花賞の1着馬にはダービーグランプリの優先出走権が与えられます。
四国地区3歳クラシックの注目ポイント
- 前年の新馬戦勝ち馬、2歳重賞上位馬、門別からの転入馬
- 高知優駿前に他地区の中距離戦を経験してきた馬
- 黒潮菊花賞では牝馬にも注目
以上の3点を挙げたいと思います。
写真:Y.Noda