[イベントレポート]現役騎手から元調教師まで関係者が多数来場!馬のことを知る「とみさと未来馬フェスタ2026」

2026年5月4日、千葉県富里市で開催された「とみさと未来馬フェスタ2026」。昨年は約2800人が訪れたこのイベントだが、今年は恐らくその4倍近くが来場したとのことで、会場は大盛況となった。

今回は現役ジョッキーに加え、先日調教師を引退し、ヘルパーとなった国枝栄元調教師なども来場。また、各ブースには馬運車の展示や装蹄師など、普段間近で見ることのできない馬のお仕事に携わる人たちも訪れており、馬のことを知り、学び、より身近に感じてもらうことを目的として開催された。

本記事では、その模様を何個か抜粋してお届けする。

■ 門外不出のお話多数!?加藤和宏師×根本康広元調教師のトークショー

10時に開会した当イベントの一発目として行われたのが加藤和宏調教師と根本康広元調教師のトークショー。互いに騎手時代から切磋琢磨しあった間柄であるため、腹を割って話すような話も盛りだくさんだった。

2人の会話の中で、加藤師の騎手時代に日本ダービーを制したシリウスシンボリの話題となった際、加藤師が「緊張はするけどパドックで馬に跨ると落ち着くんですよね」と言えば、すかさず根本元調教師が「前日夜の調整ルームでタオルを巻いてぐっすり寝ていたから、彼は心臓に毛が生えているんだよ」とツッコミを入れる軽やかなトークを展開。

その後自身の手でダービーを制したメリーナイスの話に移れば「その年のダービー馬に乗って有馬記念で落ちたのはボクだけですから」と、ユーモアを交えて来場者の笑いも誘った。

トークショーの中で根本元調教師は、弟子を6人取った中での教えとして「先輩の言うことをただ聞くのではなく、自分に合ったスタイルの人を見つけ、そこに向かって進めるようになってほしい、と思って指導をしていた」と語ってくれた。現役のジョッキーでも丸山元気騎手や長浜鴻緒騎手など、関東で活躍する弟子たちを数多く送り出している師匠だからこそ、現代社会で生き抜く我々にとってもずっしりと響く言葉であった。

トークショーの最後には、加藤師の弟子である水沼元輝騎手が登場。2人の師がダービージョッキーとなったシリウスシンボリとメリーナイスのレプリカゼッケンのじゃんけん大会を開き、大盛況のうちに幕を閉じた。

■ 女性時代の幕開けへ!谷原柚希騎手×原木あかね助手のクイズトークショー

女性ジョッキー×女性の調教助手という、なかなか普段では見られない組み合わせで行われたトークショー。この2人のお話は○×のクイズ形式で行われたが、聞いているファンたちの○×選択がほぼ半数で分かれる、絶妙な難易度の問題が出題された。

具体的には「持ち乗りの調教助手になるために競馬学校に通う期間は1年である」や、「騎手がレースで使う鞭にはしっかりとした規定がある」など。クイズの答えは記事の最後に記載しているので、良ければ皆さんもご一緒に考えていただきたい。

トークショーのラストは、これから競馬関係のお仕事を目指す女性に向けて2人からメッセージが送られた。谷原騎手からは「女性だからこそできること、例えば男性では扱い切れない馬が女性だと一変するということもあるので、是非積極的に興味を持ってほしい」と語り、原木助手からは「女性も男性も大変なのは一緒。大事なのはやるっていう気持ちと、できるかできないかだと思うので、たくさんチャレンジしてください!」と、双方前向きなコメントを残してくれた。

■ 実はそんなことが!?藤沢和雄元調教師×国枝栄元調教師のトークショー

2022年に引退した藤沢和雄元調教師と、今年3月に引退した国枝栄元調教師のトークショーが午後一番で開催。美浦で数々の功績を打ち立てた2人のトークは、まず藤沢元調教師が馬の仕事に入った理由を聞かれると「馬が好きで勉強が嫌いだったからね。何とか馬の仕事に行けないものかと。教員免許も持っているけど、馬は文句を言わないからこっちにした」と、開幕から周囲の爆笑を誘うトークを展開した。

トークショーでは、国枝元調教師が4月半ばから美浦の小島茂之厩舎の補充員に転身したことにも触れられた。それについて藤沢元調教師は「私も稼ぎたいからヘルパーやろうかなと思ったんですけど」と暴露。だが小島師から「2人はダメです」と返答され、辞退することになったという。

しかし続けて「弟子は関西にもいるからね」とニヤリ。国枝元調教師もこれを受けて「フジさん(藤沢和雄元調教師)に言うと余計なこと言われそうだから、敢えて言わなかったんですよ」と事前の相談はしていなかったことを明かした。

最後は競馬関係の職を目指す人たちへ、国枝元調教師からは「馬に近いところにいるというほど楽しいことはないから、このまま歩んでほしい」とエールを送り、藤沢和雄元調教師は「馬のお仕事に年齢制限はありません!!元気にチャレンジ精神で行きましょう!」と笑顔で快活に締めくくってくれた。

■ メインはポニー競馬!!富里スモールジャンプ開催

富里と言えばスモールジャンプと連想できるほどに有名になってきた同競走。今回もコジュウチョウサンを筆頭とする5頭の精鋭たちが富里中央公園に集結した。

メインの富里スモールジャンプに先立ち開催されたのが「石神深一復帰記念」。4月30日にJRAのジョッキーを引退したばかりの石神深一調教助手が、この日だけは“騎手”に復帰することを記念しての1戦である。出場ポニーは水沼元輝騎手が跨るナリタブラリアンⅡと、谷原柚希騎手と土田真翔騎手が手綱を引くココロデュエル。強風の中、位置についてスタートが切られるとココロデュエルが飛ばし、ナリタブラリアンⅡが後方から進める展開に。快調に逃げるココロデュエルだったが、残り半周ほどで馬装がズレるアクシデントが発生。その隙を見逃さずにナリタブラリアンⅡが加速し、一気にココロデュエルをとらえて勝利を飾った。

レース後水沼騎手は「作戦通り乗れました」とニッコリ。いつもジョッキーたちが乗っている競馬場とは違い、ラチ沿いそばにファンがいるという特殊な環境下でのレースだったが「お客さんがすぐ近くにいるからこそ、ナリタブラリアンⅡも最後まで頑張ってくれたのだと思います」と相棒をねぎらった。

間を置かず、当日のメインレースである富里スモールジャンプにレースは移る。出場ポニーは絶対王者であり、石神深一・深道親子が絶対の自信をもってリードするコジュウチョウサンに、先ほどの競走で奮闘し、昨年9月の富里コンパクトジャンプではコジュウチョウサンを破っているココロデュエル、さらには横山義行元騎手と難波剛健騎手が手綱を引くコーカイと、金子光希・大江原圭騎手のコンビがエスコートするコジュウチョウサンと同郷であるコポロマーベリックが登場。

なお、コーカイとコポロマーベリックのゼッケン番号はなぜか「2」で被っており、実況の舩山陽司アナウンサーにとっては実況者泣かせとも言える珍事が発生していた。

そんなハプニングがありながらも本馬場入場を無事に終え、4頭が大一番のスタートラインに並んだ。ファンファーレが鳴り終わり、スタートの合図とともに飛び出したのがコジュウチョウサン。そのまま第1障害、第2障害とテンポよくステップを踏むと、追ってくるライバルたちに影をも踏ませないスピードを披露していく。まるで大観衆の前で自身の強さを見せつけるかのように、そのまま2着以下に大差をつけてゴールイン。前年秋に敗れた悔しさを晴らし、再び王座に就く見事な勝利であった。

見事に”騎手”復帰戦を勝利で飾った石神深一助手は「騎手をやめたあとすぐでしたが、こうやって皆さんに応援していただき本当にありがとうございます」とファンに感謝を伝えた。この後、息子の深道騎手から花束が贈呈され、ファンから送られたモザイクアートを手にしてコースを1周。引退と“騎手”復帰を同時に祝われた石神深一助手は「またこのようなイベントに来て、コジュウとこの場を盛り上げていきたいと思います」と、次回以降のイベント参戦と王座防衛に強い意志を示してみせた。

■ JRA騎手VS子供たちの熱き戦いも?障害ジョッキートークショー

ラストを飾るイベントとして開催されたのが障害ジョッキーたちによるトークショー。水沼騎手や土田騎手といった若手に加え、石神助手や草野太郎騎手、難波騎手も参加し、さらには元騎手の大庭和弥調教助手、5月から石神助手の上司となった柄崎将寿師なども加わる豪華なトークイベントとなった。

各々がユーモアあふれる自己紹介を織り交ぜてスタートしたトークショー。「障害レースの魅力」について石神助手は「スリル溢れる緊張感を感じるのが面白い」と答えながら、同じようにスリルのあるジェットコースターなどの絶叫マシンに関しては「アレはお金貰えないから嫌いです」と正直に答える一面も。また、現役時代は同僚でありライバルだった草野騎手に対して「彼を接戦で負かした時が一番気持ち良いよね」と、まるでプロレス前の記者会見のような一面も見せた。

一方、草野騎手は障害レースの魅力について「僕も昨日レースで落馬して、今日のポニーレースの参戦を見送っているので怪我しないとは言えないが」と前置きしながら「平地以上に馬と一緒にコツコツやり、結果に繋げていくというのは間違いなく魅力だと思う」と語り、「そういう面が好きな人に目指してもらえたら」と、今後、障害界へ参入する人たちへの期待を込めた。

さらに、石神助手へは「コジュウチョウサン絶対時代の到来があるのでは」という質問も飛んだ。同助手は「あと20年くらいは行けると思う」としながらも「オジュウチョウサンのJ・GⅠの連勝記録を超えられたら困るから、超えない8年くらいにしておきます」と聴衆の笑いを誘った。これに対し土田騎手と難波騎手が「僕らのコーカイはまだ2歳。経験を積んだら良くなると思うので、あと8年後にはコーカイ時代が到来するようにします」と応戦。

さらに、ココロデュエルに騎乗予定だった草野騎手が「ココロデュエルもレースを覚えて興奮するほどの学習能力はあるので、今後が楽しみです」と答え、水沼騎手は「僕の相棒であるナリタブラリアンⅡが障害を覚えたら負けないと思いますよ」と不敵な笑みを浮かべた。早くも次回開催に向けて「打倒コジュウチョウサン」の機運が高まっている。ポニーたちの戦いは、まだまだ熱を増しそうだ。

トークショーの最後には、子どもたちと障害ジョッキーによる縄跳び対決も実施。誰が一番多く二重跳びをできるかという戦いで、結果は難波剛健騎手が勝利。「この日のために栗東で毎日コツコツと練習していました」という、当日に対決内容が明かされたとは思えないマイクパフォーマンスでトークショーを締めくくった。

■ おわりに

イベント広場で開催されたトークショーやスモールジャンプ以外にも、各テントで様々な催しが開催。引退馬支援団体であるうまんまパークからはポニーが来場し、ショーを行ったあとは多くのファンとふれあっていた。

その他にも装蹄師や馬具販売、JRAによるスターター体験など、多くのブースが展開。またスモールジャンプのあとにはチャリティーオークションも行われたほか、馬運車体験やばん馬のハクウンリューによる馬車運行、重賞ウィナーであるインパルスヒーローとレイエンダの来場など、数えきれないほど多数のイベントが行われていた。

間違いなくふだんの日常では触れることのできない競馬に携わる様々なことを、一般のファンが知ることのできる数少ない貴重な経験になったと思う。

今回は家族連れの来場も多く、小さな子どもたちにとってはまさに「馬のことを知り、学び、より身近に感じてもらう」というテーマに沿った大きな刺激になったはず。来年度以降も開催を予定しているというこのイベントが、競馬界の発展に通じるひとつのきっかけとなれば、これ以上のことはないだろう。

※クイズの答え 
・「持ち乗りの調教助手になるために競馬学校に通う期間は1年である」=×
正しくは1年ではなく6か月間。


・「騎手がレースで使う鞭にはしっかりとした規定がある」=○
全体の長さが77センチメートル未満かつ、衝撃吸収素材を用いたパッドの部分が17センチメートル以下、さらに横幅が2センチメートルから4センチメートルの間であること。

写真:ひでまさねちか、小早川涼風

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